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第一章 非日常からの御誘い(2)

鈴は、結局、ぐるぐるしながらテストを受けた。

今は昼休み。全部終わったけれど、結果的に、なんだかいつもより解けたような、そんな気がする。

分からない、知らない問題でも、ぼやぼやーっと、頭に答えが浮かんでくるような、そんな不思議な感覚だった気がする――――

なんてことを鈴がうーんうーんと考え込んでいると、横からいきなり人影が突っ込んできた。その人物は―――

「りーん!テストどうだったー?」

「せ、聖子(せいこ)?」

すこし驚きながら鈴は言う。

「ねーねー、旭川君の噂聞いたー?」

乱れたセミロングの髪を直しながら、楽しそうに聖子は言う。聖子は、少々噂好きな面がある。

「うん、なんかクラスメイト脅したんだってね~、でもそーいう噂って、いろいろ尾ひれ背びれがついてるって美亜が言ってたよ~」

「うわあ、また美亜?!美亜にこんな話したらまた怒られるよー!!美亜ってほんと大人だもんねえ」

人のことをあれやこれや言う聖子にしては、素直に人を認めることは珍しい。美亜とは、それほどに人物なのだ。

ハっと、鈴は思い出す。ストラップのことを。美亜の、珍しくしどろもどろしていた姿を。

美亜は、今は机に座って、テストの答え合わせをしているようだ、余裕なような表情を見る限り、テストは大丈夫のようだ。

でも、鈴にはわかる。

美亜がわずかに焦りの色を浮かべていることを。

またもや、鈴は考え出そうとした。しかし―――

「ああああああああああああああああ!!!あああああ!!あああ!!!購買忘れてたあああああああ!!!!!」

今日は、お弁当を作ってもらわない水曜日だった。水曜日は、購買でパンを買うことに鈴の家では決まっている。しかし、ストラップのことやら美亜のことやらで気を取られて、パンを買うことなど銀河の彼方へ吹き飛んでしまっていた。

「ごめん、聖子!私、ひとっ走りしてくる!」

ガタンッ、と椅子から立って、渾身のダッシュをかける。といっても、運動が苦手な鈴がダッシュをかけたところで、そこまで早くはないのだが。

運動が苦手な人特有の変なダッシュで購買にたどりつくと、激戦区なこの購買に、ラッキーなことに、鈴の大好物のソーセージマフィンとチョココロネがぽつんと残っていた。ウキウキ気分で買うと、昼休みの残りの時間が少ないことに気が付く。やばい、と思い鈴は再びダッシュをかける。

と。

ドンッ、と、なにかにぶつかる。

「あ、ごめんなさ~い、…って」

能天気に謝った相手。それは…

「……え」

旭川元成。噂の不良だ。

「えっと…ごめんなさい、大丈夫だったー?」

と、少々天然な鈴はにこにこしながら聞く。周りの生徒の空気が凍りついたことも、まだ気がついていない。

「あ、え、あ、ああ。って、あんた、俺に普通にしゃべってくれるのか…?」

と、元成はおずおずと尋ねたつもりだった。周りには、ドスをきかせたようにしか聞こえなかっただろうが。

「え?なんで?…って、私急いでいるんだった~!ごめんなさーい、さよなら!」

と、天然運動オンチダッシュで鈴は自分の教室へ急ぐ。

「あいつ…すげえ…旭川元成に普通にしゃべりかけたよ…」

「確か、二年二組の海山ってやつじゃなかったっけ?」

「あれって、一年の時同じクラスの鈴だったよね?さっすが、天然…」

「けっこうかわいかったよな~あとで見に行ってみよーぜ!」

そんな声が周りでとぶなか、元成はさっき購買で買ったスペシャルクリームパンチョコクリーム&キャラメルクリーム入りbigサイズ(180円)を片手に、呆然とその場に立ち尽くしていた。

「二年の…二組の…海山、鈴…?」

まわりがざわっとしてヒッ、と軽い悲鳴もあがったのもよそに、とりあえずスペシャルクリーム以下略を食べようと元成はずんずんと校庭へ向かった。



そんな騒動が起きているさなか、鈴の教室、二年二組にある青年が訪れた。

「ごめん…秋原(あきはら)さん、秋原聖子さんはいる?ちょっと委員会のことで話があるんだけど…」

と、なんだかキラキラしたオーラを放ちながらその青年は言う。

「あ、相本(あいもと)くん…!い、今聖子呼んでくるね!」

女子は、キャーキャーいいながら聖子を呼びに行く。

相本 (まさる)。属に言う、イケメン。

なんだか、キラキラ輝いてる、シャイニングな王子様。

それが、女子の彼にたいする印象だ。

「お、克ー!久しぶり!」

男子から声をかけられる、克。

「久しぶり。最近、サッカーの調子はどう?県大会出場おめでとうな」

にっこりとほほ笑む、克。

「おう!ありがとうな!」

なんだか、モテるくせして男子受けもいいのだ。

そうこうしている間に、聖子登場。

「あ、相本君!遅くなってごめんね!美化委員会のこと?」

「うん、ちょっとたてこむから、校庭にでもいかない?ジュースでもおごるよ。あ、そしたら昼休み終わって時間が足りなくなるね。そうだ、放課後ゆっくり話すよ、いい?」

聖子、歓喜。

「いいよー!それじゃ、帰りの伝達終わったらすぐ来るよ!」

「よかった。それじゃ、放課後ね」

「うん!」

克は、フッと身をひるがえして、軽やかにさっていった。

聖子はというと。

(やったああああああああああ!!相本君と放課後おしゃべり!!なにこれ、なにこれ、なにかあるかもしれないじゃん!いやっほう!!!ラッキー!)

と、終始ご機嫌だった。



鈴は、ゼイゼイ言いながら教室にもどってくる、バレッタを付け直しながら、椅子へ座る。「あー早く食べなきゃ~」

と、言いながらはぐはぐもぐもぐ。横では、聖子がウキウキニヤニヤ。近くの席では、美亜がテストの答えをカキカキしている。


なんの変哲も、ない、日常の風景。


でも、彼、彼女たちの知らない間に。


世界は、運命は。


動いていた。


確実に、



未知の方向へと―――――



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