宣言
召喚士の強さは、ほぼイコールで召喚できる精霊のレベルだ。通常、これは別に召喚士に限らず全職の全スキルに言えることだけれど、スキルのレベル上限は25だ。そして精霊は、スキルレベルに応じて、その姿をどんどん大きくしていく。
今まさに目の前に立ちはだかってる男爵さんの精霊の大きさは、どう見ても25レベルの精霊の大きさを上回るでかさだった。
『にあ: うわ、男爵スイッチ入った』
『風巳: ( ゜д゜)!?』
『シシリア: wwwwガチじゃんwwww男爵wwww』
ギルチャでは男爵さんの実力を知っていたっぽい風巳さん達が騒いでたけど、もうね、俺も野崎もぽかーんって感じですよ。でっけえ。普通に上限レベルの精霊のでかさの1.5倍くらいある。
『男爵: OVERLOADの皆さんは本当に戦っていて楽しいです』
『男爵: でも、勝つのは暁です』
うおお!!男爵さんすげー負けず嫌いな人だった!!ただ、男爵さんはそれから微動だにしない。何か雰囲気に呑まれて、誰も動こうとしない感じ。
『風巳: 今走ってますから』
『☆星龍☆: 同じく!!』
ギルチャが流れて、自然と風巳さん達を待つ形になる。
やがて、風巳さん達、それに暁戦線の倒したメンバーの人たちも中央広場に戻ってきた。
『風巳: |ω・)男爵、スイッチ入っちゃったの?』
風巳さんが白チャで問いかける。若干煽ってる気がしないでもないな!!
『男爵: ええ。うちは対人特化がウリですし、やはり負けるわけにはいかないでしょう』
『アレックス: マスター、もう残り時間ほとんどないですよ』
『千歳: やっぱLILIさん強いやー!私は超満足!!楽しめたし!』
『七色眼鏡: 凄く悔しいですけど、OVERLOAD全体のバランスもっと良くなってて崩しにくくなりましたね』
『YOYO: ライアさんスキルキャンセルうまいね!!タイミング合わせてウェーブ2撃重ねてくるしww』
『ライア: 無駄に練習してましたから!!』
『黒白猫: あと3分くらいかな、残り時間』
ギルドウォー真っ最中なのになぜか白チャで盛り上がってる。
「野崎、これどうなるんだろ」
野崎が笑った。
「大体最後いっつもこんな感じで小休止入っちゃうよね。でも、そろそろだと思うよ?」
「え?」
何が?って聞こうと思った瞬間だった。
『風巳: では、皆さん。準備はいいですか?』
お、再開だろうか。よっしゃいっちょやってやるぞーって感じでライアを動かそうとした瞬間、男爵さんが白チャを発した。
『男爵: OVERLOADの皆さん、キングは私です』
「うわぁ、言っちゃったよこの人」
思わず声が出た。野崎が楽しそうにキャッキャと笑う。
「基本、キングスの時は男爵さんが王様だよね。何か、お決まりっていうか」
「ええ、そうなの!?」
「うん。男爵さん、召喚士とは思えない位HPあるし、固いしね。大体風巳さん達が囲むんだけどいつも落とせないの。でも、今日は私たちも暁の人たち結構落とせたでしょ?ちょっと本気なのかも」
「どうする?」と野崎が聞いてくる。いや、何を。
「このまま神谷は下がっておけば、こっちが勝ち。男爵さん、わざと煽って攻撃されようとしてるんだよ。全員に攻めさせて、返り討ちにすれば王様沈められるからね。……どうする?乗る?乗らない?……っていうか、勝ちたい?勝ちたくない?」
野崎がにやにや笑ってるのがはっきりと分かった。
「いやそんなん決まってるでしょ!!」
『ライア: はい!!俺もキングです!!!!』
『にあ: ちょwwwwwwwwwwww』
『シシリア: wwwwwwwwwww』
『風巳: (´゜ω゜);:*`,;: 』
『黒白猫: ラwwwイwwwアwwwwさんwwww』
『にんじん: あれー?www』
『アレックス: うわあw』
『七色眼鏡: ……!?……!!?』
『†Silver†: ライアさん!!ww』
『NANAKO: wwww』
ヘッドフォンごしに楽しそうな笑い声が響く。
「神谷!!」
「何」
「あのね、私そういうの嫌いじゃない!!」
「うん!!俺も!!」
でも、ふざけてるわけじゃないから!!ここはガッツリ勝つ!!!
『男爵: w』
『風巳: !?』
『にあ: え、ちょ』
『シシリア: うわあ』
『海音: マスターが草使った!!!!!』
『アレックス: うわ、初めて見た』
白チャの流れに思わず笑ってしまう。男爵さんどんなキャラなんだ。
『男爵: ライアさん、暁戦線に入りませんか?』
「うわびっくりした」
「ちょ、神谷何スカウトされてるの?」
野崎が笑いながら突っ込んでくる。いや俺も分かんないよ?
『千歳: wwwwいいね、きなよライアさんw』
『風巳: こらこら何うちの新メンバー誘惑してるの(`・ω・´)』
『YOYO: 賛成w』
『ライア: www』
何かニヤニヤしてしまった。誘われて悪い気はしない。まぁ、でもOVERLOADから出るとかは考えられないや。
「え、神谷」
「ん?」
「……え、OVERLOADがいいよ。OVERLOADに居なよ」
一瞬、絶句してしまう。そこからの、大爆笑。
「いるよ!!どんだけ俺は薄情なの!!こんな良くしてもらってんのにOVERLOADから余所移るとか無い無い!!」
俺としては野崎にも一緒に笑って欲しかったけど、何か野崎は黙ったまんまだった。
しばらくして野崎が呟く。
「……男爵さん、倒すよ神谷」
「あいあい」
『風巳: っしゃ!!じゃあ残り時間、ガチでやりましょうか』
『男爵: ええ』
皆が一斉にエグゾーストや補助魔法をかけ始める。
「っしゃ、やんぞー!!」
俺は何だかとんでもなく楽しくなってしまって、アホみたいにはしゃぎながらライアを敵陣に滑り込ませていった。
あ、ギルドウォーの結果ですか?いや、何か言うだけ野暮って感じしません?
皆が勝者ってことでいいじゃないですか。……あれ俺めっちゃいいこと言ったな。