表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/109

20.今度は洞窟ですか

 地を這うドラゴン、ドレイク。

 その凶暴さは多くの人間の命を奪ってきた。

 ドレイクの素材が必要になって騎士団に依頼を出した時、ものすごく嫌な顔をされた記憶が蘇る。

 あの時は理解できなかったけど、帰還した騎士たちがボロボロだったの見てわかった。

 私はなんて軽々しく、他人に命をかけさせたのかと。

 それ以来、私はモンスター素材の依頼はなるべくしないように、別の素材で代用できないか模索していた。


「探索は俺とシュンで行く。街のほうはイルに任せていいか?」

「良いけど森は? 行かなくて良いの?」

「どうせ通り道だ。特徴は今日教えてもらってわかったし、ついでにとってくるさ」

「ま、待って!」


 思わず大きな声が出てしまって。

 動揺と心配が混ざって、つい力が入ったんだ。


「どうしたアメリア?」

「どうしたじゃないよ! 本気で言ってるの? ドレイクを倒しに行くって」

「嘘で言うわけないじゃないか。もちろん本気だ」

「なっ……わかってるの? モンスターだよ? ただの動物じゃないし、相手は凶暴で有名なドレイクだし」


 もしも何かあったら……

 嫌な想像が脳裏に過って、私の声は震える。

 そんな私の心情を察してなのか、トーマ君が優しい笑みを浮かべる。


「心配なんだな?」

「当たり前だよ」

「そっか。まぁそうだよな。でも大丈夫だ。俺はこう見えて強い。シュンもな」

「おいおいその言い方だとお前のほうが強いみたいじゃないか。お前俺に一回も勝ったことないだろ?」

「うるさいなっ、今そういうこと言ってるんじゃないから。ちょっと黙ってくれ」

「俺が黙ってたらお前の好き勝手に説明されるだろ」


 ここぞとばかりに言い合いになる二人。

 普段なら微笑ましく見ていられるけど、今はそれどころじゃなかった。

 すると隣からイルちゃんが、私の服の裾を引っ張る。


「心配しなくて良いよ。この二人が強いのはホントだから」

「イルちゃん……」

「初めてじゃないの。この領地にも時々モンスターが来るんだけど、そういう時は二人がなんとかしてたんだ」

「そう……なんだ」


 イルちゃんも私を安心させようと教えてくれた。

 それでも心配だ。

 心配なものは心配なんだ。

 みんなの話が事実だとしても、二人が本当に強いのだとしても。

 だからと言って、心配しない理由にはならない。


「ねぇトーマ君」

「ん? なんだ?」

「本当に行くんだよね?」

「もちろん」

「それは素材のために?」

「ああ。だけどそれだけじゃない。ドレイクがいる場所は街にも近い。領民に被害が出るかもしれないなら、領主として見過ごせない」


 彼は真剣に語る。

 決してふざけているわけでも、冗談を言っている感じでもなく。

 本心からそう言っている。


「……わかった。なら私も一緒に行く」

「え? 今なんて」

「私も一緒に行く!」

「……本気か?」


 私はこくりと頷く。


「足手纏いにはならないよ。私なりに準備していくから」

「いやでも、危険だぞ?」

「だから行くの。私は、私がいない所で何かあって、もう会えなくなるなんて嫌だから。二人が本当に強い所も見ないと安心できない」

「はははっ、おいおい。これはまた……トーマ以上だな」

「ああ……アメリアは俺より頑固だな」


 そうらしい。

 私も、私がこんなに頑固だってことを今知ったところだ。


 そして翌日――


 私とトーマ君とシュンさん、三人で森へ向かった。

 二人とも腰には剣を携えている。

 私も昨日の夜に念入りに準備して、役に立ちそうな物を揃えてきた。


「アメリアが首から下げてるのって何だ?」

「これ?」

 

 私が首から下げているのは、茶色い小さな布袋にひもを通したもの。

 トーマ君が知りたいのは中身のことだろう。


「モンスター避けだよ。モンスターが嫌がる臭いのする粉末を入れて、袋にも沁み込ませてあるんだ」

「へぇ~ そんな便利なものもあるんだな」

「結構簡単に作れるよ? でも効果は一日くらいしかもたないけどね」

「一日あれば十分だろ。ついてくるって言った時はドキッとしたが」


 それはこっちのセリフだよ。

 ドレイクを倒しに行くなんてセリフが飛び出すとは思わなかったし。

 思い返せば昔からトーマ君って無茶を平気でしてたよね……

 そういう所は大人になっても変わってないのかな?

 他人のこと言えないけど。


「おい二人とも、仲良くしゃべってるところ悪いんだが、あんまりのんびりしてるなよ? 日が暮れると面倒だから」

「わかってるよシュン。アメリア、少し進むペースを上げても良いか?」

「うん、頑張ってついていくよ」

「よし! 目標は昼までに洞窟へ到着して、夕方には終わらせて帰るぞ」


 そうして私たちは森の奥へ進んでいく。

 目指しているのは山脈の麓。

 地形上道が斜めになっているのか、普段同じ距離を歩くより足が重い。

 体力には自信のある私も、多少の疲れは感じる。

 それに対してさすが二人。

 息も切らさず不安定な場所を軽く飛び越え、私のことも気遣ってくれる。


 そして正午過ぎ――


 私たちは滝の前へ到着した。

 首の限界まで上を見上げても、まだ先がある滝。

 水は落ち、しぶきが舞って池になっている。


「あの裏か?」

「シズクの報告だとそうだな」

「じゃあ俺が道を作る。シュンとアメリアは少し下がってくれ」

「道を?」


 どうやって?

 と疑問が湧いたけど、シュンさんが首を振り下がるように示す。

 私はそれに従って、離れて彼を見守る。


「さて」


 彼は前へ歩き出す。

 平然と、水の上へ一歩を踏み出す。


「【アイスロード】」 

 

 彼の足が水に触れた瞬間、水面が凍結する。

 凍結はくるまった絨毯を広げるように進み、滝まで届く。

 流れに逆らい滝を凍結し、遮られた滝の水は左右に分かれて流れる。


 今のはまさか……

 

「魔法?」

「さぁ、ここからが本番だ」

本日ラストの更新になります。

今日も最後まで読んでいただきありがとうございました!

引き続き多くの方々に読んで頂けて嬉しいです。


続きも頑張って執筆していきます。


もし可能なら、現時点でも構いませんので評価を頂けると嬉しいです。

ページ下部の☆☆☆☆☆からお好きな★を入れてください。

次も頑張ろうというモチベーション維持・向上につながります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿しました! URLをクリックすると見られます!

『残虐非道な女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女の呪いで少女にされて姉に国を乗っ取られた惨めな私、復讐とか面倒なのでこれを機会にセカンドライフを謳歌する~』

https://ncode.syosetu.com/n2188iz/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

第一巻1/10発売!!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000

【㊗】大物YouTuber二名とコラボした新作ラブコメ12/1発売!

詳細は画像をクリック!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000
― 新着の感想 ―
[気になる点] ドレイクというモンスターを倒しに行くのに,モンスター除けを持っていく? 近くじゃないと効果がないとかかもしれないですが……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ