駆流
初小説です
拙いですが読んでもらえると嬉しいです
更新は不定期です
汗が迸る。
風を切る。
その心地よさに竜崎駆流は惹かれてきた。一歩踏み出すごとに俺は軽くなっていく。自由になっていく気がする。その感覚さえ研ぎ澄まされればタイムなんてどうでも良かった。走ることは駆流の全てだった。
凍るように真っ青な空の下でも、頑なに引き結んだ曇り空の下でも、駆流はずっと走り続けていた。いつしか、高校ナンバーワン選手などと呼ばれるようになっていた。取材されるたびに駆流は偽りの笑顔でこう答えた。嬉しい、と。
嬉しい……。駆琉は走ること以外に喜びは見出せなかった。他人からちやほやされて嬉しい、訳がない。でも、全てはプロランナーになるために。
駆流は出来れば注目を浴びたくない。だから、プロランナーなんてまっぴらごめんだと思っていた。でも、走って食っていけるなら、それはそれでいいと最近思うようになってきたのだった。
そんな駆流にとって走ること以外は全て二の次だった。勉強?知ったことか。恋愛?そんなもの無駄な時間以外の何者でもない。
全国でも天才と呼ばれ、その上近寄りがたいオーラを意識的に出している駆流は、クラスメイトに畏れられている感がある。それならそれでいい。ややこしいしがらみは苦手だ。
でも……あいつらが見ているのは本当の俺じゃない。メディアに取り上げられる孤高の天才、世代ナンバーワンランナーたるリュウザキカケルを通してみている。本当の駆流は……ただの人付き合いが苦手で、頑固で、走ることでしか自分を肯定できないただの俺だ。
もっと困るのはクラスの女子連中だ。駆流が学校に行くだけできゃーきゃーと騒ぎ立てる。俺は毎日無欠席で学校に通っているのに、珍しいもんか。非常に心外だ。
心の支えとなっているのは、駆流のことを一人の友として接してくれる奴の存在だ。桐田逢斗だ。逢斗は一見普通の高校生といった感じだ。でも、典型的な好青年というような外見の内側に、常人には見えていないものが見えていないようなものが見えているような、世界を俯瞰しているような独特の雰囲気を持っている。まあ、普通の人なんていないのかもしれない。
逢斗の周りにはいつも誰かの笑顔がある。逢斗が光を発しているような感じだ。しかも、逢斗は誰にでも公平だ。俺みたいな人間もちゃんと俺として接してくれる。
生まれ変われるとしたら俺は逢斗みたいな人間になりたい。駆流は本気でそう思う。
今日は体育がある。体育は嫌いだ。駆流は走るときは一人の世界になりたい。いくつもの目にさらされていてはちっとも自由じゃない。その上、ご丁寧にも応援しているのかいないのかわからないような叫び声も聞こえてくる。駆流にとってそんなものは、夏の虫みたいなものだ。追い払っても、走る駆流の口に入ってくる邪魔な虫。そんな風にすら思えてくる。その上夏の虫たちは火に入ることがお好きなようで何にもないのに何かをわざわざ引き起こして騒いでいる。できれば関わり合いになりたくない。
それではまた