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宇宙アイドルグループ『Zillion Romance』の冠ラジオ番組『Zillion Romantic Letters』内の一幕

作者: quiet

「いやそこはダイオウイカの見せ場じゃないんかいっ。はい次のおたよりいってみましょう、ロマンスネーム(番組内で使用されるラジオネームの呼称)ひこ……?」

「ひこば……?」

「ひこばし……、あっ、ひこぼし! えー失礼? ロマンスネーム、『ひこぼしになりたい』さんからのおたよりですっ!」

「ひこぼし?」

「ひこぼし」

「ひこぼしって……何?」

「なんだろねー」

「宇宙は広いですからねっ。ごめんなさいわかりませんっ。……内容読んでいい?」

「あ、ごめん邪魔して。どうぞ」

「どぞどぞー」

「では……。おほんっ、げほっ」

「大丈夫?」


(笑い声)


「大丈夫っ。じゃあいきますよ、ロマンスネーム『ひこぼしになりたい』さんからのおたよりでっす。


 『初めましてジリロマの皆さんこんばんは』


 はいこんばんはっ」

「こんばんは」

「ばんはー」


「『ぼくは惑星かぐやに住む14歳です』」


「14!?」

「えー、赤ちゃんだー」


「『惑星かぐやでは公転周期の関係で、みなさんの惑星で言う、2年が1年分にあたります』


 へー。惑星かぐや……。なんかかわいい名前だねっ」

「え、いやうん。それはいいんだけど。え? どっちにしろ私たちの基準で言っても28歳ってことでしょ?」

「どっちにしろ赤ちゃんじゃんねー」

「あっ、待って。まだ続きあるからね。


『惑星かぐやの平均寿命は80さ』


 えっ!? 80歳っ!?」

「えっ」

「80年で死んじゃうってことー?」

「だよねっ?」

「そうでしょ? えっ、あっ、私たちの基準なら160歳か」

「宇宙は広いねー」


「『惑星かぐやの平均寿命は80歳です。だからその分成長も速くて、14歳のぼくは、みなさんの基準で言えば5600歳に当たるみたいです』


 はえー」

「すごいっていうか……、私たちの200倍の速さで年を、取るってこと? でいいの?」

「宇宙って広いねー」

「そればっかかいっ。


『惑星かぐやは、ジリロマの皆さんがいる星とは銀河3つ分隔てた場所にある星です。だからこのメッセージが届くときには、きっともう100年以上経ってると思います』」


「……ん?」


「『だから、たぶんこのメッセージがラジオで読まれているときには、ぼくはもう寿命で天国に行ってるんじゃないかと思います』


 えーっ!?」

「……あっ、そっか!」

「わー、びっくりだねー。そっかー。届くまでに時間かかるもんねー」

「えっ、何これ寂しくないっ!? ひこぼしさんこれ読まれてるの聞けてないんでしょっ? おーいっ、聞いてますかーっ?」

「いや聞こえてないんでしょ?」

「えー、でもわかんなくない? このおたよりが届くまでの100年の間に寿命伸びたりしたかもよー?」

「種族寿命がそんなに簡単に変わるかな?」

「えー、


『ジリロマの活動も、100年かけて惑星かぐやまで届きます。だから、今このメッセージを書いているぼくが見られるのは、200年前のジリロマの姿だけです。

 でもでも、ぼくはジリロマが大好きです! ずっと活動を追えないのは残念ですが、逆に考えると生きている間はずっとジリロマの活動が見られるってことです。こんな贅沢ってほかにありますか?』


 うれしいっ。


『ずっとずっと……、は無理ですが、短い寿命の全部をかけて、ジリロマのこと応援してます。絶対応援してました! これからも活動頑張ってください!』


 とのことですっ」

「はー……」

「うれしいねー」

「ねっ」

「うん。200倍って、想像できる?」

「できなーい」

「すっごいよね。わたしたちがデビューから300年でもまだまだ新人って感じなのにっ」

「ねー。でも逆に、わたしたちの200分の1の速さで年を取るような星の人たちもいるのかなー」

「いるんだろうね。そういう人たちから見たら、新人どころかデビューしたてに見えるのかな」

「不思議だねー」

「宇宙広いねっ」

「ねー」

「今日ほんとそればっかだな」


(笑い声)


「なんかちょっとしんみりしてきちゃったっ。

 『ひこぼしになりたい』さんっ。このラジオを聴けてるかどうかはわかりませんが、ちゃんと100年前からのメッセージはジリロマに届きましたっ。


 広い宇宙で色々あるとは思いますがっ、わたしたちまだまだ活動していきますのでっ、どうか生まれ変わっても応援よろしくお願いしますっ」

「贅沢すぎない?」


(笑い声)


「贅沢だよっ」

「求めていきますよー。ジリロマは欲しがりですよー」

「欲しがっていく?」

「欲しがっていくっ」

「星だけに?」

「ん?」

「ん?」


(間)


「ちょっと待って言い訳させて」

「さあっ、お得意の寒いギャグも決まったところでっ」

「言い訳させてほんと!」

「決まったところでー」

「遠い遠い惑星かぐやに100年後に届けっ、ということで曲いってみまっしょうっ! 『ひこぼしになりたい』さんからのリクエストで――、おおっ、わたしたちのデビューシングルっ。


 『Romantic Universe』っ!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 聴こえてくるようでした。 本当にロマンチックで、オチが秀逸
[良い点] 遠くて、遠くて、一生かけても届かないくらい遠く離れていたって メッセージに込めた気持ちはそんな距離を飛び越えて必ず届く。 正に『Romantic Universe』 [一言] 素敵な短編…
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