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第一章 非日常からの御誘い(4)

「ねえ、鈴、ちょっと話があるんだけど」

場面は変わって教室。鈴は、部屋を模様替えしようとして完成図をノートの一番後ろのページに書いていたけど、眠くなってうとうとしていたところである。そこに、さきほど(・・・・)の聖子が訪れた。

「え、なあに~?いいよ~暇だから!」

えへへ、と椅子を立つ鈴。その天然さゆえか、聖子の様子がおかしいことに気がつかない。

「すぐ終わるよ。あ、今日とても天気がいいんだよ。体育館裏なんか、紅葉が色づき始めてとても綺麗なんだ。よかったらそこで話さない?」

「なんか、今の聖子のしゃべり方、大人っぽ~い!美亜の真似してるの?」

「そんなんじゃないよ。それより、早く行こうよ、早くしないと、美亜が来ちゃう」

なんで美亜が来ちゃいけないの?と、疑問に感じながらも、ひょこひょこついていってしまう鈴なのだった。



「―――!!!」

ガタン、と唐突に椅子を立つ音が、生徒会室に響き渡る。

「桜川さん?どうしたの?」

と、隣に座っていたメガネをかけた真面目そうな副会長の女の子が尋ねる。

「…ごめんなさい、ちょっと会議抜けていい?」

「え、困るよ、あなたいないと会議進まないのに!」

副会長、大慌て。

それもそのはず、このちょっとしまりのなかった、大学推薦ねらいの生徒が集まっていた形だけの生徒会を、きちんとしたまっすぐな目的のある生徒会に立て直したのは、今期生徒会長の桜川美亜である。てきぱきとした的確な指示と、そのリーダー気質なオーラに、どんな生徒も思わず従うざるを得ない。そんな美亜が、会議の途中で抜けるとなれば、指揮を取るひとは誰もいない。つまり、会議の崩壊を意味する。

「~~~ッ。じゃあ、もう会議は終わり!あと15分ぶん、明日の三時半に延期よ!解散、帰ってよし!」

そう言い残すと、次の瞬間には乱暴に生徒会室の扉をあけて外へ出て行ってしまっていた。

「…珍しい。いつもは、優雅な身のこなしでとても綺麗な動作で帰り支度をはじめて、みんなが帰ったのを確認してから最後に戸締りして帰るぐらいなのに。明日は見せてくれるかな、独特の髪を触る癖」

と、残念そうな、しかしややうっとりした目でメガネの副会長はあけっぱなしの扉を見つめていた。



「あー…昼買ったパン、あまっちまったなー」

と、元成はため息をつく。

「よし、また校庭で秋の風を感じながら風流に食べるか!」

と、かっこつけようとしてあまりかっこがついていないセリフをひとりでドヤ顔で言うと、いそいそと校庭に向かった。

しかし。

すでに先客がいて、しかも、男女仲よくベンチに座っていたのだった。他に人影もなく、なんとなく近寄りがたい雰囲気。女の子のほうはなにやら熱心にメモをとっていて、会話もはずんでいると見える。自分が今あの場所に今行ったら、そんな空気も一瞬で氷つくと考えた元成は、場所を変えようと決め、人があまり来ない体育館裏に決めた。あそこなら、あまり人が来ないし、確か紅葉も拝めたはずだ。秋の風を感じることにかわりはない、と思うと、校庭より好条件な気がしてきた。

「おーっし、体育館裏で優雅にパンを(しょく)すぜ!」

…一人で過ごす時間が多いと、必然的に独り言と一人遊びが得意になってしまうものだ。


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