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51.まさかの伝説へ・・・


 ダミアンが壊したか何かの処置したはずの魔方陣が再び光り始めたことで、皆がその場にくぎ付けになった。

 アドソン先生だけが、歓喜の声を上げる。


「神は私を見捨てなかったのだ! この不条理な世の中は魔王によって、これから正しく支配されるのだ!」


 いやいやいや。めっちゃ矛盾しているから。

 魔王が召喚されるなんて神様に見捨てられたも同然だし、魔王に支配されたらもっと不条理な世界になるでしょ。

 ダミアンは驚きからすぐに我に返って、魔方陣を破壊しようとしてか、無詠唱で当たったら痛そうな攻撃魔法を放った。

 だけど、魔方陣は攻撃を跳ね返し、続いたアクセル様とユリウスの攻撃さえも無効化されたようで、さらに輝きを増す。

 その眩しさに思わず目を瞑り、そんな私を守るようにダミアンが抱きしめてくれたみたいだけど、キュンとしている場合じゃない。

 この後、魔王v.s.魔王の戦いが始まったらどうしよう、なんて考えてしまったのは現実逃避だと思う。


 やがて光が落ち着いたのがわかって、おそるおそる目を開けた。――けど、何も見えないのは、ダミアンの胸に顔を押しつけられているから。

 これもまたキュンとしている場合じゃなくて、魔法陣がどうなったのか見たくてダミアンから離れようとしたのにびくともしない。

 うぬぬぬ! いきなり魔王を見たとしても、石になったりとかしないでしょ?

 現にダミアンはちゃんと生きているみたいで、胸の音が聞こえるもん。

 ダミアンの鼓動がちょっと速いのはきっと緊張しているからだよね。

 ということは、よっぽど何か――。


「――っいてぇ~って、は? 何だ、ここ……?」


 ん? んんん?

 また新たに聞こえた声は、魔王にしてはずいぶん間抜けな感じ。

 しかもこの超王道セリフ!

 今度こそ勢いよくダミアンを押しのけたら、意外にも抜け出すことができた。


「――あ!」

「お? 美人発見」

「え? ありがとうございます」


 じゃ、なくて!

 褒められたことは嬉しいけど、背後で魔王(ダミアン)がヤバいオーラを出してる。

 それよりも問題は魔法陣によって召喚されたのが、どう見ても日本人男子なこと。

 これって、まさか伝説となったあれじゃないよね!?


「どうやら魔王が召喚されてしまったようだね。始末しよう」

「違う違う! ダミアン様、お待ちください!」


 あまりの衝撃に呆然としてしまっていたら、ダミアンがとんでもないことを言い出したので、慌てて止めた。

 すると、ダミアンがますます魔王オーラを溢れさせたから、召喚男子がひえって座ったまま後ずさった。

 うん。わかるよ、その気持ち。


「レティシア、なぜあいつを庇うのかな? ひょっとして悪い魔法でもかけられた?」

「違います。そうではなくて……」


 ダミアンだけでなく、アクセル様もお兄様たちも警戒しているのがわかる。

 喜んでいるのはアドソン先生だけで、それがかなり的外れなことが哀れにさえなって、なかなか言えない。

 とりあえず、確認しよう。


「あの、突然ここにきて驚いているとは思いますが……あなたは日本人ですか?」

「そうです! よかったー。日本語が通じて。俺、英語とか無理だから」

「あー、ね?」


 そういえばこの世界の言葉について考えたことなかったけど、もしゲームの世界なら日本語でオーケー。

 見たところ、彼は二十歳前後のようだけど、設定通りなら十八歳の天涯孤独なはず。

 だけど本当に、こんなことってある?

 私が気づかなかったのも無理はないよ。だって、記憶から抹消していたんだもん。


 なぜなら彼は伝説のクソゲー『王子様は君の手に♡』リマスター版の主人公。

 プレイヤーはまさかの男女どちらかを選べて、男性を選ぶとボーイズラブへと話が進んでいくんだよ。

 BLは別にいい。私だって少しは嗜んでいたもん。

 だけど、本作でノーマル恋愛を楽しんだ乙女たちは、リマスター版で阿鼻叫喚の嵐が巻き起こった(一部を除く)。

 混ぜるな危険。

 というわけで大炎上。運営が謝罪までして配信停止。

 悪い意味で伝説のゲームとなってしまったわけで……。


「レティシア、どうした? 大丈夫か? あいつを始末するか?」

「……擁護派もいましたけど、私は否定派だったので、すぐにアンインストールしたんです」

「何だって?」

「だからストーリーもよく知らないんですよ」

「レティシア、本当に大丈夫なのか?」

「ダミアン様……」

「どうした?」

「聖女が……女性とは限らないんですよ」

「うん?」


 これ以上はもう言えない。〝予言〟については王家の機密事項だから。

 でもこの世界を救うためには、きちんと伝えておかないといけなくて、私は召喚された彼を指さした。


「あの方が、アクセル様とダミアン様が捜されていた方に間違いありません」

「……は?」


 私の宣言に、ダミアンは目を見開き、アクセル様は初めて聞くちょっと気の抜けた声を出された。

 うん。もうこれこそ本当に我が人生に悔いはなし。

 そうだよ。そもそもアクセル様の選んだ方なら、私も応援するのが当然。


 これから先、彼を巡ってダミアンと争うことがあれば、アクセル様の恋路を私は身を挺して守り抜きます!

 きっと彼となら、アクセル様も新しい表情をたくさん見せてくださるはず。

 そのためにも、モブとして非推しのダミアンの邪魔をしてやるんだから!


 って、あれ? じゃあ、私がダミアンと結ばれれば問題解決?

 よし。それなら隠し攻略対象であるユリウスまで揃っている今、主人公らしき彼にダミアンの婚約者宣言しておけばけん制になるはず。

 そう考えて、これみよがしにダミアンの腕に手を回し、彼ににっこり笑いかける。


「私はレティシア・カラベッタよ。あなたのお名前をお伺いしてもよろしいかしら?」

「あ、うん。俺の名前は佐藤壱吾。よくわからないことになってるから、この状況を教えてくれると助かる」

「わかったわ。佐藤さん、その前に、こちらの彼は私の大切な婚約者のダミアン・プラドネル王弟殿下。ダミアン様ならきっと佐藤さんの助けになると思うわ」


 あれ? ダミアンと佐藤さんの仲を取り持つような言い方になってしまった気がする。

 だけど、王太子であるアクセル様に託すわけにもいかないし、これでよかったのよね?

 確認のためにダミアンを見上げると、またあの悪巧みたっぷりの笑顔を向けられてしまった。


「レティシア、僕のことを大切な婚約者と紹介してくれるなんて、僕の気持ちがようやく通じたんだね。嬉しいよ」


 そう言って、ダミアンはあろうことか私の唇にキスをした。

 アクセル様の前で!

 佐藤さんのことは丸っと無視して、さらにもう一度!

 やーめーてー!

 私、ひょっとして大失敗をしたかもしれない。

 だけど、後悔先に立たず。

 ならばアクセル様の幸せのために、これからも頑張ってみせます!





ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

実はこれから乙女ゲーム(クソゲー)が始まるかも?というわけですが、いったんこちらで完結とさせていただきます。

続きはまた・・・書けたらいいな、と思いつつ・・・頑張ります!


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― 新着の感想 ―
このラストの発想はなかったです。 めっちゃ笑いました。
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