第二章 引き返せない運命(みち)(4)
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「はい、聖子さん。こちらへお掛け下さい」
ここは、悪魔界のどこかの建物の一室。さっき聖子がいた部屋とは別の部屋のようだ。その部屋で、相本克、ことア―リマンは、すっとテーブルの椅子をさげて、王子様スマイルでそれを聖子に勧めた。
「わあ、ありがとう!克君!」
「いいえ、このぐらい紳士として当然の心がけです。さあ、どうぞ」
そう言われて、聖子はその椅子に座った。白塗りの、西洋風の椅子だ。クッションが敷いてあってとても座り心地がいいな、と聖子はぼんやりと思った。今の彼女にとっては、克が一番気になる存在で、いちいちクッションの座り心地など気にしてられないのである。克も、長方形のこれまた白塗りの机の向かい側の椅子へ座った。と同時に、料理が運ばれてくる。
「すごい、どれもとってもおいしそう!」
運ばれてきた料理は、聖子の好物ばかりだった。トマトやチーズやレタスをふんだんに使った甘辛ソースのサンドイッチや、ブルーベリージャムとミントが上に添えてあるプレーンヨーグルト、それとたまねぎがくたくたになるまでよく煮込んだオニオンスープであった。飲み物には、温かいミルクティー。そこで、聖子はあることに気がついた。
「ねえ、なんで私の好きな食べ物、こんなにばっちり知ってるの?すごい!」
聖子は、キラキラした目で克に尋ねた。克は一秒にも満たない時間、静止画にしたらほんの少し分かるぐらいに表情を変えた後、王子様スマイルでこう言う。
「あなたのことは、なんでもお見通しです、聖子さん。なれない場所だとは思いますが、しっかり食べないと身体を壊してしまいます。そう思って、あなたの好むであろう朝食を作ってもらいました。さあ、はやく冷めないうちに食べましょう?」
クスリ、と克は聖子にほほ笑みかける。そのほほ笑みと、料理に心を奪われている聖子は、気がつかなかった。料理を運んできた人たちが、全員同じ顔だということに―――――