18.森を探索しよう
午前中から始まった石拾い。
みんなも協力的で、順調に集まっていく。
私とトーマ君も一緒に参加していた。
「アメリア、疲れてないか?」
「ううん、これくらい平気だよ。宮廷で働いてた時に比べたら全然! むしろ楽しいくらいだよ」
「ははっ、なら良かった」
たかが石拾いくらいで大袈裟かな?
でも本当に楽しいんだ。
トーマ君やみんなと一緒に、同じ目標に向かって取り組んでいる。
一人じゃなくて、誰かと一緒に何かをすることは、ただそれだけで意味があるのだとわかった。
そんなことをしみじみ感じていると――
「リア姉さん! ただいまー」
「お帰りなさいイルちゃん」
イルちゃんが私の所にトコトコと歩み寄ってきた。
私は彼女に尋ねる。
「どうだった?」
「言われた通りちゃんとお願いしてきた! 場所は街の倉庫に集めればよかったよね?」
「うん、ありがとう」
「これくらい出来て当然だって!」
自信満々に腰に手を当て胸を張る。
彼女には家にいる人たちに事情を説明してもらっていた。
それ以外にもう一つ、家で使わなくなった鉄製品があれば譲ってほしい、というお願いもしてもらっていたんだ。
石の次にたくさん必要な鉄粉を集めるために。
どうやら上手くお願いできたらしい。
「やること終わったし、あたしも石拾い手伝えばいいの?」
「そうだね。うーん……」
私は周囲を見回す。
石拾いは順調に進んでいる。
みんな自主的に、臨機応変に動いてくれているようだ。
このまま大丈夫そうかな?
と思っていると、イルちゃんの後ろからシュンさんがやってきて。
「トーマとアメリアちゃんは他の素材集めに行ってくれ。こっちは俺の方でまとめておくから」
「良いのか?」
「ああ。見ての通りみんな頑張ってくれてるからな。それに並行して素材集めをしたほうが効率的だろ? イルも二人を手伝ってやってくれ」
「ほーい!」
イルちゃんは右腕を大きく挙げて答えた。
「じゃあ頼むよ。アメリアもそれでいいか?」
「うん。ありがとうございますシュンさん」
「良いって。そっちの方が大変だろうからな。それとイル、お前はトーマが彼女に変なことしないかちゃんと見張ってろよ」
「任されたっ! その時は思いっきり蹴飛ばすからな」
「するわけないだろ! どれだけ俺のこと信用してないんだよ」
やれやれと呆れるトーマ君。
イルちゃんはニカっと笑い、シュンさんも楽しそうな顔だ。
いつ見ても三人は友人みたいで、微笑ましい。
私も早く三人と並んで溶け込めるようになりたい。
そう思った。
◇◇◇
街のことはシュンさんに任せて、私たちは森へ入る。
領地の大半を占める広大な森。
その中でもモンスターが生息していない安全なエリアで、街に近い場所を選んだ。
連日の大嵐の影響を森も受けている。
木々は倒れ、草花は地面と離れて吹き飛んでいるし、地面もぬかるんでいて足をとられないよう注意が必要だ。
「――で、あたしは何すれば良いわけ?」
「さっき話しただろ? 粘着草と樹液を取りに行くんだよ」
「そんなの知ってるし! あたしが聞きたかったのは、探すのにどうすればいいのかってことだから!」
「あーそういう意味か。その辺りは俺も詳しくないから、全部アメリアに任せてるよ」
私は二人の前を歩いていた。
声が聞こえて振り返る。
視線はトーマ君の右肩へ。
「トーマ君、その籠重くない?」
「これか?」
彼は右肩に竹で編まれた箱を担いでいる。
大きさは彼の肩幅より少し狭く、深さは肩から腰くらいまである。
「なにも入ってないし平気だよ。というかこれで足りるのか?」
「うん。粘着草はその籠いっぱい。樹液は……」
私は肩からかけたバックから透明な瓶を取り出す。
「この瓶が一杯になるくらいで十分だよ。どっちも量はそんなに必要ないから」
むしろ量だけならドレイクの外皮のほうが必要になる。
ちなみに、ドレイクについては情報を集めている最中となっている。
今のお仕事は、この森で二つの素材を集めることだ。
「ねぇリア姉さん、粘着草って初めて聞いたんだけど、どんな草なの?」
「見た目は背の低い小さな草花だよ。特徴は茎を折った時に出てくる白い液体に、物をくっ付ける粘着効果があること」
「へぇ~ なんか便利そう!」
「実際すごく便利だよ。でも他に代用できる物が多いから、あまり知ってる人はいないかも」
錬金術の素材としても使うことがある。
ただ粘着剤があるし、わざわざ粘着草を用いる必要がない。
コーディングレイヤに関しては、粘着草を使わないと錬成できないから、今回は不可欠な素材だ。
「足元を見て、木の根っこの周りにくっついてる草があったら教えてね? 花は白色で、網みたいにツルが伸びてたら粘着草だよ」
「ほーい!」
しばらく歩きながら進む。
すると……
「あ! リア姉さんもしかしてあれ!?」
イルちゃんが勢いよく指をさす。
視線の先を確認すると、倒れかかった木の根を支えるようにツルが巻き付いていた。
一部千切れた茎の一部から白い液体が漏れて固まってる。
間違いなさそうだ。
「うん。あれが粘着草だね」
「やった! どう主様? あたしが最初に見つけたぞ!」
「別に競ってたわけじゃ……」
「あたしのほうが役に立ってるな! 主様なっさけなーい」
「くっ……こいつ……良いよわかった。じゃあ次は俺が見つける」
子供相手にムキになって、トーマ君に火が付いた?
そんなこんなで二人で競いながら、次々と粘着草を探していく。
いつの間にか日が暮れていた。
 






