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79.師匠を訪ねて

本日よりとなりのヤングジャンプ様にて新連載開始です!


『十三番目の転生者~俺だけ見捨てた女神をぶっ飛ばす!~』


となジャン

https://tonarinoyj.jp/episode/316112896809499272


ニコニコ

https://seiga.nicovideo.jp/comic/60285?track=official_trial_l2


ぜひ読んでみてください!

「――ということができればなと」

「なるほどな。確かにそれが達成できれば冬の問題は解決する。いやそれだけじゃない。他の季節にも利用できるぞ」

「素晴らしい案ではないか。実現するなら俺の国でも使いたい技術なのだよ」

「ありがとうございます。でも、足りないものが多いんです。まず材料……燃料から考えないといけなくて」


 私の理想を実現するためには、大量の燃料が必要になる。パッと連想できるのは薪や炭。私の案では炎を活用するから、燃やすための素材が不可欠だった。


「既存の素材だと限界があるんです。やるなら他に、炎を長時間持続できる素材がないと。もし可能なら永久的に使用できるものか、再生ができるものが好ましいです」

「そんなものがあるのか?」

「わかりません。少なくとも私は浮かびませんでした。だから作るしかないかなと思っています」

「錬金術師らしい考え方なのだよ。つまるところ、作成に必要な素材と、その素材に何が必要かがわからない、ということなのだな?」


 殿下の質問に、私はこくりと頷く。今まとめてくれた通り、錬金術を使用するためのとっかかりが不足している。

 現状だと、何をどう作ればいいのかわからない。手探りでいろいろ試すこともできるけど時間がかかる。それだと季節がまた巡る。

 秋に作った水錬晶のように、完成品の元となる物があれば……。

 こんな時、シズクがいてくれたら相談できたんだけど、彼女も今頃仕事で忙しいだろう。彼女のように情報に長けている人物がいれば相談して……ふと思いつく。


「……エルメトスさん」

「師匠?」

「うん。あの人なら何か知っているかもしれないなって」

「確かに師匠なら何か知ってそうだな。協力してくれるかわからないが、聞きに行ってみるか?」

「うん」


 私たちは一縷の希望を胸に、トーマ君の魔法の師匠であるエルメトスさんの元を訪ねることにした。もちろん外は猛吹雪。外出にも相応の覚悟がいる。


「シュン、お前は残ってくれ」

「わかってる。イルたちだけ残すわけにはいかないからな」

「シュン殿。皆様の安全は私にお任せくださいませ。必ずや無事に送り届けてみせましょう」

「頼みます。ミゲルさん」


 エルメトスさんの元へはミゲルさんも同行する。ということは、当然殿下も一緒なわけで。


「お前は残ってもよかったんだぞ」

「馬鹿を言うな。俺は退屈なほうは選ばん。残るよりお前たちに同行したほうが面白そうなのだよ」

「そういうと思ったよ」

「ふっ、それに興味もあるのだよ。お前たちの師というのが、どんな人物なのか。この目で確かめるとしよう」


 どうやら殿下はエルメトスさんに会ったことがないらしい。トーマ君の話から師匠がいることは知っていたけど、会う機会には恵まれなかったとか。

 以前から興味があって、一度会ってみたいと思っていたらしいことを殿下の口から聞く。そうして私とトーマ君に加え、殿下とミゲルさんが屋敷を出発する。

 猛吹雪の中を歩くのは大変だ。雪山での経験がある分、少しは耐えられるかと思った。だけど実際は雪山よりも険しい。

 目が開けられない。呼吸をする度に肺が凍りそうになって痛い。すでに膝上まで雪が積もっていて足がとられる。

 普段歩く速度の半分以下のペースで私たちは道だった場所を進んでいく。


「中々厳しいな。気を抜けば意識が持っていかれるのだよ」

「坊ちゃま、私の後ろにお入りください。多少の寒さは防げます」

「構うな。お前こそ若くはないのだ。無理して倒れられたら困るのだよ」

「お気遣い感謝いたします。ですがご安心を」


 殿下とミゲルさんの会話もかすかにしか聞こえない。吹雪は音すらかき消してしまう。私の隣をトーマ君が歩く。


「平気か? アメリア」

「だ、大丈夫……」

「無理するなよ。ほら、手を」

「うん」


 トーマ君に差し出された手を握る。手袋越しだけど、彼の手からはぬくもりが伝わってきた。

 吹雪に押し戻されそうな身体を彼が引っ張り上げてくれる。


「ね、ねぇトーマ君、エルメトスさんは大丈夫なのかな?」

「ん? 師匠なら平気だと思うぞ」

「そうなの? あの場所、周りに何もないし、建物も小さかったからすぐ埋まっちゃいそうだよ」

「言われてみれば……そうだな。どうしてるんだろ? よく考えたらこの時期は一度も師匠のところへ行ってない。そんな余裕もタイミングもなかったからな」


 どうやらトーマ君も、冬をどうやってエルメトスさんが乗り越えているのか知らないようだ。一度だけ行ったエルメトスさんの家。

 領地で暮らす人々の中でも、あの家はひときわ小さくて古かった。幻想的な雰囲気も相まって、どこか遠い昔の建造物に見える。

 エルメトスさんはトーマ君たちの魔法の師匠さんだ。不安と期待を抱きながら私たちは彼が住んでいる場所へと向かった。

 徐々に近づいている。建物がなくなり、風と雪をさえぎる物がなくなって、余計に険しさを増していく。

 森へ入ると多少は楽になった。木々が吹雪の勢いを和らげて、降り積もり雪の一部も木が肩代わりしてくれている。とはいえ気休め程度だ。


「おいトーマ! 本当にこんな場所に人が住んでいるのか? 何もないぞ」

「変わった人なんだよ。俺の師匠は。もう到着するぞ」

「……あれはなんだ?」

 最初に気付いたのは殿下だった。私たちが向かう先に、オレンジ色の光が見える。雪が変色しているようにも見えたけど、違う。

 オレンジ色の半透明な壁が一帯を覆っていた。その周辺だけ、雪が積もっていない。理由は近づけば明らかだった。

「温かい……?」

「この壁が熱を発しているのだよ。トーマ、なんだこれは」

「結界……だと思う。俺も初めて見るよ」


 熱を発する結界は、エルメトスさんが暮らす領域をぐるっと半球状に覆っていた。透明だから中も見える。結界の中は一粒も雪も積もっていない。

 私たちが春に訪れた時の状態を保っている。

 殿下がおもむろに結界に触れようと手を伸ばす。それをトーマ君の声が止める。


「やめたほうがいい」

「……やはりそう思うのか?」

「ああ。この熱を発しているのが結界なら、直接触れれば火傷じゃすまないかもしれない」

「ではどうする? このまま諦めて帰る……などとは言わないだろうな」

「もちろんだ。というか、その必要はないよ」

「む? どういう――」


 話している途中で変化が起こる。私たちの前だけ、結界の一部が開いて通り道ができた。それを見てトーマ君は得意げに笑う。


「師匠が俺たちの存在に気付かないはずない。近づけば向こうから入れてくれる」

「……ほう、中々気の利いた演出なのだよ」

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