解放
『YOYO: www風巳さんやってくれるね!!』
駆け寄るライアとNANAKOを見て、YOYOさんから白チャが浮かび上がる。
悪あがきとばかりに「ポイズンミスト」が放たれたけど、スキルレベルが大幅に減少してるから、大したダメージにはならない。
「神谷」
野崎の声は冷静だ。
「いっせーの……」
「せっ!!」
同じタイミングで攻撃を放つ。「ブレイドウェーブ」と「ライトニング」の同時攻撃でダメージが加算される。
そのままYOYOさんが崩れ落ちた。
「よし来た!!」
「神谷、今のうちに他の人も落とそ!!」
思わずテンションが上がって歓声を上げたけど、野崎はこのチャンスを逃すわけにはいかないって感じだ。おっけー。誰がキングか分かんないけど、ここまで来たらそんなん関係ない!!野崎の言ったように、勢いに乗って倒しまくるしかない!!
『風巳: 皆さん頑張って(*´・ω・)(・ω・`*)ネー』
姿は見えないけど風巳さんからもギルチャが飛んでくる。
『シシリア: b』
『にあ: b』
シシリアさんもにあさんもさっきからサムズアップしかしてないけど大丈夫なんだろうか?男爵さんの精霊は3体、恐らく3体ともスキルレベルMAXで、かつ「スキルダウン」の影響は受けてない。男爵さん自身を落とそうにもうまい具合に暁戦線のメンバーが壁の役割を果たしていて、近づくに近づけない。
『風巳: にあもシシリアもそのまま男爵押して。たぶんキングは男爵だから』
「え?」
風巳さんの発言に思わず間抜けな声が出る。どうしてそんなことが分かるんだろう。
「野崎、風巳さん何で分かるの?」
「どうだろ?あてずっぽかもだけど……」
「じゃあとりあえず男爵さんまで突っ込むか」
「おっけー」
と、思った瞬間に思わぬ戦局の変化が起きた。
範囲魔法の応酬をしていたLILIさんと千歳さんだ。LILIさんが、落ちた。
『LILI: あああやられた><』
「うわやっべ」
フリーになった千歳さんが高速で移動しながら範囲魔法の「ボルケーノ」を連発する。
通常ではありえない範囲からマグマが噴き出していく。
「野崎これまずくない!?」
「神谷、下がって。火炎抵抗力ひっくいでしょ!?」
「低いけど!!辛辣だな!!」
「私の方があるし。神谷王様なんだから落ちないでよ!?」
言いながらNANAKOが千歳さんに近づいていく。近距離で「ライトニング」を連発するつもりなんだろう。
『†Silver†: 援護します』
抜群のタイミングでSilverさんが遠距離から弓攻撃で千歳さんにダメージを溜めていく。野崎もエグゾーストスキルで底上げした攻撃速度でマナポをがぶ飲みしながら「ライトニング」を撃ちまくる。
千歳さんも慌てたようにポーションを飲んでたけど、とうとう膝をついた。
LILIさんから受けたダメージから完全に回復していたわけじゃなかったらしい。
千歳さんが落ちたのはかなりでかい。
「あれ、これ行けるんじゃねーか!?」
いつの間にかアレックスさんも七色さんも、範囲魔法の餌食となって姿を消してる。ここまでくれば、回復役に回っているにんじんさんは戦力になら無いだろう。黒白猫さんと殴り合ってる海音さんもポーションを連続消費している感じから、もうすぐ落ちる感じだ。この勢いだと、YOYOさん達が中央広場に戻ってくる前に、男爵さんも沈められるんじゃないか!?
「神谷、油断しない方がいいよ。まだ男爵さん倒れてないもん」
俺の声のトーンで察したのか、野崎が注意してくれる。
もちろん、油断はしてない。でももう戦局は決まったようなもんじゃない?
『男爵: ……最高ですね』
「ん?」
突然、男爵さんが白チャで発言した。
『男爵: やっぱり風巳さんのギルドは凄く良いです』
「……何か男爵さん余裕あるなぁ」
俺の疑問に野崎は答えない。あれ、何だ。何か不穏な空気なんですけど。
『男爵: ここまで来たらもういいですよね?』
ここまで?何が?
『男爵: ちょっと本気出しますね』
「……え?」
男爵さんが拳を突き上げると、精霊たちが金色の光につつまれた。
「……神谷下がって」
召喚士のエグゾーストスキル「グローイング」だ。精霊自体のレベルを上昇させ、攻撃力、移動速度、HPを大幅に上昇させる。
でも何だこれ。……何だこの精霊のでかさ。
「……いやいや、こんなんラスボスじゃん」
思わず呟いた言葉に、野崎はくすりとも笑わなかった。