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賢者ガラ(5)

ロシュは乾いた笑い声をかすかに立てた。

ぴったりの人物評だ。一介の盗賊でダカツを終わらせなかったドライバッハの英断を思う。


「ま、確かにあなたの相談員の役をわたしに任せたのはいい判断だったわよ。自慢だけど、わたし他人から話を引き出すの得意なんだよね。いきなり話を打ち切って理不尽な演出なんかしないしー」


話を突然に切り上げてロシュを地下深くまで落としたグレーゴルのやり方を言っているようだ。

「あなたにとっては死活問題でしょうけど。でもね、ロシュ君。この試練が理不尽なのも、やたらと怖いのも……あー、これネタバレしたら怒られちゃうかな。でも言いたいなぁ。どう、聞きたい?」


固唾かたずむ。

もったいぶるような、自らも衝動を抑えようとしているような言葉の使い方から考えて(ガラの力で思考力がいつもよりもかなり冴えているようだ)、試練の鍵となる事柄なのだろう。

どんな代償を求められるやら分かったもんじゃないが、聞けるもんなら聞きたい欲望を抑える事ができそうにない──知っていることを話そうかどうしようか迷う表情だけでこれほど心を揺さぶってくる人を、ロシュは知らない。

さんざん迷ったあげくに、頷いた。


「よし。それなら話しちゃおう。忘れてるだけだと思うけど……ここはね、試練を受ける人の心に応じて姿形を変えるダンジョンなのよ」

「……!」


そうだった。

ザック兄さんが言っていた、下調べの代わりに読んだ冊子にも書いてあったことだった。

どういうことだかよく理解しないままに飛び込んでしまった──なんてのは言い訳に過ぎない。最も大きなヒントが既に示されていたのだ。


「これから理解したって遅くないわ」

「そうでしょうか」

「そうよ。さて、たった一言に過ぎないけれど、あなたは改めて重要な情報を得た、今の時点でどう考える?」


「その人の性格や得意なことに応じて、試練が変わるって事でしょうか。課題の内容が違ってたり、戦う相手が違ったり……」

「ご名答。あなたのギルドに居る人を例にとれば分かりやすいかしらね」

「はい」


「……野蛮なまでの勇気と実力を持ち合わせた人間ならば、息もつかせない激烈な戦いの連続になる──ザクセン=ギゥレなんか典型的だったわね。彼は誰の手も借りずに長いこと戦い続けた。そりゃもう楽しそうだったもんよ。見届け人のドライバッハの方が飽きてたのがおもしろかったわ」


ザック兄さんならそうだろうと思った。

武器と魔法を非常に高い水準で使いこなす【黒騎士(ブラック・ナイト)】であるザクセンは、主に他の冒険者からの依頼を受ける冒険者だ。

常に小隊パーティの先頭に立って戦う彼が途中で依頼を投げ出したなんて話を、一度として聞いた覚えがない。低位龍(レッサー・ドラゴン)くらいなら何匹でも狩れると平然と言っていた。


「では……理知的で冷静な人なら?」

「魔力と判断力、知力と閃き。戦略を問われるパズルのような戦い。ライヒェルト=リヒターが実にくこれをした。出題し放題だったわよ」


普段からとても優しくてユーモアのあるライヒェルト兄さんの本職は、馬上で銃を巧みに扱う【竜騎兵ドラグナー】だ。正確無比な長銃ライフルさばきと、高位の魔物をも容易に罠に引っ掛ける戦略眼を持ち合わせている。


信頼と親しみと憧れを以って接する自慢の『家族』の名前が次々に出て来て、ロシュは迂闊うかつにも嬉しくなってしまう。

「創造性と知識に溢れた人なら」

「ユェンのことね。彼女の場合はここに遊びに来たようなもんだった。ヴァレリアの直弟子として積み上げた時間が他とは明らかに違っていた。スカウトしなかったのはウチの王の不手際ね。楽しい魔物おもちゃを作り上げて去って行った」


「『妹』も、ゼナも試練を受けましたか」

「うん、やっぱり試練にならなかった。ザクセンが逸材だとしたらゼナは天才。グレーゴルもダカツも負ける負ける、王の古い知り合いにたくさん出張でばってもらって、やっと満足させられた程度かな。あなたはゼナにかなり好かれてるようだから脅しとくけど……あの子の『お兄ちゃん』で居続けるのは大変よ。覚悟だけはしておいてね」

2022/11/15更新。

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