瓦礫の一期一会
そこは何もない暗闇の世界だった。
気が付けばそこに立っていた。
つぶやいた「ここは…何処だ?」
ふと見上げれば光が射してきた。
声が出た「朝…なのか?」
突然甲高い声が反響した「誰?」
明るくなった周りを見回した。
ドームの真ん中辺りに白いフリルの付いたドレスを着た少女…のような人影が立っていた。
叫んだ「僕は…わからないんだ!」
思い出そうとした。何かが頭の中を駆け巡ったが、そのまま思考が空回りした。
その人影も叫んだ「私も!ここは何処なの?」
「それもわからないんだ」言葉を返した。
そして、つぶやいた「何なんだ…この状況は?」
見渡すとドームの中は瓦礫が積もっていた。
天井は所々崩れていて、そこから外界の光が射している。
少し考え、意を決して言った「そっちに行って良いか?」
少し迷ってから答えが返って来た「いいわよ。あなた悪い人には見えないから。でも、変な事したらタダじゃおかないから!」
「わかった。誓ってそんな事はしない。この状況を把握したいだけさ。」両手を軽く挙げ、うなだれて首を降りなが返事をした。
瓦礫を避けつつゆっくりと少女に近づきながら、周りの状況を確認した。
瓦礫は崩れた天井や壁らしい。ドームに出口が2ヶ所。重そうな鉄の扉が閉まっている。
光の射す穴からは青空と流れる雲が見えている。
そして自分の身体…服は着ているようだ。
白いシャツ…胸元がはだけている。青いズボン…側面に金色のストライプが二本入っている。
茶色い皮のブーツ。
何かの制服の様だった。
腰には細身の剣を履いていた。
頭を触ると少し縮れた短目の髪型だった。
少女のそばに近づいた。
小柄で、よく見ると目のクリっとした空色のストレートヘアーが揺れる、可愛らしい女の子だった。
腰にはブルーのベルトが巻かれレイガンが下がっていた。
「何が起こったんだ?」鼻筋を掻きながら聞いた。
「気か付いたら、ここに…あなたヴァムって言うの?」クリクリ目をさらに見開いて少女が言った。
「えっ?」
「だって、胸にタグが付いているもの。」
下を向いて、胸のあたりを確かめた…ネームタグに触れて、見るとヴァム・エクスフォーヘンと書いてあった。
これが名前なのか?
「この格好…銃とか剣とかって、何かのバトルなのかな?」少女が問いかけてきた。
「そうだな…何だっけなぁ~?」頭をかきながら思い出そうとした。
ドームの外が騒々しい事に気が付いた。
「ウォ~~~!!!」
群衆が歓声を上げているような声だった。
「気になるなぁ~取り敢えずドームの外に出てみないか?」と僕…
「えぇ。」と少女が答えた。
並んで歩きながら「それはそうと…君のことは何て呼べばいい?」
扉を開けると、群衆が歓声を上げていた。
少女の答えが歓声にかき消された…
「勇者!勇者!勇者!勇者!」
「姫!姫!姫!姫!」
「君は姫さまなのか…」驚いた。
「どうやらそうらしいわ。あなたも勇者って…格好じゃないわね(笑)。しっかし、派手にやったみたいね。見てよ!」
姫さまははるか彼方を指差して叫んだ。
魔獣…だと思うが、ドラゴンやらゴブリンやらの死骸がうず高く積み上がっていた。
「なんだ、ありゃ?俺たちがやったのか!?」
記憶が少しよみがえってきた…