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少年は自分のキャラクターに(とう)と名づけた。杜(神聖なもり)のような、人が拠りどころとする光あふれる存在、そんなものに密かな憧れがあった。


このゲームは、性別や年齢を公開することもしないこともできた。デタラメな情報を登録し公開することもできた。少年「杜」はその名前以外にはどんな情報も登録しなかった。


そのあとすぐにゲームが始まった。まずはチュートリアルとのテロップが出たが、操作方法や目的が説明されることは無かった。現実世界と似たような世界観で、やや古風なマップ上で行き先を選択しながら移動するようなつくりだった。マップ上の行き先、例えば「学校」や「商店街」のようなものにはそれぞれに今どの程度のキャラクターが滞在しているか分かる仕様になっていた。


数分の間、マップをタップしいろいろな場所を行き来していると、「依頼あり」という表示を何度か目にする。どうやらこの依頼をこなしていくことがゲームの目的のようだった。


少年は、このゲームが楽しいのかつまらないのかよく分からなかった。分かりにくさや煩わしさのようなものは無かったが、かと言ってどうしても先が気になるということもない。


例えば、「依頼」には社員募集というようなものがあり毎日の行動ポイントを差し出す代わりに報酬とスキル値の上昇が得られると書かれていた。あまりに現実的すぎて、だから、これが何のゲームなのか判別できなかった。報酬を貯めたとしてそれは何に使われるのか、ゲームクリアのようなものはあるのか、ボスを倒すというようなイベントがこの後で発生するのか、一時間程度プレイする中ではまったく何の情報も見つけられなかった。


少年は結局それ以上進めることなく、依頼を受けることも何者かと交流することもなく、アプリを閉じた。


暗い部屋、カーテン越しに尖った雨音が聞こえていた。






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