ミハイン王国編その一
エルハイミのその後を覗き見る蛇足編です。
ティアナの転生者を見つけた後の日常を垣間見てみましょう!
コクたちと行動を共にしている分かれたエルハイミ、通称「エスハイミ」たちですw
シーナ商会でただいま三人のお仕置中だったらしいですね?
さてどうなった事やら。
ミハイン王国編その一
サティアは分かれたあたしに任せエスハイミ事あたしはミハイン王国の屋敷に来ていた。
「お母様、こいつらのお仕置が終わりました」
コクはそう言って四つん這いになる三人を引き連れて来た。
「はうぅうううぅ~主様ぁ~ごめんなさぁ~いぃ♡」
「もうしませんからもっとぉ~。主様ぁ、コク様に私たちをもっと叱るようお願いしてくださぁ~いぃん♡」
「もう、我慢できませぇ~ん、もっと、もっとあの鞭が欲しいでぇ~すぅ~♡」
いや、ちょっとマテ!
確かにお仕置が必要だとは言ったけど、まさか本当に「至高の拷問」しちゃうだなんて!
尻尾を振りながらとろぉ~んとした上気したような赤い顔でよだれを垂らしている。
「コ、コク、大丈夫なのですのこの子たち?」
「しっかりとお母様のお慈悲を刻み付けさせました。ベルトバッツも今回はだいぶやりでが有ったと喜んでおりました!」
いやそうじゃないでしょうにっ!
あたしは三人の様子を見ながらため息をつく。
「それで、この子たちはこれからの事についてどうするかイオマからは話を聞いていたのですの?」
「それが、お母様を神と崇め全てはお母様の為に尽くせと命令されていたようです。それに関しましては私も同意見ですが」
コクはそう言って資料を手渡してきた。
それには今後のシーナ商会の予定が書きこまれていた。
のだが‥‥‥
「なんなのですのこの全世界にシーナ商会の商店、百貨店を展開する? エルハイミ教をさらに強固なものとして他の女神教を更に取り込み一神教に変える? このミハイン王国の王家を完全にシーナ商会の支配下にする!? これって本気ですの!?」
いや、確かにそこまでやっちゃえば世界を安定させる為には良いのだろうけど、これじゃあ一国家どころの力じゃすまなくなる。
あたしは頬に一筋の汗を流しながらそれを読む。
そしてその思想が千年王国を基準としている事に気付く。
「良く出来ていると思います。お母様の手を煩わせずにこの者たちが主導して行けば人の世は千年は安定するでしょう」
コクはあたしにそう言ってくる。
確かにこの計画は凄いと思う。
でも問題は必ずあたしが要所要所で関わりあいを持つことが前提となっている。
「デルザ、アルフェ、ベーダ。あなたたちはこれをするつもりですの?」
あたしは四つん這いになっている三人に聞く。
すると三人とも跪きあたしに頭を下げながら答える。
「勿論でございます。主様の為、今は亡きイオマ様の代わりに必ずや我々でやり遂げて見せましょう!」
「主様は我らの希望、この命は主様の為ならば!」
「イオマ様の分もしっかりとお仕えいたします!!」
先ほどの雌犬‥‥‥ もとい、お仕置後の「見せられないよ!」の姿から一変、まるで忠誠を誓う騎士かのように三人はあたしに頭を下げている。
イオマに代わってか‥‥‥
あたしはそっと自分の胸に手を当てる。
イオマの魂とショーゴさんの魂は今あたしの中にある。
そうしとかないと霧散してしまって世界の魔力の元、魔素に還元されてしまうからだ。
本当はイオマとも仲良くティナの町辺りで静かに暮らしたかった。
今すぐにでもイオマを復活させたいけどそれをしてしまってはイオマでは無く「魔王」が復活してしまう。
だから輪廻転生システムでもう一度人生を始めてもらい過去を思い出してもらうのが一番良いのだ。
ティアナ同様転生したイオマに会えるのは何時になるだろう?
その為にもご先祖様を見つけ出して冥界の女神セミリア様の所へ行ける方法を聞き出さなければならない。
伝説では空にある赤と青の月が重なる時に冥界への門が開くと言われているけど、そんな単純な物では無いはずだ。
現にあたしの力を使ってもそれらしきモノが見つかっていない。
だからご先祖様を探し出すしか無いのだけど‥‥‥
「どこをほっつき歩いているのでしょうかしらですわ。いっそアガシタ様を叩き起こしライム様と一緒に探しに行った方が良いのでしょうかしらですわ」
「お母様?」
あたしのつぶやきにコクが覗き込んでくる。
「エルハイミ母さん! お腹減ったわ! お肉っ!!」
屋敷の敷地内に作った訓練場で遊んでいたセキが戻って来た。
あの訓練場はベーダたち隠密行動をする部隊の訓練場でベルトバッツさん監修のローグの民の訓練と同じようになっている。
アスレチックのような感じだけど普通の人がやったらまず死ぬ。
比喩ではなく本当に死んでしまうようなものばかりなのだ。
それがセキにとってはちょうどいい遊び場となっている。
と、あたしはクロエさんがいない事に気付く。
「セキ、クロエさんは何処ですの?」
「主様、クロエでしたらセキと一緒に訓練場に行きましたが?」
クロさんがお茶を持ってやって来てくれた。
早速デルザたちもお茶の準備を手伝うけどもの凄く「頑張ってます!」をコクにアピールして無いはずの尻尾を振っている。
そう雌犬‥‥‥じゃ無かった、見せられない表情で。
「くうぅ、セキもう一度勝負でいやがります!! あの程度のモノ私が本気を出せばセキより早く終えられますでいやがります!!」
見ればメイド服がぼろぼろになって太ももどころか黒い下着までちらりちらりと見えるほどになっているクロエさんが扉の所ではぁはぁ言って立っていた。
「え~? 今からお茶なんですけどぉ~、クロエと違って一回も引っかかっていないから余裕なんですけどぉ~」
「くっ! セキっ! 早く来いでいやがります!!」
ニヤリと笑うセキ。
「これクロエ、落ち着きなさい。今はお母様とお茶の時間です。しばし待ちなさい」
セキの挑発に額におこマーク張り付けるクロエさんをコクがたしなめる。
「ぐっ、し、しかし黒龍様! 我ら黒龍が赤竜如きに遅れをとるなど!!」
「最近なまっているのではないですかクロエ? とにかくお茶が先です。ささ、お母様お茶を楽しみましょう」
良いのかなぁ~?
地団太踏むクロエさんを横目にあたしたちはお茶会を始める。
そんなクロエさんにデルザはお茶を持って行く。
「あのぉ~クロエ様、お茶が入りましたが~?」
「ふんっでいやがりますっ!」
クロエさんはお茶を受け取り一気に飲む。
ばっ!
ごくごくごく‥‥‥
ギロッ!
「へっ?」
「デルザ! 何度言ったら分かるでいやがりますか! 紅茶は必ずお湯を入れてから茶葉を入れるでいやがります! そうしないと差し入れたお湯の衝撃で雑味まで出てしまいますでいやがります!! そこっ! ベーダもこそこそしながらおかわりを入れるで無いでいやがります!! お前ら全員叩き直してやるでいやがります!!」
完全に八つ当たりではあるが事、メイド家業に関しては妥協を許さないクロエさん。
あたしはデルザたちの悲鳴を聞きながらお茶を飲むのだった。
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