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30.監禁の理由

 

「レティシア嬢」

「はい」

「ダミアンは、君を監禁したんじゃない。先ほども言ったように、保護しているんだ。それが誰からというのは、私たちにも答えられない。残念ながら、敵が誰かを私たちはまだ掴んでいないからだ」

「……敵がいるのですか? アクセル様たちに?」


 アクセル様に敵がいるなんて由々しき事態ではあるけれど、それがダミアンじゃないの?

 王位簒奪を企んで、いろいろと手を回してアクセル様やジャン、エルマンを追い詰めていたのは、ただのゲームではあるけれど。

 今一つ信用できないんだよね。


「そもそも、その敵がなぜ私を狙うのです? 申し訳ありませんが、私がダミアン様と婚約しなければ、その敵とやらにも私は目をつけられなかったのではないでしょうか」

「それは……」


 しまった! 私としたことが、ついアクセル様に生意気な反論をしてしまった!

 だって、ダミアンと婚約してからレティシアの平穏な生活が崩れてしまったんだもの。

 それまでは……あれ? 何だろう、何か引っかかる。


「アクセル、レティシアはかなり弁が立つから、曖昧な説明では納得してくれないよ。もうこの際、はっきり言うべきだろうな」


 アクセル様が私のせいで言葉に詰まっていらっしゃると、ダミアンが割り込んだ。

 ちょっと、アクセル様に余計なことを言わないでくれるかな。まあ、余計なことを言ったのは私だけど。

 苦笑するダミアンは『微笑みの貴公子』とはまた違う。

 いったい何をはっきり言うんだと目で問いかければ、ダミアンは大きく息を吐いてから告げた。


「アクセルの婚約者だったカリナ嬢は、不慮の事故なんかで亡くなったんじゃない。暗殺されたんだ」

「え……?」


 暗殺? 

 聞きなれない言葉に頭が真っ白になる。

 確かに『王子様♡』は陰謀を阻止して結ばれる乙女ゲームではあったけど、暗殺なんて物騒な言葉は出てこなかった。

 考えてみれば、王位簒奪を企むくらいだから、暗殺とかしちゃっているのかもしれないけれど、ダミアンルートもあったから直接的な表現は避けていただけなのかもしれない。

 だけど、カリナ様を暗殺する意味は何?


「ショックなのはわかる。レティシア嬢はカリナを慕っているようだったからな。亡くなったときもずいぶん悲しんでいたのを覚えている」


 それはそう。(レティシア)は二つ年上のカリナ様を実の姉のように慕っていた。

 正直に言えば、当時はアクセル様よりもカリナ様のほうが好きだった。

 その記憶が(晴乃)を苛むのも当然で、アクセル様が私を気遣ってくれていることに喜ぶよりも、今はすごく悲しい。

 だけど、それ以上に疑問に思うことがある。


「……アクセル様たちの敵が存在するとして、なぜカリナ様が暗殺されなければならなかったのですか?」

「それは……まだわからない。ただ、カリナの死因は服毒によるものだった」

「ということは、まだ暗殺とは決まっていないのではないですか? カリナ様がご自分で毒を飲んだ可能性もあるのでは……」


 (レティシア)の記憶が確かなら、あの頃のカリナ様は幸せそうで服毒自殺をするようには思えない。

 だけど、可能性としては残しておくべきで、暗殺と決めつける根拠を知りたい。


「なぜ、カリナが自殺すると? レティシアは何か知っているのか?」

「存じません。ですが、カリナ様が暗殺されたと判断された根拠を教えてくださらないことには、納得できません」


 この言葉はレティシアの心の叫び。

 いくらアクセル様でも、暗殺と断定する根拠を示してくれないことには、(レティシア)は納得できない。

 しかもそれが、どうして〝予言〟と関係あるのか。


「私がマードイ侯爵家と縁続きになることを忌避する者は多かった」

「……そんなことで?」


 思わず漏れ出た私の言葉に、アクセル様もダミアンも答えようとはしない。

 そこで私はあることに気づいて、はっと息をのんだ。


 確かにマードイ侯爵家はこのプラドネル王国内でかなり力を持っている。

 それは政治的中枢に――宰相を務めている私のお父様であるカラベッタ侯爵とは違うベクトルでのこと。

 マードイ侯爵家は数多くの魔術師を輩出している名門で、今現在の魔術師長もマードイ侯爵の実弟であり、カリナ様もまた魔力がとても高かった。


「もしかして、その敵とやらは〝予言〟を知り、《サント・クリスタル》の力を持つ聖女を邪魔に思っているということですか? カリナ様が聖女である可能性を考え、力が発現する前に葬りたかった……?」


 そこまで考えてぞっとした。

 物語でよくある暗黒集団は魔王復活を望んでいたりするよね。

 でも、そんな単純なことなのかな? 

 どうせなら、聖女も手に入れてしまえば怖いものなしで……。


「それとも、カリナ様が聖女だった場合、すでにアクセル様側の手にあることを危惧したのでしょうか……」


 もしカリナ様が暗殺されていたとしてのもう一つ考えられる理由を口にすると、アクセル様とダミアンは顔を見合わせた。

 それからダミアンがにやりと笑う。

 悪巧みしている笑顔とよく似ているけれど、ちょっと違う得意げとでもいうような笑顔。


「ね? レティシアはすごいだろ? いちいち説明しなくても、自分で真相に近づいてくれるんだから」

「――だとすれば、都合の悪い真実にも近づくってことだがな」


 カリナ様が暗殺されたと考えるアクセル様たちの根拠を説明されなくても言い当てたってことで、間違いはないみたい。

 それでダミアンがドヤ顔で笑ってるわけか。

 でも、アクセル様の言う通り「都合の悪い真実」も私にはわかってしまったよ。


「ああ、そういうことですか」

「ほらな」


 私が納得して呟くと、アクセル様が今度はドヤ顔をダミアンに向ける。

 アクセル様のドヤ顔に萌え! ……てる場合じゃない。


「要するに、ダミアン様が私と婚約したのは、カリナ様を暗殺したと思われる犯人をあぶり出すためなんですね?」


 私を守るため、とか矛盾すぎて笑えるんですけど。

 単に私を囮にしているだけじゃない。

 ほんと、ダミアンはクズだよ。さらに言うなら、アクセル様も同罪。




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