表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天終の日  作者: Halohalooo27
2/3

過去

【過去】


かつて「東洋の真珠」と称されたシャーンアーレン国は、世界貿易の交差点に位置する、小さくも繁栄した都市国家だった。高層ビルが立ち並び、夜には無数の灯りが輝き、世界中から商人、学者、旅人が集う。人口は七百万人を超え、「国際大都会の頂点」とまで呼ばれていた。


最も輝かしい時代、シャーンアーレンは自由な経済制度、高水準の生活環境、そして大国に匹敵する金融システムを誇っていた。国土は狭くとも、多くの夢追い人がこの地を目指した。軍隊は存在せず、戦争もなかった。七百万人を超える市民は、異なる言語を話し、異なる背景を持ちながらも、夢と希望を胸にこの国で共に生きていた。


彼らは信じていた。平和こそが、どんな武力よりも強い壁になると。


だが——

本当の絶望は、静かにこの平和な地に迫っていた。


戦火を最初に灯したのは、北方の強国「プロエラント帝国」と、その宿敵「西方国サティア連邦」である。


最初は国境を巡る衝突、民族や領土、歴史的対立に過ぎなかった。しかし、最初のミサイルが落とされたその瞬間、世界はもう後戻りできなくなった。軍事同盟、条約、復讐、そして覇権の欲望が複雑に絡み合い、世界は二つの陣営に分裂した。


シャーンアーレンは本来、戦争とは無縁のはずだった。

——しかし、それはこの国があまりにも「重要」すぎたのだ。


この国の港は戦略的な輸送の要所、金融システムは多国間の資金流通の中枢、そして技術力は各国が喉から手が出るほど欲しがる宝だった。


やがて、シャーンアーレンは「選択」を迫られる。


ある日、首都中心部を襲った「テロ事件」が発生した。それは計画されたものだった。そして、それが多国籍軍の出兵の口実となる。


「平和維持」の名のもとに、各国が兵を送り込んだ。

そして国際メディアのフラッシュの中で、かつての自由都市は軍服に染まっていく。


軍隊を持たなかった国は、軍人と傭兵が行き交う砦へと変貌した。

街の四方には対空砲台が設置され、市民の広場は仮設基地と化した。


中立を捨てたその日から——

シャーンアーレンは、「奪われるべき戦略拠点」となった。


最初の本格的な戦闘は、天終727年、午前6時27分に起きた。

戦闘機が空から襲来し、港を砲撃した瞬間、この国の人々は初めて知った。


——平和は、「力」によって守られなければならないと。


その日から、シャーンアーレンは完全に変わった。


見慣れたビルが崩壊し、ニュースが死傷者の名前を報じる中——

もはや誰も軍備反対を叫ばなかった。


シャーンアーレンは、各国と軍事同盟を結び、外国の軍人による訓練を受け、そして自らの特殊部隊を結成するに至った。


国際ビジネスの都は、今や戦場の心臓部へと変貌したのだ。


かつて、この地で夢を抱いた人々は——


銃を取った者、

死者となった者、

いまだ悪夢の終わりを待つ者——


それぞれの運命を背負いながら、生き延びている。


これが、シャーンアーレン国の「過去」。


この戦争は、十五年に及ぶ。

だが今もなお、終わる気配はない——。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ