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giveAndTake(ギブアンドテイク)  作者: あねものまなぶ
17/18

神々と神父と聖女


「おう、門番さん。マルコリーが来たと伝えてくれや」

「承知しました。少々、お待ちください」

警備の者は、近くにいる者と話をしている。

どうやら、別の人間が確認を取るようだ。


暫くすると、先程の警備員が戻ってきた。


「お待たせいたしました。どうぞ、お進みください。広間でお待ちとのことです」

「ありがとよ。おう、行くぞ!」

ジェスター、チェルビー、ダニエリーに声をかけ、門の中に歩みを進める。


「はぇぇ、凄い広いっすね、ここの敷地。何と言うか、別世界感が凄いんですが」

ジェスター達の視界前面には、見渡す限りの草原。更に両端奥には、木々が所狭しと生い茂っている深い森がある。彼らが現在、進んでいる敷地の中央を通る道が目的地である神殿へと続いている。


「そりゃそうだ、この敷地だけで、都市部の1/4を占めているからな。かなりでっかいぞ」


「さっき、ジェスターも言ってましたけど、なんで此処は自然のまんま、と言うか、別世界感?があるんですか?明らかに都市部に合っていない雰囲気なんですが?まるで、」

「"世界から取り残された"ようだ、でしょ?」

「えぇ、今まで見てきた都市部には、文明と言うか人の技術で溢れていました。活気とか人混みとかに溢れてます。でも、ここは、そのなんて言っていいのか分からないけど、人の手が及んでいないという感じがするんです。それこそ、"世界から取り残させた"みたいな」

形容できない思考を言葉に表そうと、たどたどしく紡ぐ。


「分かるわ、その気持ち。ここだけが、他とは違うのよ、文字通りに。チェルちゃんは他の子よりも感受性が豊かなのかしらね?その感覚は大事にしておいてね?」

ダニエリーもチェルビー同様、上手く言い表せないモノを感じていた。


歩くこと数分。


遠目で見えていた神殿が目の前に姿を現す。

至近距離で目の当たりにする荘厳さに、いつもはお茶らけた態度をとっているジェスターも息をのむ。



正面にある木製の古めかしい扉が音を立て開く。


「お待ちしておりました。どうぞ此方へ」

白を基調とした神父らしき年老いた人物が、マルコリー達を神殿内へ促す。


神父の案内のままに、神殿内へ入る。


「これは、また凄いことで」

ジェスターの視界に飛び込んできたのは、壁沿いに並ぶ大きな石像達。

左右の壁に沿って、一定距離で配置された大人2人分ほどの高さがある像達に圧倒される。


「ダニエリーさん、この石像って誰なんですか?」

神殿内の厳かな雰囲気を感じ、声を潜めて質問するチェルビー。


「ごめんなさい。実は、私も詳しくは分かっていないのよね。確か、古い神様だったかしら? その神々を人間の姿に置き換えた像って言われてるけど正確な所は不明なのよね」

その言葉に反応する神父。


「流石、ダニエリー様。博識でらっしゃる」

「いえいえ、そんなこと御座いませんわ」


続いて、チェルビーに視線をやる。

「冒険者様。こちらの像は、古き時代に地上を守って下さった神々の姿を当時の人間が像にしたもので御座います。合計で10柱の神々の像が此処には御座います」


神父の言葉に感心しながら、周りの像に目をやる。

その時、チェルビーは何かに気づいたようだ。


「あのぅ、あそこにいる杖を持った神様って魔法を使ったんですか?」

チェルビーが指さすのは、杖を片手に持ち何か言葉を発している姿の男性像。


「っほっほっほ。中々に鋭いですな。その通りでございます。彼の神は、皆様がよくご存じの"魔法"の原型とされるモノを人間に授けて下さった神になります」

「"魔法"って神様がくれたんですね! 初めて知りました!」

自分の使う力が、神由来の力だと知り興奮する。


「ここに並ぶ神々は、いずれも我ら人間に"奇跡"を授けて下さったのです。分かりやすくお伝えすると、冒険者様、騎士様が使う"超常の力"がそれにあたります」

「チェルちゃん、ジェスちゃんも、冒険者として登録するときに"適正"を調査したでしょ? その適正として表されるモノが"神様がくれた力"とされているの」


「つまり俺の"エンチャント"っつー適正もこの中の神様がくれたという事か」

「ほう、貴方様は"エンチャント"の適性が出たと。それはまた珍しいですな」

「あれ? そうなんすか?」

神父はジェスターの方に顔を向け続ける。


「さようです。"エンチャント"というのは、この神々が授けたものでは御座いません」

「あれまぁ、そうなんすか」


「皆様が、適性を調査するときに使用する本が御座いますでしょう?」

「えぇ、ありましたねぇ、白紙のページが沢山ある本が」


「あの本は、元は神々の所有物であり、力の有無を見定めるために使用した本と伝えられております」

「マジですか!?」


「といっても、原本その物という訳ではなく、資格あるものが再現したに過ぎませんが。しかし、効力は原本と遜色ありません。そんな神々の所有物が、"神々が授けていない奇跡"を写したのです。きっとその力には何かがあるはずなのです」

「へぇ、"エンチャント"って変な能力なんすねぇ、因みに"エンチャント"以外でも似たような適正ってあるんすか?」


「えぇ、確認されているだけでも数種類あります」

「結構、あるんすね」

「えぇ、適正と言うのはその人物がその時点で最も進みやすい道を表します。なので、今後も"神々が授けていない道"を進む可能性が我々にはあると思うのです」

「成程、俺らは神様から独り立ちするときなんですかねぇ」

「っほっほっほ、面白い表現をなさりますね。そうですね、今の時代、信仰と言うのは薄れています。この先には、信仰という光がさらに薄れるでしょう。私共も、在り方を時代に合わせる必要があるのかもしれませんね」

神父の表情には寂しさが浮かんだ。


「っとおしゃべりが過ぎましたね。そろそろ、到着します」

石像が鎮座する広間を抜けた先には、更に扉が。


「では、私は失礼いたします」

そういって、扉の前に4人を残し立ち去る神父。


マルコリーが扉を4回ノックする

「冒険者マルコリー到着しました」

門前での危惧が杞憂に終わり安堵するダニエリー。


その時、扉が独りでに開いた。


「行くぞ」

状況が把握しきれないジェスター、チェルビーはオドオドしながらマルコリーに続く。


「よくぞいらして下さりました」

部屋の中央で祈りを捧げていた女性が此方に向き直る。


「あら、お2人は初めましてですね? 私が当代の"聖女"を務めておりますエイリシアです。気軽にエイリーとお呼び下さい」

気さくに話す彼女に及び腰のチェルビー。


「いえいえいえいえいえ、そんな聖女様に対してそんな馴れ馴れしく。あっ!! 私はマルコリーさんの後輩になります、チェルビーと申します。どうぞよろしくお願い致します」

地面に座り込み、頭を下げる。


「っ! そんな! 頭をお上げください」

「いやいや、聖女様の前で、そんな無礼を働くことなど私にはとてもとても」

その時、恐縮するチェルビーの視界に、見知った足が映りこむ。

その足は、聖女の方向に向かっているようだ。


「おぉ、思ったより話しやすくて助かったわ。俺はジェスターって言うんだ。よろしくなエイリー」

「はい、ジェスターさん。よろしくお願い致します」

聖女との距離をいきなり詰めたジェスター。

それには頭を垂れている彼女が堪らず叫ぶ。


「ちょっと、ジェスター!! アンタ無礼にも程があるでしょ!! 聖女様に対してその言葉遣いは失礼でしょ!!」

ジェスターの頭を掴み、そのまま地面まで持っていく。

倒れ伏すジェスター、頭を掴んだまま先程の姿勢に戻るチェルビー。


「ほんとっ! すみませんっ。こいつには後でしっかりと言い聞かせますので、何卒ご容赦のほどをお願いしたく存じます。アンタもっ! ほら謝るの!!」

ジェスターの頭を地面に叩きつける。


「うっがぁっ。ほ、ほんとうに、もうしわけ、ございません」

何の為に流しているのか分からない涙を流しながら、息も絶え絶えの状態で謝罪する。


それには、聖女もたじろく。

「あのぉ、私に対して、仰々しく接して頂かなくてもいいので。寧ろ、ジェスターさんのようにフレンドリーに接して頂けると嬉しいのですがぁ」

おずおずとチェルビーに言う。


それでも謝り倒すチェルビー。

どうしたら良いのか分からない聖女にマルコリーが助け舟を出す。


「おい、チェルビー。やめてやれ。本当に、ジェスターが死ぬから、マジで」

何度も頭を叩きつけられたジェスターは既に虫の息となっていた。


「エイリーは、"聖女"ではあるが堅苦しいのが苦手なんだよ。なぁ?」

「はい! 皆様にそのように接して頂けるのは光栄なのですが、私自身は、その、畏まったことは、苦手でして」

照れたようにはにかむ。


「だからよ、何時ものお前さんで良いと思うぜ」

「はい。何時ものチェルビーさんでお願いします!」

その言葉に、おずおずと腰を上げる。


大きく深呼吸


「冒険者、チェルビーです。改めて宜しくお願いします!」

「はい、チェルビーさん。よろしくお願い致します」

握手を交わす。


「ダニエリー、ジェスターを助けてやってくれ。そろそろ、逝っちまうぞ」

「あら!? 本当に逝きそうねぇ」

倒れ伏すジェスターに駆け寄り、右手を翳す。


淡い緑色の光がジェスターを包み込むと、見る見るうちに傷が治っていく。


「ってんめぇ、チェルビー! 殺す気か!」

すぐさま抗議をする。


「ジェスちゃん、元気ねぇ」

治療したダニエリーも余りの速さに驚く。


「っぐぅ、ご、ごめん」

「あぁ、御免で済む訳ないだろぉぉ。後で、腹いっっぱい奢れ。酒も肉も何もかもだぁ!! 分かったかぁ」

鼻先が触れ合うような距離でガンを飛ばす。


「分かったわよ。ゴメンって。好きなだけ御馳走するから、ね?」

「分かればよろしい。今晩が楽しみだ」

機嫌を直したジェスターが、改めて挨拶をする。


「改めて、ジェスターだ。呼び方はエイリーっで本当に良いんだよな?」

「はい、勿論です」

「うし、エイリー、よろしくな」

「はい」

握手を交わす。


「んじゃぁ、顔合わせも済んだし、本題に入ってもいいか?」


マルコリーが話し始めた。

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