表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/309

試練 四

 まったく頭が痛い。

 高俅はしきりにあご髭をさすりながら唸っていた。

 林冲を処分できなかっただけではなく、梁山泊にまで入山させてしまうとは。蔡京に冷笑されたが、林冲を仕留められなかったのは、富安の作戦が甘かったからであり、陸謙の腕が足りなかったからだ。

 わしのせいではない。

 楊戩(ようせん)の奴めがあの辺りで不当な搾取をしているから、梁山泊などに賊が集まるのだ。

 護送役人の董超(とうちょう)薛覇(せっぱ)からの報告も問題だ。

 暗殺の邪魔をした魯智深とかいう僧がいる大相国寺の菜園へは捕り手を差し向けた。そいつは、なにせ化物のような坊主だというから通常の五倍もの人員を動員した。だが多数の負傷者を出し、魯智深はどこかへ姿をくらましたという。何と腐抜けた捕り手どもだ。

 これもわしのせいではない。

 息子も、まだ林冲の妻を狙っているらしい。奴が都におらぬので前よりかは元気になったようだが、完全に息の根を止めねば、いつか目の前に現われる気がする。

 この確信にも似た思いは、裸一貫で鳴りあがって来た高俅が養った嗅覚のようなものなのだろう。この嗅覚で権謀術数の中を生き抜いて来たのだ。

しかしいらいらする事ばかりだ。酒でも飲もうか。

 と、そこへ部下が入って来た。

「大尉どの、面会のお約束の者が来ておりますが」

 そう言えばそんな約束があった。相手はかつて東京(とうけい)で武官をしていた者だという。

 また軍人か、と渡された上申書に目を通す。

「舐めておるのか、こ奴は。却下だ、却下」

 高俅は語気を荒げ、それを引き裂かんばかりに怒りを爆発させた。

 通された男は、その決定に、何故だという顔をしているばかりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ