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43.言語化難しい


 うーん。どうしてって質問されても、何て答えればいいのかわからないよ。

 だって、『生徒間の格差是正』を提案したのは、ゲームではヒロインだったから。

 それでここ最近もやもやしていたのかなって思ったから。


「ごめんね、レティシア。責めているわけじゃないんだ。どうにも僕やアクセルは頭が固いようでね。僕たちでは気にもとめなかったような点に着目するから、レティシアのその柔軟な考えを知りたいだけなんだ」


 ダミアンの言葉が嫌みなのかどうなのかも今回はよくわからない。

 婚約してから別人のようだってちょっと前に言われたけど、それをまさかのここで回収?

 だけど今ならはっきり言える。

 レティシアと晴乃はちゃんと同一人物だって。

 どういう原理かはわからないけど、奇跡の融合しているんだよ。……たぶん。


「私は皆様方のように、政治についての教育は受けておりませんので、根本的な考え方が違うのではないでしょうか。それに、魔法もあまり得意とは言えません。ですから……」

「レティシア?」


 ダミアンへ半分嫌み返しで答えていたけれど、途中でもやもやの原因というか、ずっとあった違和感が形になってきて言葉が途切れてしまった。

 自分が口にした「魔法が得意でない」がヒントになったみたい。

 そんな私にダミアンが訝しげに問いかける。

 そこで我に返って、思いのままに疑問を口にした。


「あ、いえ。その……どうしてこの生徒会室には防音魔法が施されているのか、不思議に思ったんです」

「うん?」


 真面目に答えたのに、ダミアンはその内容に首を傾げた。

 もちろん私の言葉をちゃんと理解しているけれど、前後関係がわからないらしい。

 どうしよう。ダミアンは私のことを本気で心配しているみたいで逆に心配になる。

 天変地異の前触れかな。

 それに比べて、アクセル様は余計な感情を挟まず、冷ややかに受け止めてきちんと答えを返してくれる。


「防音魔法は力試しだろう。生徒会役員に選出されるからには、魔法の実力も高いだろうからな」

「ですが、生徒会はいわば生徒たちの代弁者です。ならば、生徒会室は門戸を広く開け放つべきであって、防音魔法などを施して密室で議論がなされるべきではありません。もちろん、誰にも言えないような相談事を持ち込む生徒もいるでしょうが、その際には都度防音魔法を施せばいいだけではありませんか。それなのに、代々受け継がれてきたというのは……学園側と何か対立していたような時代があったのでしょうか?」


 ああ、言ってしまった。

 これでは、ただ慣例に従っているだけのアクセル様を否定したみたいになっちゃったよね。

 でも違うんです。またゲームを持ち出すのも間違っているかもしれないけれど、防音魔法が生徒会室に施されていたなんて記憶になかったから。

 これがまたもやもやの原因で、口に出すことでちょっとすっきりしました。ごめんなさい。


「確かに、レティシア嬢の言うことはもっともだな。慣例だからと疑問にも思わなかった自分が情けない」

「いえ、そんな……」

「レティシア、謙遜は必要ないよ。正直なところ、ここ最近の僕たちの会話は誰にも聞かせられるようなものではないが、本来はレティシアの言う通り、秘密にするようなものはないはずなんだ。そもそも扉を閉めていれば、普通は話し声なんて聞こえないしね」

「わざわざ防音魔法を施すなど、よほど聞かれたくないことがあったのだろう」


 さすが清廉潔白の王子様。

 ご自分の不備を潔く認められるなんて、なかなかできないことですよね。

 ダミアンも納得してくれているようだけれど、それはどうでもいい。

 そう思っていたら、ダミアンがとんでもないことを言い出した。


「じゃあ、せっかくだから、何代前からこの防音魔法が施されているのか調べてみようか」

「ああ、頼む。誰が施したかはわかるか?」

「そうだなあ……。癖が強ければわかるかも。ざっと感知しただけでも十人は関わっているね」

「あの、それはいったい……?」


 過去に防音魔法を施した人たちを調べるってことだよね?

 アクセル様もしれっとお願いしているけど、そんなことできるものなの? いや、ダミアンならできるってこと?

 その疑問は今まで黙って焼き菓子を食べていたジャンが答えてくれた。っていうか、いたのか。

 その大きな体で存在感消すとかすごいな。


「レティシア嬢、驚くのも無理はないが、ダミアンにできないことはないと思っていたほうがいいぞ。こいつは何でも魔法で解決してしまう。だからこそ、少々世の中舐めているところがあるがな」


 それはそう! 声を大にして同意したい。

 なんだ、ダミアンの邪悪さはジャンたちもわかっていたんだ。


「レティシア、何度も言うが、考えていることが顔に出ているよ」

「表情と考えが一致していると、なぜ思うのですか?」

「言うようになったね?」

「努力していますから」


 まあ、顔に出ていたのは本音だと思うけど。

 嘘もつきとおせば真実になるってことで。

 後が怖いけど、なんかもうそういう段階は超えちゃったな。

 だって、ダミアンにできないことはないって、ジャンにお墨付きをもらってるんだもん。

 やっぱりダミアンは魔王だよ。


「ダミアン、レティシア嬢と仲良くするのは後にして、先に調べてくれないか」

「それもそうだね」


 アクセル様! 今のがどう仲良くしていました!?

 ええ、アクセル様の欠点さえも尊いと思っていましたが、さすがにその発言を最推しから聞くのはつらすぎます。

 だからしばらく沈黙を貫きます。というより、ダミアンが何か集中し始めたから、私に平穏が訪れただけだけど。

 このままダミアンも一生黙っていればいいのに。


「……わかった」


 早すぎない? よくわからないけど、過去にこの部屋に防音魔法を施した人たち――人数か何かを調べていたんだよね?

 それって、レティシアとしても聞いたことのない魔法というか、能力なのに?

 儚くもダミアンの沈黙期間終了のお知らせ。


「過去に、この部屋に防音魔法を施したのは十二人だね。うち一人はアクセルだから、十一代前に遡るな。だが、最初に防音魔法を施した人物は――」

「見つけたよ、記録」


 ダミアンが十一年前に魔法を施した人物を調べたというのも驚きだけど、その名前を告げるいいタイミングでお兄様が戻ってきたのもびっくり。

 え? 正解はコマーシャルの後。再び?




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