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いざ大阪(前日)

 俺はせっせと旅行バッグに服を詰め込んでいた。

 

 いよいよ明日は皆で大阪旅行の日だ。行くところは決めてある。とりあえず難波と梅田だ。あと大阪城も見たい。お好み焼きに明石焼き、タコ焼きに串カツ。とにかく食い倒れるまで大阪を堪能してやろうぜっていう話になっている。かなり楽しみだ。

 

 時計を見るとちょうど正午になったところだった。階段を下りて台所に向かう。

 

「おそよう、礼」

 

「ん」

 

 美雨がソファで寝転んでいた。おそようって。

 

「お母さんお友達とお出かけしたよ。お父さんは散歩」

 

「うぃ」

 

 冷蔵庫を開けて牛乳を取り出すとコップへ注ぎ込む。

 

「いいなー。大阪。何か美味しいお土産買ってきてね」

 

「んー、でも土産って基本的に美味しくないものじゃね?」

 

「ええー。何それ」

 

 いや、そんな気がしない?土産もので感動とかあんまりしない気がすんだけど。

 

「そうだ、この間デートした子にもお土産買ってきてあげなよ」

 

「えっ」

 

「わあ!!汚い!!」

 

 飲んでいた牛乳が口の端からだらだら零れてしまった。

 

 

「お土産?」

 

「そうだよ。だってデートしたってことはさぁ、礼も相手の子悪くは思ってないんでしょ?」

 

 何でいきなりこいつこんなグイグイ来るんだ。

 

「いや、思ってないけど。でも言ったじゃんか。その子は友達なんだって」

 

「出たー!!」

 

 ソファの上でL字に仰け反った美雨。何かエビみたいになってる!!

 

「いいじゃん友達なら尚更お土産買って行けば!!ちょっと相手の子意識しちゃってるでしょー!?お友達ですって言いきってるところが逆に怪しいし」

 

「……」

 

 意識するわ!!だって俺好きなの野崎だし。よっちゃんが俺を好きだとまでは思わないけど、確かに2人で遊んだのはやっぱ何か特別な気がする。

 

 ……でもだからこそどっちつかずな態度は取りたくないんだけど。

 

「いや、でもさぁ」

 

「っていうか何?礼はその子とは付き合おうっていう気はないんだ?」

 

「……うん」

 

「だからって、相手が自分の事好きかも?あ、じゃあもう思わせぶりな態度取るのやめよーとか言って、冷たくするの?」

 

「いや、そういうことじゃねえよ」

 

「そういうことでしょー。だって今まで仲良かったのに急にそっけなくするの?その子にだけお土産買わないの?それってかなり最低。礼は筋通してるつもりかもしんないけど超その子可哀そう。別にいいじゃん好かれて。だってそんなの相手の自由じゃんか」

 

 ……ちくしょう、言い返せねえ。

 

「……そうかも、しれない」

 

 うわー。何か、よっちゃんとか野崎の事考えてる風でやっぱ自分の事しか考えてないのかな俺。

 

「だったらお土産買ってきなよ」

 

「……うん」

 

 何で俺は妹に恋愛のアドバイス受けてんだ。不可解過ぎるし、もうお前ソファに座って恋愛相談ってちょっとした美輪さんじゃねーか。

 

「……つーかさ、礼」

 

「ん」

 

「……別に本命いるでしょ?」

 

「何で!?」

 

「だって礼って好きって言われだけで舞い上がって相手の事すぐ好きになりそうだし。そうじゃないって事は他に本命居るって事じゃん」

 

「……何か受験生ってすげえな」

 

「私が凄いんだよ。お土産よろしく」

 

 話はここまでだとばかりにテレビをつけ始める。兄の威厳とか一切無いな。俺はすごすごと部屋まで戻っていった。

 

 

 

 

 

<><><><><><><><><><><><><><><>

 

 

 夜、『ジェネシス』にログインして、旅行で不在になることを告げた。

 

『風巳: いいですねえ旅行』

 

『黒白猫: 俺も行きたいなー大阪』

 

『にあ: 食い倒れな感じ?』

 

『ライア: そうですね!!美味しいものいっぱい食べようと思ってます』

 

 

 

 

 

「いいなぁ。大阪、行ったことない」

 

 チャットに反応するように、ヘッドホンから野崎の声が聞こえる。

 例によって『ジェネシス』をしながら通話中だった。

 

「野崎は?どっか旅行行ったりしないの?」

 

「私も明日から。家族でおばあちゃんのところに里帰り」

 

「どこなの?」

 

「ん、札幌」

 

「北海道?いいじゃん」

 

「って言ってもお盆だしねー。お墓参りメインだし、別に美味しいもの食べに行くわけじゃないから。いいなぁ神谷。あ、お土産買ってきて欲しい」

 

 別に美雨に言われたからじゃないけど、何かドキッとしてしまった。

 

「おっけー。あ、野崎も何か買ってきてよ。交換しない?」

 

「あ、全然良いよ。お土産は神谷のセンスに任せる」

 

「おおう。プレッシャーだな」

 

「別に何でも嬉しいし、良いよ。……そうだ、神谷っていつ戻ってくるの?」

 

「ん、えっと1泊2日だから14日には帰ってくる」

 

「そっか。私は15までだから……。神谷、16日暇?」

 

「16日?何も無いけど」

 

「そっか。じゃあその日どっかで待ち合わせしよ」

 

「え」

 

「お土産交換しないとじゃん」

 

「あ、うん」

 

「待ち合わせどこが良い?」

 

「……え、あ。野崎の地元の駅は?」

 

「え、別にいいけど、神谷の地元の駅の方が都心に近いじゃん」

 

「都心?」

 

「うん。都心に出るでしょ?」

 

「……?え、都心に出るの?」

 

「……?だってお土産渡すだけでバイバイじゃないでしょ?どっか遊び行こうよ」

 

「……あぁ。そっか」

 

「神谷っていつもどこ出てるの?」

 

「……池袋、渋谷、原宿」

 

「あ、私最近渋谷とか行ってない。そしたら渋谷と原宿行こうよ」

 

「うん」

 

「……神谷、どうしたの?」

 

「え!?」

 

「何か、超声小さいけど」

 

「え!?いや、全然じゃない!?」

 

「あ、戻った。……おっけ。あ、私もうそろそろ寝ないとだから。じゃあね。またメールする」

 

「うん!!」

 

「おやすみ」

 

「おやすみ!!」

 

 

 

 ……。

 

 ……!!!

 

 ……!?

 

 ……!!!

 

 ……。

 

 ……!?

 

 !?


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