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是非に及ばず
プロローグです。
ものすごく短いです笑
普通に考えると、本能寺の変での信長、みたいな描写ですけれど・・・
はてさて、誰のいつの話でしょう?
Prologue?
燃え盛る炎に呑まれながら、酒を呷る。
鈍る感覚の中で手を翳せば、こびり付いた血と炎の赤が重なった。
もう、この身体はもたない。
肉の灼ける匂いに自嘲めいた笑みを零し、最期の時を待つ。
着々と迫り来る死の気配に、もはや恐怖は感じない。
ただ、こんな仕合わせを強いた神への非難を込めて、傍らの亡骸を引っ掴み、きつく抱き寄せた。
鼻腔を擽る彼女の血の匂いに黒に染まった心が満たされる。
そうして僕は、最初の記憶を手繰り寄せることを止めにした。
誰が――――。
そんなことを論ずる必要はない。
それが、是か非かも関係ない。
あの時からすべきことは決まっているのだから。
「是非に及ばず」
自分に言い聞かせるようにして呟いた言葉は、身体を覆う炎と深淵に沈む意識に呑まれて消えた。
謎を残したまま第一章に続きます。