死んだらしいよ、俺は
俺は今先程死んだらしい……。
トラックに跳ねられてそこから意識はないがなんとなくわかる……。
俺は死んだってことが。
そんな俺は今、川の前に立っている、三途の川ってやつだろうか。
「旦那、乗ってくれや。それともまだ未練があるのか?」
老いた男性の声が聞こえる……船頭……死神というやつなのだろうか。
「いや、未練なんてないよ。今乗る。」
実際未練なんてものはなかった。
なんの目的もなく生きているだけだったからな。
「じゃあ、乗ってくれ。早くしないと閻魔様がお怒りだぜ?」
老人はそういうと俺を船へと促した。
船は三途の川をゆっくりと渡っていく。
「旦那、どうだい?三途の川ってのは」
そんなことを老人が訪ねてくる。
「そうだな……なんというか寂しいな、なんもなくて」
そう答えると老人は
「寂しいね、生者からみたらそう見えるのかね」
と、呟くように言った。
生者という単語を聞きふと俺は疑問に思ったことを訊ねてみる。
「俺はまだ生きているのか?」
そう聞くと老人は一瞬きょとんとした後納得したように笑いだした。
「あぁ、生者というのはそういう意味ではないんだよ。ただ閻魔様に裁かれる前の魂は丸めて生者という括りになっちまってるのさ。」
老人はそう答えるとふと何かに気付いたように前方を向いた。
「ほらついたぞ旦那。」
そう言われて俺も前方に注目する。
すると大きく豪華な建築物がたっていた。