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02

 馬車から降りたら目の前には適度に光の差し込む森が広がっていた。



 北の森は比較的安全と言われているけど、それはあくまで浅い層での話。

 中層の森から山に変わる場所からは出てくるモンスターもがらりと変わってしまう。


(ま、今日はそんな奥まで行く必要ないけどね)


 ちゃんとハンターになって武器を揃えたら奥まで採取しに行こう。山に近づけば鉱石も採れるらしいし私の実験もきっと捗るわ。




「それじゃあ今から試験をはじめます。討伐証明の角を忘れないようにして下さい。それでははじめ!」

「「「うおーー!」」」


 ジム男の掛け声に合わせて男達は森に突撃していってしまった。


 まったく。

 そんなに慌てなくてもモンスターは逃げないわよ。


「ホーンシープの1日の討伐個体数は多い日で15体ほどですので、半分くらいは落ちるでしょうね」

「なんですと!?」

「頑張って下さいね」


 しかもジム男の奴め。

 なんか応援されてる気がしないのよ。


 まぁ、これ以上ここにいても仕方ない。

 私は男達とは少し方角を変えて森の中に入って行った。






 狩りの基本は獲物を見つけることからって聞いた事があるわ。

 だからとりあえず足跡を探してるけど、そもそも私はホーンシープの足のサイズを知らないのよね。


「他に痕跡はどうやって見つけるのかしら?」


 周りを見渡すけど、木に遮られて遠くまで見えない。耳を澄ませてみるけど、草のなびく音や鳥の鳴き声くらいしか聞こえない。


「まだ浅いのかしら? それに他のハンター希望者もいないし、もっと奥なのかもしれないわね」


 よく考えればこのあたりはまだ森というよりも茂みくらいね。太陽の光もたくさん入ってくるし、薬草を採るぶんにはいいけど本格的なモンスターがいるような場所じゃないわ。


 そう考えて私はどんどん森の奥に進んでいった。







「あ、これ回復薬に使われる薬草じゃない! うわ! あっちにも! すごいすごい! 超穴場!」


 やっぱり森の中に入ると珍しいものが増えるのね!


 うわ〜、これだけでもハンターになった気分。もちろんモンスターを倒すけど少し採っておこう。



 ガサガサ


「ん?」


 遠くの方でなにか音がしたような?


 薬草を採っていた私は顔を上げて音のする方を見た。するとそこに討伐対象のホーンシープがひょっこりと現れた。


 間違いない。

 牧場にいる羊よりも体が大きくて立派な角。


(どうしよう、えっと、ナイフで、こっそり近づいて)



 ダダッ ダダッ ダダッ


(あ〜もたもたしてたら行っちゃった)


 でも一度見つけたんだし大丈夫。

 私は薬草採取をやめてホーンシープを走って追いかけた。






 それから随分と走ったけどホーンシープが見つからない。

 思ったよりも速いのね。

 なんとか痕跡を探せないかしら?


「う〜ん」

 ぐ〜〜


 ん?

 今の私かしら?

 大丈夫?

 誰も私のお腹が鳴る音聞いてないよね?


 ちょっと恥ずかしいから辺りを見渡したけど誰もいないし大丈夫。

 仕方ない。

 とりあえずここでご飯でも食べようかしら。


 ガサゴソ


「……はい?」


 私は支給された鞄の中を見て絶望した。

 なんと鞄の中にはお弁当どころかの食べ物が入ってない。

 あるのは包帯と消毒液だけ。


 舐めてた。

 正直まだハンター希望者だからもう少しギルドが手助けしてくれると思ってた。


(考えてみればそうよね。お弁当持参のハンターなんていないわ。みんな現地調達してるはずだもん)


 それにここは森の中。

 狩場の中では比較的食材も手に入りやすいはず。探せばすぐに食べ物くらい手に入るんじゃないかしら。


「あとは飲水もほしいわね。川でもあれば助かるんだけど」


 それから更に歩いたけど、私の判断は間違ってなかった。

 たいして歩かないうちに小さな果実の実をいくつか見つけることができたからだ。まだたいしてお腹は膨れてないけど、それでも食べ物があるとわかると不安も薄れていく。


「やっぱり採れたては美味しいわ〜。これもハンターの醍醐味ってやつかしら」



 そして浮かれたままの私は更に更に奥に進んだ。だってとっくに浅い層を抜けたなんて素人の私にはわからなかったから。


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