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14.風にも負けず

 トーマ君から領地の歴史と環境について教わったのが午前。

 午後からもう少し詳しく説明してもらうことになって、昼食を取ってると……


 ガタガタガタガタ――


 窓ガラスが不規則に、荒々しく音を立て始めた。

 つい数分前まで青空だったのに、淀んだ雲が太陽を隠す。

 影に覆われた領地に大雨が降り始めた。

 あれよあれよと強風に襲われ、雷の轟音が響く。


「ったく、話に出した途端これだから困るよ」

「すごい風……」


 昼食が終わって書斎に向かう途中、廊下の窓から外を覗く。

 雲の影で暗くなり、風に乗って斜めに降る雨が視界を遮っている。

 微かに見える屋敷の外の木々が、いまにも根っこから引き抜かれそうなほど揺れていた。

 背の高い植物ほど風の影響を受ける。

 木が飛ばされ宙を舞い、民家に落下したら大惨事だ。

 風に巻き上げられた石や土がぶつかるだけでも壁が傷つき剥がれてしまう。

 通り雨なんて生ぬるいものじゃない。

 外を出歩けば確実に死人が出る。


「屋敷の人は大丈夫なの? シュンさんとか外に出てたんじゃ」

「あいつは大丈夫だ。そういう変化には人一倍敏感だし、今頃どっかの民家に避難してると思うぞ」

「ほ、本当に?」

「大丈夫だって。こういうの俺たちにとっては慣れっこなんだ」


 そう言って書斎に向けて歩き出すトーマ君。

 彼はそういうけど心配な私は、何度も窓の外を見て立ち止まり、置いて行かれないように駆け足でトーマ君の後に続いた。

 

 書斎に戻り、話の続きを始める。

 午前中に話したことの復習から入ったのだけど……


「なぁアメリア」

「え、なに?」

「そんなに気になるか? ずっと心ここにあらずって感じだぞ」

「ご、ごめんなさい」


 彼に指摘された通り、話を聞いているようで流しているだけ。

 頭の中は外の様子が気になって、心配でいっぱいになりそうだった。


「心配なのはわかるけど大丈夫だから。間違っても外に様子見に行こうとか考えるなよ? アメリアくらいなら一瞬で吹っ飛ぶぞ」

「わ、わかってるよ。そこまで無謀なことしないし」

「だと良いけどな。本当に心配しなくて良い。あいつは魔法も使えるから最悪一人だけならなんとかなるし」

「そうなんだ」


 シュンさんって魔法が使えるんだ。

 現代で魔法が使える人って貴重だったよね?

 凄い人なんだ。

 だからと言って心配が消えるわけじゃないんだけどね。


「ちなみに俺も魔法が使えるようになったんだぞ? ここに来て教わったんだ」

「へぇ~ そうなんだ」

「リアクション薄っ! もっと驚けよ」

「え、いやーえっと……トーマ君は領主になってたことに驚いたばっかりだから……」


 その時の驚きが勝ってそんなに驚けなかったみたい。

 魔法が使えるのは凄いと思うけどね?


「あははははっ」

「笑って誤魔化すなよ。まぁいいや、とにかく大丈夫だ。心配しなくても夜には帰ってくるよ。十中八九ずぶぬれだろうけど」

「帰ってきて即お着替えだね。あれ? でも魔法が使えるなら結界とかで雨も凌げないの?」

「出来るけど常にってわけにもいかないんだ。肝心な時に魔力切れになったら終わりだし。俺もあいつも魔法が使えるだけで、魔力は無尽蔵じゃないからな」


 魔法も意外と万能じゃないんだ。

 錬金術も元は魔法の一つだし、発動には魔力を消費するから、魔力切れになる感覚は知ってる。

 全身の力が抜けてしまって、まともに歩けなくなるんだよね。

 この嵐の中でそうなったら確かに終わりかも……


「そういえば、建物は魔導具で守ってるんだよね? その魔導具ってどういうタイプなの?」

「タイプって?」

「ほら確か、魔導具って二種類あるでしょ? 魔力を直接流して使うものと、生成した魔力を蓄積して使うもの」

「もちろん後者だよ。領民全員が魔力を扱えるわけじゃないんだ」


 やっぱりそうだよね……

 納得しながら頷き、一つの懸念にたどり着く。


「ってことは、長く暴風が続いたら大変じゃない? 蓄積した魔力が不足したら効果も弱まるよね?」

「よく知ってるな。その通り。だから最悪の場合の逃げ道として、民家の地下には通路があって、全部ここへ繋がってる。逃げてこられるように」

「そうだったんだ。じゃあ最悪はないのか」


 領民が命を落とすことが最悪として、逃げ道があるならそれだけは回避できる?

 それでも危険なことに変わりはない。

 魔導具だって万能じゃないし、結界も全てを防げるわけじゃない。

 魔力切れ以外にも魔導具が破損してしまったら?

 建物も時間が経てば老朽化するし、不安要素は多い。


「何かできないかな……」

「アメリア?」

「私の力で出来ることってないのかなって」


 私の力、すなわち錬金術でどうにかならないだろうか?

 少しでも貢献できる方法はないのか頭を捻る。

 魔法のように万能な力じゃない。

 出来るのは物質同士を合成して、別の物質に再構成することだけ。

 物質の構成を理解して、長所を伸ばし、短所を補うように作り変えて……


「――そうだ。できるかも!」


 錬金術だからこそ出来ることがあるかもしれない。

 私の頭に、一つの閃きが浮かぶ。


「トーマ君! もしかしたら魔導具に頼らなくてもいいかもしれない」

「本当か?」

「うん。私が作ってみせるよ。雨にも風にも負けない新しい壁を!」

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