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01

「時間だー。ハンター希望者は奥の訓練所に集合しろー」


(きたー! 私の時代がきたー!)



 男の人の号令に合わせて建物の外にいたみんながぞろぞろと奥の部屋に入っていく。周りは同い年のはずなのに、みんな鍛えてて強そうに見えるわね。


 もちろん私も今まで鍛えてきたけど、それでも頭ふたつは小さい私は同い年の中では貧弱に見えてしまうから平等じゃないわね。

 それに今回は女の子は私一人しかいないじゃない。


(ダメダメ。はじまる前から弱気になってどうするのよ)


 小さいながらも胸を張り直して自分自身に言い聞かせてみんなについていく。


「私は今日からモンスターと戦う憧れの職業ハンターになるんだから」






 訓練所の中には30人ほどの若者が入ってきた。みんなが同い年ではないと思うけど、ハンターになる資格はたったふたつ。

 15歳以上である事と強い事。

 ただそれだけ。


 そのハンターになるための適正試験は年に2回あって、私はこの前15歳になったばかり。知り合いには辞めておけと言われたけど私は自分を曲げないわ。


(絶対にこの街を代表するハンターになってみんなをモンスターから護るんだから!)



 そんな事を鼻息荒く考えていたら、私たちの前に事務的な男の人が立った。


 まぁまぁの顔ね。

 落ち着いた感じだしハンターっぽくないしギルドの職員かしら?


「お集まり頂いてありがとうございます。これから皆様には1日かけてハンターになるための適正があるか試験を行います。無事合格して頂ければ晴れてハンターとなり、明日から私たちハンターギルドが支援させて頂きますので、是非頑張って下さい」


 事務的な男の声で周りが浮足立つのがわかる。


 当然ね。

 なんせみんな小さい頃からモンスターを狩るハンターに憧れたんだもの。

 思わず私も両手を握りしめる。


「それでは本日の試験を説明します。試験内容はホーンシープと呼ばれる一角羊の討伐です。討伐証明として皆様にはその角を持ち帰って頂きます。場所は、北の森です」

「「「お〜」」」


 ホーンシープの肉は普通に市場に出回っているけど、それを自分で狩るとなると違う感情が湧いてくる。


 北の森もハンターでなくとも数人の大人であれば素材を採りに入れるような場所だからそこまどで特別な場所じゃない。

 それでも私は危険だからと言われて入った事はないから、そんな場所に行けるだけでワクワクしてしまう。



 そんな試験内容に胸をときめかせていると、1人の男の子が事務的な男に質問を投げかけた。


「ちょっといいですか?」

「なんでしょう?」


 せっかちね。

 だけど助かるわ。

 どんどん質問して頂戴。


「武器はどうするんですか? ハンターになれば初心者用武器を貸し出してくれると聞いてるんですが」


 わかるわかる!

 ハンターと言えば武器!

 そう言っていいほどに、モンスターを倒すためには武器が重要になる。

 そして体格の小さい私は特にその武器が重要に、いえ、超重要になる。


 だから当然私も今日の試験のためにギルドが武器を貸し出してくれると思っていたけ。だけど事務的な男の人が手にとったのは小さなナイフと鞄。ただそれだけだった。


 そのナイフを何気なく眺めていると、事務的な男の人は私にトドメをさしてきた。


「今日皆様が行く北の森にはそこまで危険なモンスターはいません。だからこれを全員に支給します。それで、頑張って下さい」

「えーー!?」


 思わず私は叫んだ。

 だってそうだ。

 あんなのでモンスターと対峙するなんてこわすぎる。


 それに体格の小さい私は武器に頼るしかない。なのにそんな小さなナイフでは小型の草食獣しか倒せない。


 だから私はみんなが注目するなかすがるように質問した。


「他に選べないんですか? 初心者用武器には威力のある武器とか遠距離武器とかもありますよね?」


 だが事務的な男の人は用意していたようなセリフで私の願いを断ち切ってきた。


「ハンターになりたいのであれば体力と知略を兼ね備えていなければなりません。もしナイフで目的のモンスターを倒す自信がないのであれば辞退する事をオススメしますよ」

「……」

「それとこの支給品と現地調達以外のものを使った場合は失格とします。わかりましたね?  赤髪の爆砕姫」

「な! あいつが噂のやばい奴か!?」

「この前もチンピラ達を爆弾でふっ飛ばしたって聞いたぞ!」


 なんなのこの男は?

 かわいい私がお願いしているのにひどくない?


 しかもこいつのせいで私の噂が広がったじゃない。

 パーティ組めなかったらどうしてくれんのよ?

 もうこんな男はジム男でいいや。



 それに武器が貸し出されなくて不満をもらしているのは私だけじゃない。

 あきらかにみんなのテンションも下がっている。


「嫌なら帰って頂いて結構ですよ。では、参加する方だけ表に用意した馬車に乗って下さい」



 それだけ言い切るとジム男は訓練所から出ていった。

 皆もそれに合わせて渋々ナイフと鞄をとって訓練所から出ていった。




◇◇◇◇



 ギルドに集まったハンター希望者は4台の馬車に分かれることになったた。私はその最後尾の馬車にとぼとぼと向かう。


 その馬車には他の希望者7人が乗っていたけど、すでに4人と3人は知り合いらしく、あーだこーだ作戦をたてている。


 そのせいで1人の私はなんとなく居心地が悪かった。

 しかもさっきのが悪目立ちしたのか、チラチラと見られてる気がする。

 いや、もしかしたらかわいい私に興味を持ったのかもしれないわね。


(ふん! パーティに誘いたいなら男らしく誘えばいいじゃない! ノッてやらなくはないわよ!)


 そんなことを思っていると、3人組のうちの1人が照れながら話しかけてきた。


「なぁ、ちょっといいか?」


 やばい!

 緊張する!

 告白されたらどうしよう!


「お前の髪が赤いのは爆発に失敗したからって聞いたけど本当か?」

「ぷっ! ほんとに聞きやがった!」

「がははは! ばっかだ〜」



 は?

 なにこいつ?

 失礼じゃね?

 私の髪が赤いのは地毛だぞ?


「違うのか? あ、そういや今までの爆発でパーマにならなくてよかったな。爆発姫」

「「「爆発! ぎゃはははは!」」」


 いや、マジでなんなの?

 巷で爆砕姫って呼ばれてる時点でどうかと思うけど、爆発で笑いとるってどうよ?


 ふりかな?

 爆発させてもいいってふりかな?


 隣で笑ってる4人組も覚えてろよ。




 こうして私のハンター試験は逆恨みとともにはじまった。


他の連載ものの合間に書き溜めたので、1日10話ほどで一気に連載します。今日もこのあとに順次投下しますので、勢いよく完結できるようにブクマ応援をお願い致します。

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