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22.錬金術師も役立ちます

 戦闘は素人目に見ても順調。

 二人の強さは圧倒的で、ドレイクは防戦一方だった。

 私の心配は本当に杞憂だったらしい。

 むしろ一方的にやられているドレイクに同情してしまいそうだ。

 

 と、そんな風に安心しきっていた。

 気を抜いていた。

 逆にこの場では良かったかもしれない。

 安心していたからこそ視野が広がって、私は外から傍観していたから。

 お陰で気付けた。


 彼らが戦うドレイクとは別にもう一匹、赤い目を光らせていることに。


「トーマ君! シュンさん! もう一匹いるよ!」

「なに!?」

「どこだ?」


 私は赤い目が見えた方向に指を指す。

 二人が戦っている場所と、私が立っている場所と距離は同じくらい。

 空洞の右端に、同じ大きさのドレイクが隠れ潜んでいた。

 ドレイクは獰猛で狡猾なモンスター。

 仲間がやられている様子を見ながら、攻撃するチャンスを窺っていた。

 そしてそれが今だと、潜んでいた一匹が姿を見せ迫る。


 私に向って。


「くそっ、アメリアの方に」

「大丈夫!」

「は?」

「トーマ君たちはそっちに集中して!」


 自分でも意外なほどスムーズに、身体と口が動いていた。

 私は肩から下げたカバンの中身を漁る。

 眼前にはドレイクが猛スピードで迫ってくる。


「何言ってるんだ! 今すぐ助けに――」

「いいからそっちに集中して!」

「はっはっはっ! どうやら本気で言ってるみたいだぞ?」

「笑い事じゃないだろ!」

「いいから目の前に集中しろ。どっちみち出遅れた。今は彼女を信じてやれ」

「っ……アメリア」


 トーマ君の心配そうな視線が伝わる。

 大丈夫、心配しないで。

 そんな言葉じゃ伝わらないのは知っている。

 私だって、二人の戦いを見るまでは心配でたまらなかったんだから。

 なら私も行動で見せるしかないんだ。


 私なりの方法で、ドレイクを退ける。


「準備はしてきたんだよ」


 ついていくからには足手纏いにはならない。

 もし自分が襲われたら?

 二人の助けが間に合わない状況になったらどうする?

 私には戦う力なんてない。

 私に出来ることは一つだけ……


 錬金術で切り抜ける!


 取り出したのは二つ。

 黄色い手のひらサイズの結晶と、あらかじめ描いておいた錬成陣の紙。

 錬成陣の上に結晶を乗せ、術を発動させる。

 この黄色い結晶は、ある植物と液体を混ぜ合わせて作った混合物。

 どちらも効果は神経性の毒。

 身体に取り込むことで神経に干渉し、全身の自由を奪う。

 錬成によって液体は霧へ変化し、一気に周囲へ拡散する。


「ぅ――」


 自分は吸い込まないように呼吸を止める。

 拡散した麻痺霧は五秒ほどで消える。

 しかし一度でも吸い込んでしまえば最後、しばらく動けない。

 大量に吸い込んだドレイクは昏倒し、その場でけいれんしながら倒れ込む。


「――ぷっはー! これで一時的だけど動きは止めたよ!」

「わお、本当に止めたぞ」

「凄いな……アメリア」

「えへへっ、だから言ったでしょ? 大丈夫だって」


 とか言いながら自分では内心びくびくしていた。

 成功してくれて心からホッとしている。

 ギリギリまでドレイクが迫ってきたのは正直もう……怖かったし。


「効果はたぶん五分くらいしかもたないの。私は何もできないから、早くそっちを倒してほしいな」

「ぷっ、アメリアお前、言うじゃないか。終わらせるぞシュン!」

「おう!」


 私が無事だとわかって二人とも戦闘に集中する。

 すでにボロボロの一匹を即座に片付けると、痺れて動けないもう一匹の方へ。

 氷の雨と炎の渦。

 二種類の魔法を同時に放ち、ドレイクを弱らせる。

 最後の一撃、脳天を剣で貫いた。


「ふぅ」

「終わったな」

「ああ」


 戦いを終えた二人が息づき、剣を鞘に納める。

 二人の様子から緊張が解けた私も、ふっと肩の力を抜く。

 無事に終わった。

 二人とも、私も生きている。


「良かった」

「良くない!」

「え!」


 怒声をあげたのはトーマ君だった。

 その表情は彼が初めて見せる怒りの感情で溢れている。


「な、なんで怒ってるの?」

「怒るに決まってるだろ! なんで無茶したんだ」

「だって準備してきたし、実際上手くいったよ?」

「それはそうだけどな。もし上手くいってなかったら今頃どうなっていたか」


 トーマ君は私のことを心配して言ってくれている。

 それはわかる。

 わかるけど、だったら私だって言いたいことはあるよ。


「トーマ君だってドレイクと戦ったんだから同じだよ」

「俺は戦えるから」

「私にだって錬金術があるよ? 今だって見てたでしょ?」

「だから上手くいかなかったときはどうするんだって」

「そんなのトーマ君だって同じじゃない!」


 言い合いがヒートアップする。

 自分でもびっくりするくらい食い下がった。

 そこにシュンさんが仲裁に入る。


「まぁまぁ二人とも無事だったんだしさ。それにどっちも怒ってる理由が同じなんだし、心配なら常にお互いを見張ってれば? 無茶しないように」

「それもそうだな。今後危険な場所へ行くときは必ず俺を同行させろ。俺が傍で守る」

「私のセリフだよ。トーマ君が怪我しないように付いてくからね?」

「お前ら……それもう外から見たらイチャついてるようにしか見えないぞ」

「「え」」


 そんな風に見えてるの?

 おかしいな……怒ってるのに。


 とは言えこれで最後の素材も手に入った。

 これで次はいよいよ作成に入れるね! 

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― 新着の感想 ―
[良い点] ただの自分勝手な女をでは無く、ちゃんとしている設定で良かった。 [気になる点] 簡単に使っていたけど、風向きや、位置の寄ってはトーマ君達が被害を受けていたかもしれない。
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