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25.コロコロ


 というわけで、ダミアンのおかげで授業の遅れていたところも補えたし(そもそもダミアンのせいだけど)、いよいよ〝予言〟について、聞こうと思うわけだけど、なかなかタイミングが難しい。

 でも急がないと、馬車は王宮に着いてしまう。

 朝はこの二人きりの時間が気まずく感じたけれど、今は別の意味で緊張する。

 さあ、頑張れ私。


「あの、ダミアン様……」

「そろそろ〝予言〟について知りたくなった?」

「え、こわ」


 まだ何も言っていないのにバレバレなのが怖すぎて、思わず本音が出てしまった。

 だけどダミアンは怒った様子もなく、にっこり笑う。

 うん、これは怒ってない笑顔。


「レティシアのコロコロ変わる表情は可愛いけど、感情そのままなのは気をつけたほうがいいって言ったよね?」

「ダミアン様が鋭いだけです」

「おや、褒められているのかな? それとも誘われている?」

「は――っ!?」


 ダミアンは怒ってはいない。怒ってはいないけど、この状況は何?

 気がつけば押し倒されているんですけど!?

 え? さっきまで向かいに座ってたよね?

 それがどうして私は座面に背を預け、ダミアンが覆いかぶさっているの?


 今一つ状況がのみ込めなくて呆然としていると、ダミアンが「かまわない」って答えた。

 いや、全然かまうんですけど! とか思っているうちに、馬車のドアが開かれて、従僕の驚いた声が聞こえる。


「し、失礼しました!」

「大丈夫。気にしないでくれ」


 いやいやいや、気にする! とっても気にするに決まっているじゃない!

 だけど、そんな抗議の声は出せなくて、私は真っ赤になってダミアンに支え起こされた。

 押し倒したの、ダミアンだからね。

 って、そうじゃなくて!


 いつの間にか王宮に着いていて、馬車の外から従僕がドアを開けてもいいか訊いていたなんて、気づかなかった自分が恥ずかしい。

 しかも、もたもたしていたせいで、結局〝予言〟について何も聞けなかった。

 何なの、この羞恥プレイ&無力感。


 恥ずかしすぎて顔を上げられない私を、ダミアンがエスコートしてくれて部屋へと向かう。

 感謝するべきだろうけれど、諸悪の根源はダミアンだからね。

 絶対、さっきの馬車での(超誤解)出来事はあっという間に王宮内を駆け巡るに違いない。

 たぶん来週にはもう学園でも十分に広がっていると思う。


「……私はもう十分にダミアン様の婚約者として、名を馳せているはずです。ええ、名実ともにね。ですから、今さらダミアン様以外の方は侯爵家的にも世間的にも考えられません。なのにどうして、ここまでなさるんですか?」

「そうだな……面白いから?」

「面白いって……それだけですか?」

「先ほども言ったように、レティシアのコロコロ変わる表情が面白いからね」


 最低最悪だ。

 私の淑女としての評判は、婚約者であるダミアンの評価にも繋がるというのに、それを『面白いから』って理由で下げるなんて。

 確かに、もっと私が顔芸……じゃなかった、表情を取り繕えばいいのかもしれないけど、これでもダミアン以外の前ではちゃんとできているんだからね。たぶん。


「それじゃあ、また後で迎えにくるよ」

「はい? 今日は特に何も予定はないはずですが……」


 部屋まで送ってくれたダミアンが別れ際にそんなことを言うから驚いた。

 今日は晩餐会などの行事はなかったはず。

 首を傾げる私に、ダミアンは意地悪く笑う。


「結局〝予言〟について何も聞けていないのに、いいのかい?」

「ダメです」


 私が反射的に答えると、またダミアンは楽しそうに笑う。

 はいはい、もうその笑顔にも慣れましたよ。

 慣れるとギャップでも何でもないから平気……でもないけど、その顔に騙されたりなんてしない。


「迎えに、ということは、別室でお話しくださるということですか?」

「ああ。さすがにこの時間からここに訪ねるのはね……。また以前の応接間にしよう。じゃあ、また後で」

「はい、ありがとうございます」


 正直なところ、今すぐ〝予言〟については知りたいし、この期に及んで外聞を気にするのもどうかと思うけれど、ダミアンの気が変わっても困るので素直にお礼を言っておく。

 それからダミアンを見送って、いつでも出かけられるように急いで着替える。


「……お嬢様、やはり王弟殿下のことをそれほどにお慕いしていらっしゃるのですね?」

「それほどって、どういうこと?」


 着替えを手伝ってくれているクレールが驚くことを言うから、髪の毛が服に引っ掛かってしまった。

 いたたたっ!

 私の驚きをよそに、クレールは冷静に絡んだ髪の毛を解いてくれる。


「正確に表現させていただくのなら、落ち着きなくそわそわしている、といったところでしょうか」

「それは、……別にダミアン様にまたお会いできるから落ち着かないんじゃないわ。ちょっと大切なお話をしてくださるから……」

「さようでございましたか」


 さようでございますとも。

 だけど、クレールは信じていないみたい。

 本当なのに。私は〝予言〟について知りたいだけで、ダミアンじゃなくても誰かが教えてくれるならそれでいいんだから。

 ただ、たぶん〝予言〟についてはかなりの極秘事項なんだと思う。

 そう考えると、私が聞いてもいいものなのか、むしろ後戻りできないんじゃないかって不安になってきた。

 でも『虎穴に入らずんば虎子を得ず』って言うし、ちょっと違う気もするけど、頑張ろう!

 



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