ティナの町編その二
エルハイミのその後を覗き見る蛇足編です。
ティアナの転生者を見つけた後の日常を垣間見てみましょう!
ティナの町編その二
ティナの町に戻ってサティアと住み始めて早ひと月が経った。
ティナの町の現領主はエスティマ様。
何とホリゾン公国のシャリナ姫と一緒になっていた。
ゾナーの妹でもある彼女は政略結婚であるのは当然だが会ってみて驚いた。
なかなか素晴らしいものをお持ちだった。
ホリゾン出身では少ない大きな胸の持ち主、あのジェリーンにも負けないほど素晴らしい。
そして表面には出さないがエスティマ様好みのなかなかきつい性格をしているらしい。
一応親戚になるのであたしもちゃんと挨拶をしに行ったのだけど‥‥‥
「エ、エルハイミ様から直々ご挨拶いただけるとは恐れ多いですわ!」
とか言われながらガクガクブルブルされた。
一体どう言う風にあたしの話が伝わっているのよ?
他にもルブクさんがやっとお嫁さんもらったとか、冒険者たちの「風の剣」もとうとう解散して隠居生活に入るとか。
ほとんどのメンバーはこのティナの町に残って職についたり、エスティマ様直属の仕事を受ける特殊部隊に入ったりとしている。
あたしはティナの町を眺められるこのベランダにサティアと一緒にいる。
「お茶が入りました、サティア様」
「エルハイミさんもどうぞ」
セレとミアムがお茶を持って来てくれた。
「わーい、お茶だ! あ、お菓子もある!!」
サティアはよろこびながら マカロンをつまんでポンと口に放り込む。
「こら、サティア、お行儀が悪いですわ。って、昔と変わりませんわね」
思わずにっこりとその様子を見てしまうあたし。
昔のティアナもジーナに見つからない時はこうしてマカロンをつまんで口に放り込んでいたっけ?
「良いじゃない、ジーナに見つからなければ‥‥‥ あれ? ジーナって誰だっけ?」
「サティア!」
今確かにサティアの口から「ジーナ」という名前が出てきた。
まだジーナについて教えていなかったのに。
「せ、正妻、もしかして!?」
「エルハイミさん!」
「サ、サティア、そのジーナという人について何か思い出しましたの?」
するとサティアはきょとんとして首をかしげる。
「うーん、聞いた事があるよな無いような感じ~」
あたしとセレ、ミアムはため息をつく。
記憶が戻ってきている傾向があるがまだまだわずかだ。
しかしここで無理をすると今のサティアの人格と過去の記憶がぶつかって受け入れられないと人格崩壊を起こしてしまう。
だから転生者の記憶が戻るのは無理をさせてはいけない。
「まあ、焦らずですわ」
「そうね、残念だけどね。でもサティア様のお世話をするのも悪くないわ」
「すぐにエルハイミさんの毒牙にかかる事も無いから今はこのままの方が良いですね」
なっ!
何それっ!
あたしはちゃんとサティアが成人してくれるまで我慢するって約束したじゃない!
今はこうしてサティアの成長に対して色々と教育にも手を貸しているけど、やましい事なんて‥‥‥
―― 数日前の回想 ――
「エルハイミお姉ちゃん、一緒にお風呂入ろう!」
「えっ!? 良いのですの!? も、勿論ですわ! き、奇麗に洗ってあげますわ!!」
屈託のない笑顔で言うサティア。
あたしは勿論やましい事なんてこれっぽっちも考えてないわよ?
ちょっと体の隅々まで傷とか痣が残ってないか洗いながら確認するくらいで!
「せ~い~さ~ぁ~ぃいぃぃぃ~」
「エルハイミさん! だめです!! サティア様、私たちが湯浴みのお手伝いをします。エルハイミさんはダメです!」
そう言ってサティアは連れられて行ってしまったのだった‥‥‥
―― 回想終わり ――
う、うん。
無かったわよぉ~。
全くこれっぽっちも!
あたしは残りのお茶をカタカタ音を鳴らせながら飲み干した。
はぁ~、早くサティア記憶もどして成長してくれないかなぁ~。
ため息をつくあたしだった。
* * *
午後は街の方に顔を出す。
既にシェルとコクたちは別れたあたしと旅立って行ったのでこの町にはいない。
あたしは冒険者ギルドや商業ギルド、その他絹の生産工場の様子を見に行く。
この町にいる限りぼぉ~っとしているわけにはいかない。
産業を発展させ、食料の確保も更に充実させ、そして富を生みださなければいけない。
戦争も終わり、ジュメルの暗躍もほぼなくなった。
だから今度はこの町を発展させなきゃいけない。
「後はジルの村ですわね? あそこの鉱石はまだまだ色々出てきますのものね。サティアも一緒に行きますかしら?」
「うん、いく~っ!」
「あ、でもエルハイミ、約束の餅入りミルクティー買ってよぉ~!!」
サティアやマリア、そしてセレやミアムを引き連れてあたしは町を回る。
ここでゆっくりだけどサティアに記憶を呼び戻してもらってそして成長してもらいたい。
あたしはにっこりと笑って餅入りのミルクティーのお店に向かうのだった。
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