ご先祖様を探して編その二
エルハイミのその後を覗き見る蛇足編です。
ティアナの転生者を見つけた後の日常を垣間見てみましょう!
ご先祖様を探して編その二
あたしとシェルは転移をして精霊都市ユグリアに来ていた。
「なんでユグリアに来るのよ? 直接メル様の所へ行けばいいじゃない?」
「いきなり行っては流石に失礼ですわ。ちゃんとファイナス市長に挨拶をしてそして正式に結界の門から行かなければエルフの村が大騒ぎになりますわよ?」
実際には今のあたしの能力ならすんなりと入れるけど、騒ぎになるのは良くない。
それにエルフの村でシェルを押さえる為にもファイナス市長に協力してもらいたいというのもある。
「とにかくファイナス市長に会いに行きますわよ」
「うぅぅ~分かったわよぉ~」
渋々と応えるシェルを引き連れてあたしたちは「緑樹の塔」へと向かうのだった。
* * *
「エルハイミさん、ようこそユグリアへ」
応接間で待っているとファイナス市長がやって来た。
扉をノックして入って来るといつもの笑顔で挨拶をしてくれる。
あたしも正式な挨拶で応える。
「お忙しい中突然の訪問にお時間いただきありがとうございますですわ。お変わりないようですわね?」
「私たちエルフにしてみればつい先日エルハイミさんに会ったばかりにも感じます。さて、それでエルハイミさんが直々に来るという事は何か有ったのですか?」
ファイナス市長は真顔に戻りあたしに一番聞きたい事を単刀直入に聞いてくる。
まあ、あたしやシェルが来るといつも何か起こるかその前兆が多いから身構えるのも仕方無いけどね。
「今日お邪魔しましたのはエルフの村に入る許可と、メル長老に面会を希望するという事ですわ。今はメル長老も村に戻ったと聞きますわ」
「メル長老に? 一体どんな用件で?」
それでもファイナス市長は少し眉と眉の間にしわを作りあたしに聞いてくる。
あたしはにっこりと笑って本当のことを言う。
「メル長老にうちのご先祖様が今どこにいるか教えてもらおうと思いましてですわ」
「ご先祖様と言うと、魔法王ガーベルですか? 彼がいなくなって久しいですがメル様が居場所を知っているかどうかはわかりませんよ?」
「ええ、ですが今の所、居場所を知っていそうな人物はメル長老くらいしか思い当たらなかったものでですわ。それと目的は冥界の女神セミリア様に会いに行く事ですわ」
あたしが本当のことを言うとファイナス市長は目を見開き少し驚く。
そしてシェルを見ながら聞いてくる。
「冥界に行くというつもりですか…… 確かに冥界には魔法王ガーベル以外行った事がないと聞き及んでいます。しかし何をしに?」
「すべてはティアナの為ですわ。そして私に関わる人たちの為でもありますわ」
あたしはそう言ってファイナス市長にあたしの考えを話すのだった。
* * *
「なるほど、理解しました。確かにその都度この世界の何処かに転生するその人物を探すというのは苦労しますからね」
ファイナス市長はお茶を飲んでからそう言う。
そしてあのペンダントを出して握りしめる。
メリッサさんと言う転生者は今エルフの村にマローネちゃんとして元気にしている。
ファイナス市長は彼女が転生するのを千三百年もの間待っていた。
だからあたしの考えには共感をしてくれている様だった。
「千三百年……いくらエルフでもその時の流れは感じるものです。でもメリッサにもう一度会えるならたとえ一万年と二千年経っても待てるでしょう……」
そう言ってペンダントをそっとしまってあたしを見る。
「分かりました、メル長老に会わせましょう。しかし今はもう扉が閉まる時刻、先にメル様には連絡をして明日一番に会いに行きましょう」
「よろしくお願いしますわ、ファイナス市長」
あたしはにっこりと笑ってそう言う。
と、扉がノックされてイチロウさんが入って来る。
「おう、エルハイミの嬢ちゃん久しぶり! 元気にしていたかい?」
「こんにちわですわ、イチロウさん。お陰様で元気にやっていますわ」
「ティアナの嬢ちゃんの転生者も見つかったって聞いたが、良いのかい? こんな所をほっつき歩いていて??」
「ああ、それはですわね……」
あたしは自分の分体を作ってイチロウさんに見せる。
ほとんど人形と同じだけど完全に肉体だけで意識はない。
「な、なんだぁ? エルハイミの嬢ちゃんが二人に!?」
「こんな感じで私は分かれる事が出来るのですわ。今はティナの町に私の分かれたエルハイミがいますわ。そこでティアナの転生者サティアを育てていますの」
一緒に来ていたアレッタさんも驚いている。
勿論ファイナス市長も知ってはいるけど目の前で分かれる所は初めて見るのでやはり驚いている。
「ここまで完全に分かれられるとは…… 流石に女神を名乗るエルハイミさんですね」
「でも最大で三人にまでしか分かれる事が出来なくて、この私は肉体だけで意思がありませんわ」
「えっ? そうなのエルハイミっ!? じゃあ、そのエルハイミをあたしにちょうだい! もう今晩からあんな事やこんな事するから!!」
今まで静かだったシェルが途端に鼻息荒く分離したあたしに抱き着く。
そしてキスしまくるも人形のようにしているあたしは無反応のまま。
「ちょっ、シェルやめなさいですわ! 感覚共有していなくてもそれも私の肉体ですわ! わわっ! 服を脱がさないでですわぁっ!!!!」
辛抱たまらんシェルは獣の如くあたしの服をはぎ取って行く。
慌てて見えちゃいそうになる前にあたしは分体を引き戻し元のあたし一人にする。
「あーっ! もう少しだったのにぃ! エルハイミのいけずぅっ!」
「な、何を言っているのですの!? 人様の前で私の肌をさらすような事させるんじゃありませんわ!!」
「いいじゃない、夫婦なんだから!」
「シェ、シェルぅっ!!」
「相変わらず仲いいわね? シェル、エルハイミさんとどんなプレイしているか教えなさいよ?」
「アレッタ、同性の話にも興味あんの?」
「ほら、そこはうちの旦那に興奮してもらう小話にね」
アレッタさんとシェルがとんでもない事言っている!?
思わずイチロウさんを見ると赤い顔して目線を外す!?
何それ、イチロウさんってそんな趣味あったのぉ!?
「ふう、相変わらず仲がいいというのは良いとして、ここでは遠慮願いますかエルハイミさん?」
「ファイナス市長まで!? しませんわよ、そんな事ぉ!」
「ま、そのなんだ、精力つく食いモン作ってやるからな、エルハイミの嬢ちゃんとシェルの嬢ちゃん……」
「お願いね! 出来ればエルハイミが興奮するのもあれば言う事無いわ!」
「お盛んねぇ、うちの旦那もこのくらい頑張ってもらいたいのに……」
おいこらイチロウさん、メリッサさん、そしてファイナス市長!
駄目だ、こいつらもそっちの話ばかり、やっぱりエルフってエロフなんだぁ!!
あたしの大きなため息が吐き出されるのだった。
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