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エルハイミ‐蛇足編‐  作者: さいとう みさき
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ティナの町編その一

エルハイミのその後を覗き見る蛇足編です。

ティアナの転生者を見つけた後の日常を垣間見てみましょう!


取りあえずあちこち報告まわりです。

 ティナの町編その一



 ティアナの転生者であるサティアを見つけ出したあたしはガルザイルのアコード陛下に謁見していた。



「陛下におかれましてはご健勝のこととお慶び申し上げますわ」


「面を上げよ、エルハイミ殿」



 謁見の間であたしは跪き頭を下げていた。

 陛下に言われ顔をあげる。



「して、エルハイミ殿、ティアナの転生者を見つけ出したと聞くが?」


「はい、サティアこちらに」


 あたしの後ろに訳も分からずひかえていた中からサティアがひょこっと立ち上がりあたしの横まで来る。

 そして不思議そうにアコード陛下を見る。


「ほう、面影はないがその髪の色、瞳の色、まさしくティアナのモノと同じだな」


「はい、間違いなくティアナの転生者ですわ」


 するとサティアは不機嫌に言い放つ。



「あたしそんな名前じゃないもん! あたしはサティアだもん!!」



 元気にそう言い放つその様子に陛下に対して失礼ではあるモノの周りも含め穏やかな笑い声がする。


「そうかそうか、それは済まんかったな、そなたはサティアと申すか? 儂はこの国の王様でアコードと言う」


「アコード‥‥‥ なんでだろう? エルハイミお姉ちゃんと同じで聞いた事があるような‥‥‥」


 そう言うサティアに陛下はあたしを見る。

 そしてあたしは頷き話し始める。



「恐れながら陛下、サティアは未だ記憶を取り戻しておりませんわ。ただ、徐々ではありますが記憶を取り戻しそうな傾向は有りますわ」


「ふむ、そうか。では記憶を取り戻すまで待つとするかの?」


 あたしは「それが良いでしょう」とだけ言ってまた頭を下げる。

 そしてこの後はティナの町に移りしばらくはそこで暮らしたい旨を言う。



「よかろう、しかしエルハイミ殿にはアガシタ様の代行の役目があるのでは?」


「それにつきましてはもう一人の私が行っておりますわ」


 そう言ってその場であたしは二人に分かれて片方を女神のエルハイミまで成長した姿で見せる。

 勿論その場で驚きの声が上がるが、名実ともに女神とされるあたしのやる事に周りも慣れ始めていた。



「ふむ、流石であるな。ではエルハイミ殿今後もティアナを、いや、サティアを頼むぞ」


「はい、お任せください陛下」



 あたしたちはまた深々と頭を下げるのだった。



 * * * * *



「しかし、記憶とはすぐには戻らんものなのだな?」


「ええ、でもそれはその人によって違うと思いますわ」



 あたしたちは陛下の書斎にいる。

 そして陛下はセキとじゃれているサティアを見て嬉しそうに目を細める。


「セキも大きくなった。昔のティアナの面影があるな。しかしそのティアナは今は三歳の子供か。ふふっ、あの頃のティアナはいつもアテンザにくっついていてやんちゃであったな‥‥‥」


 昔を思い出したのだろう、そう言って陛下は深く椅子に座り直す。


「ところでエルハイミ、この後はどうするつもりだ?」


「はいそれなのですが‥‥‥」



 あたしは色々と考えていた。

 サティアをあたし色に育ててゆくゆくはあたしのモノにするのは確定だけど、世の中を放って置く訳にも行かない。



 勢力はかなり弱まってはいるものの秘密結社ジュメルだって完全消滅した訳では無い。

 イオマがいなくなった分デルザたちの手綱もしっかりと押さえておかないとなんかやばそうだし、実家のユーベルトはますますエルハイミ教の聖地になりつつある。



 安穏とティアナといちゃいちゃスローライフとはいかないだろう。



「私は今最大三人に分かれることが出来ますわ。そしてうち一人はティナの町でサティアを育てたいと思いますわ。他の二人は世界を回るのと冥界の女神セミリア様に会いに行こうと思いますの」


「冥界の女神様にか?」


 陛下はそう言って首をかしげる。



「イオマ、いえ、『魔王』の魂や私の従者であったショーゴさんの魂転生をお願いしたいのと、その時に特別な魂の持ち主を一所に可能な限り集められるようにしてほしいのですわ」



 あたしは今後の事を考え、勿論ティアナの魂の事も考え容易に見つかる風にしたかった。

 ただ、会った事もない冥界の女神セミリア様があたしに会い、そして願いを聞いてくれるかどうかは分からないけどその都度世界中をイオマやティアナの転生者を探すのは一苦労だ。

 もしまた「魔王」あたりが現れたらその当時の人物が大人しくしてくれる保証はない。


 なので出来れば一元管理できれば一番いいのだ。



「ふむ、となればまた忙しくなるな‥‥‥ 出来ればたまにはサティアやセキに会わせてもらいたいのだがな」


「陛下、そのご心配はありませんわ。私の実家同様こちらにも定期的に顔を出しにまいりますわ」



 あたしがそう言うとアコード陛下はにこりと笑い頷くのだった。




 * * * * *



「「ティアナ様ぁっ!!」」



「あたしそんな名前じゃないもん! サティアだもん!!」



 ここティナの町に戻って来たあたしはエスティマ様に挨拶をしてからセレとミアムにティアナの転生者であるサティアを引き合わせた。


 まあ予想はしていたが二人の喜びようはそれはそれはすごいものだった。

 そしてサティアの前に二人して膝まづき誓いを立てる。



「サティア様、よくぞここへお戻りになられました。私共はサティア様に忠誠を誓い誠心誠意お仕えいたします」


「サティア様、私たちをどうぞサティア様のお傍に置いてください」



 二人のその行動にサティアは目をぱちくりしているけどあたしに振り向く。


「エルハイミお姉ちゃん、これって何?」


「この二人がサティアのお世話をしてくれるのですわ。そうですわね、サティアのお母さんみたいなものですわ」


 それを聞いたセレとミアムは驚きあたしを見る。



「せ、正妻。いいの? 私たちがティアナ‥‥‥いや、サティア様の母親役何て?」


「エルハイミさん‥‥‥」



 あたしはニヤリと笑って二人に言う。


「ええ、勿論ですわ。その代わり保護者としてふるまってもらいますわよ? サティアに手を出してはいけませんわよ!?」


 言われた二人は、はたと気付いたようだが握った拳をふるふると震わせてから肩の力を抜いてため息を吐く。



「分かっているわよ、私たちの残りの人生」


「サティア様に捧げ立派にお育ていたします。でもエルハイミさん、いくら正妻でもエルハイミさんもサティア様が成人なされるまでは手を出すのは許しませんよ?」



 がっ!?

 し、しまったぁっ!



 言われたあたしは思わず背景を黒くして稲妻を落とす。


 す、少しくらいはサティアといちゃいちゃしても良いかなぁ~なんて思っていたけど、成人までお預けとはっ!?

 しかし言い出した手前ここで断る事も出来ない。



「あ、あの、キス位良いですわよね?」


「大人のキスは厳禁です」


「そうね、唇はダメね!」


 ミアムとセレにそう言われ石化するあたし。



「そ、そんなぁ~ですわぁ~」



 がっくりと肩を落とすあたしの側にサティアがやって来た。



「ねぇねぇ、エルハイミお姉ちゃんチューしたいの?」


 屈託ないその笑顔でそう言ってくる。



 くっ! 

 その笑顔が今はまぶしすぎるわ!!



 あたしはよろよろとしゃがみサティアに言う。


「そうですわね、私はサティアとチューしたいですが、それはもっとサティアが大きくなってからですわね」



「あたし良いよ! ちゅっ!!」



 そう言ってサティアはあたしに抱き着いてきて唇にチューをする。



「なっ!?」


「エ、エルハイミさんっ!!」



 突然の事に驚くあたし、勿論セレやミアムも大騒ぎだ。


「えへへへへ、エルハイミお姉ちゃんとチューしちゃった! 死んだお母さんが良くしてくれたんだよ? 元気出た?」



 あたしの魂が感激に揺れた。


 小さなサティアの唇は柔らかく温かかった。

 それは本当に一瞬だったけどティアナがいなくなってからずっと感じられなかった温もり。



 ぶわっ!




「うわっ、正妻!?」


「エルハイミさん!?」


 あたしは思わず大粒の涙をこぼす。



「エルハイミお姉ちゃんどうしたの!? 何処か痛いの? お腹痛いの??」



 慌てるセレやミアム、そしてサティア。


 しゃがんだままあたしはぼろぼろと涙を流す。

 ティアナだ。

 そう、ティアナなんだ。

 ずっと探し求めて欲しかったティアナが今あたしにキスしてくれた。


 あたしはその瞬間ティアナが死んでからの今までの事が走馬灯のように脳裏を流れる。



 辛かった、悲しかった、自暴自棄になった時もあった。

 そしてティアナを見つける為に女神以上の存在になる事もいともわなかった。


 そのティアナが、サティアが自分からあたしにキスしてくれた。



 こんなに嬉しいことは無い!!





「サティあぁぁぁああぁぁぁっ!!!!」




 思わず感激してサティアに抱き着こうとした時だった。



 ひょいっ!



 すかっ!




「せ、正妻! ここまで! マテっ!」


「駄目ですよエルハイミさん、サティア様にこれ以上何かするのは教育上よろしくありません!」



 あ、あうっ!



 あたしは抱き着こうとして空振りした手をわなわなと震わす。




「ま、エルハイミ母さんには良い薬ね? 母さん、いや、サティアまだまだ子供なんだから変な事されちゃ困るわよ?」


「これセキ、お母様をまるで色欲の権化のように言うものではありません」


「しかし主様ならやりかねないでいやがります。今の黒龍様にもいろいろと手を出しやがってでいやがります!」


「ふむ、しばらくは静かになりそうで助かりますな」


「サティア~あっそぼうよぉ~!!」


 セキがあたしの隣までやって来て肩に手を置く。

 コクはそんな様子を見ながらため息をつき、その後ろでクロエさんとクロさんも何か言っている。

 マリアは元気にサティアの所まで飛んで行って遊ぼうを連発している。



「はぁ、全く。ね、ねえエルハイミ、そんなにチューしたいなら代わりにあたしにしても良いのよ?」


 シェルははぁはぁ言いながらあたしを覗き込む。


「何を言っているのです、このバカエルフは! お母様、するならこのコクにしてください!」


「あっ、コクずるい!」


 そう言ってコクとシェルはあたしに抱き着いてくる。

 そしてサティアも。



「あ~っ! みんなでずるい! あたしもエルハイミお姉ちゃんに抱っこするぅ~っ!」




 ここ北のティナの町にまたまた賑やかな声がこだまするのであった。 


 

 

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[一言] 現在はエンディングのスタッフロール中、またはそれが終わった後のCかDパートですな。
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