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エルハイミ‐蛇足編‐  作者: さいとう みさき
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ミハイン王国編その二

エルハイミのその後を覗き見る蛇足編です。

ティアナの転生者を見つけた後の日常を垣間見てみましょう!



 ミハイン王国編その二



 ベイベイの街は腐った所からあたしたちが教育的指導をしたおかげで名実ともに美しい都と変わっていった。



「あら、可愛いお嬢さんだことぉ、昔だったら放っておけないのにぃ」


「そちらのおじさまステキよんっ! ねえうちのお店で遊んでいかないぃ?」



 街の様子を見に来たのだけど‥‥‥



「お、お母様何故にここに堕天使たちが‥‥‥」


「むう、耐性が出来たとはいえ流石にきついですな」


「あ、主様! 黒龍様を何という所へ連れてくるでいやがります!!」



 言いたい事は良く分かる。

 ちょっと裏通りに入るとデルザたちが仕切っているという歓楽街になるのだけど何故こうなった?


 いたるところに女性の服装をしたいかつい筋肉ムキムキのお姉さん(元男)が客引きしている。



「主様が『女性を売り物にしているのは許せませんわ!』とおっしゃっていたので配慮致しました。最近では上客も出来始めわざわざこのベイベイにまで観光がてら遊びに来る貴族も増えております」


「勿論我々のする施術の方も評判がとてもいいですよ、主様!」


「すべて我らが仕切っておりますのでここでのいざこざは瞬時に解決いたします」



 デルザもアルフェもベーダもなぜか誇らしげに胸を張ってあたしに報告する。

 そして見えないはずの尻尾が降られてご褒美を欲しがっている。



 あたしはこめかみに手を置きため息を吐く。



「まあ、平和的であれば多少の事は許しますわ。しかし結局この街から歓楽街は無くす事が出来ませんでしたわね?」


「お言葉ですが主様、こう言った息を抜ける場所も必要かと。そしてそれが正常に運営されているのであればそれは必要悪だと思われます」


 デルザがあたしの前に跪き頭を下げる。

 まあこの子たちに任せておけばいいのだろう。

 しかし何か違うような気もするのが玉に傷だ。



「この件は任せますわ」


「ご理解頂けて大変助かります。何せここには上客が多く我々としましてもそれをネタに平和的に色々と融通を引き出しておりますゆえ」



 何それ?

 なんか怖いんですけど!?

 それって弱みを握って言う事聞かせてるって言わない!?



「あ、主様、丁度あそこに我々の上客がおります!」


 見ればお忍びなのが一発でわかる格好をしたこの国の王様がかなり濃いめのお姉さん (?)に連れられてニコニコとお店に入っていく。




「ちょっとマテですわ!! なんなのですの!? そこっ!!」




 あたしが思わず声を上げ指さすとお忍びのドルモン国王はびくっとなり従者共々慌ててあたしの前で見苦しい言い訳を始める。



「こ、これはエルハイミ殿! これはその、市場視察にございます!!」


「市場視察が聞いて呆れますわ! 何をやっているのですわっ!」



 もう駄目かもしんない、この国。

 これではイオマの計画書通りうちの子たちに仕切らせた方が良いのかもしんない。



「お待ち下さい、エルハイミ様」


 あたしがあきれているとそのお店のお姉さん(?)が話しかけてくる。

 あたしにこんなお店の知り合い何て‥‥‥



「って、ドレイドですの!?」



「はい、その節はエルハイミ様に大変お世話になりまして。あの壁合成との良き思い出が忘れられずデルザ様にお願いしてこの界隈の店を任せていただいております」


 そのお姉さん(?)は元奴隷商のドレイド=ルブドその人であった。

 いや、もう人じゃない。

 バケモンだこれ。


「主様、ドレイドにはこの歓楽街を管理させております。おかげでその筋の上客がこぞってやってきております。現在他の国の支店にも我々の直営店を展開する準備をしており、女性の地位向上の為世界中にこう言った店を広げようと思います」


「やめなさいですわ、それでは私の気が落ち着きませんわ‥‥‥」


 一体何をどこでどう間違ったのかこんな化け物を世界中に増やしてどうする?

 変わり果てたドレイドをえんがちょしながら見るあたしは思い切り引いていた。



「お、お母様流石にこれはちょっと‥‥‥」


 ふらふらし始めるコクをあたしは受け止める。

 分かるよ、分かるその気持ち!



「主様、どさくさに紛れて黒龍様に変な事しないでいやがりますよね?」


「何を言っているのですわ、する訳無いじゃないですの!」


 むしろあたしの方がめまいがしてくるってのに。

 あたしたちは重い気分のまま歓楽街を後にした。



 * * *



「それでデルザ、こちらの養殖の方はどうなっていますの?」


「はい、こちらも抜かりありません主様」



 新たな産業として真珠の養殖を始めたわけだけど、海流の緩やかで新鮮な潮が流れ込むこの辺は養殖にうってつけだった。


 そしてあたしの発案で棒にこびりついた青さを採って来て湯がき平たくざるの上で干して海苔もどきも作らせた。

 これがなかなか評判で最近では精霊都市ユグリアのイチロウさんに納品も始まった。


 のだが‥‥‥



「デルザ、確かに産業が活発になるのは良いですわ。しかしあれは何なのですの!?」


 見れば筋肉ムキムキのおっちゃんたちがふんどしできゅっと締まったお尻を丸出しにしている。


「あれはこの地域の海に入る為の服装だそうです。濡れるのがあの腰に巻き付けた布だけなので非常に効率的だとか」


「それは分かりますが何故踊りをしているのですの?」


 見れば一糸乱れず同じ動作を始めたおっちゃんたち。

 どう見ても踊っているようにしか思えない‥‥‥


「あれは水に入る前の準備運動だそうです。やはりこの地域に伝わる‥‥‥」


 そう言っているうちに桶で頭から海水をかぶり始めた。



 ばしゃーん


 ほいさ!


 ばしゃーん


 はいさっ!



「「「「はいっ!」」」」



 何故最後にみんなでポージングする!?



「デルザ、あれもこの地域に伝わると言うやつですの?」


「はい、見事な息の合った動作だと思います。われわれもあれを取り入れましょうか?」


 あたしは屋敷にいる女の子たちがふんどしで異様な踊りをして最後に水をかぶりポージングする姿を思い浮かべてしまった。


 いや、可愛い女の子のふんどし姿なら目の保養に‥‥‥



「ぢゃありませんわっ! やめなさいですわ!! 何か取り返しのつかない事になってしまいそうですわ!!」



「駄目でありますか、せっかく練習をしたというのに‥‥‥」


 何故かしゅんとするベーダ。



 まさかもう始めちゃったのあれ!?

 まさかベーダもふんどし姿なのっ!?



 思わずベーダを見るあたし。

 するとベーダは途端に頬を染めてこちらをもじもじと見る。


「あの、主様お見になりますか?」


「いやいやいや、見ませんわ! 見たら取り返しのつかない事になりそうですわ!!」



 ぜいぜい。



 思わず力説して肩で息をしてしまうあたし。

 せっかくティアナを見つけて成人するまで我慢しているのに変なもの見て変な気持ちになっちゃったらやばいわよ。



 ベーダは残念そうにしているがここは譲れない所だ。

 あたしは気を取り直してデルザに状況を聞く。



「他には問題は無いのですの?」


「はい、すべて順調に事は運んでおります。ただ、今後各国への支店を更に充実させるにはゲートの管理を更に充実させる必要があります。できれば主様にもご助力願えないかと」


 確かに新たなゲートをイオマがいなくなった今作るのは難しいだろう。

 あたしは頷きそれを了承する。



「ありがとうございます。これでシーナ商会は更なる飛躍が出来ます。すべては主様の為に!」



 いや、意気込みはありがたいんだけどなんか違うような気がするのはあたしだけだろうか?



 あたしはきれいなリゾートの様な街並みとこの海岸の砂浜を見ながらそこにちらちらと見えるふんどし姿のおっちゃんたちを見てため息をつく。




 本当に大丈夫かこの国?






 ベイベイの街は今日も平和だったのだ。


 

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[一言] >しかし結局この街から歓楽街は無くす事が出来ませんでしたわね? ここは国ぐるみでアレだったから神経質になっているんだろうけど……ねぇ? むしろキッチリ管理して、わざと不穏分子が集まりやす…
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