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giveAndTake(ギブアンドテイク)  作者: あねものまなぶ
16/18

彼等と彼女等と神殿前

マルコリーに導かれるまま、ジェスター、チェルビー、ダニエリーは"ある場所"に向かっている。


「なぁ、チェルビー」

「何よ?」


「俺は、なるべく楽して金を稼いで、一日中を寝て過ごしたい願望を持ってるじゃん?」

「まぁ、いっつも口に出してるしね。それがどうしたのよ?」


「段々と、俺の理想の生活から遠ざかっている気がするんだよなぁ」

「確かに。最近のアンタは結構、働いているわね」

2人は最近の出来事を思い浮かべる。


「で、俺が忙しい原因が分かったんだよ」

「じゃぁ、その原因って何よ?教えなさいよ」

勿体ぶるジェスター。

その態度にヤキモキする。


すると、ジェスターが前方を指さした。

その方向には、歌を口ずさみながら陽気にあるく、禿でマッチョな男がいた。


「マルコリーさんが持ってきた話が原因だと思うんだ。変な大会も今回の件もそうだろ?」

「まぁ、そう言えばそうかも。マルコリーさんが発端で始まっている気がする」


「だろ? "聖女様に会える"っつぅから勢いで承諾しちまったが、よくよく考えたらやばい案件に違いねぇよなぁ」

「そうよねぇ。聖女様に会えると言っても、何されるか分からないものね。最悪は、神に捧げる生贄とか?」

見る見るうちに、最悪の未来を思い描きげんなりする2人。


「一度、承諾しちまったかなぁ、引き返すことは出来ねぇし」

「私達の冒険はここで終わったかしらねぇ、最後はイケメンの腕の中で逝きたいわ」

「俺だって、綺麗なおねぇちゃんとイチャコラしたかったわ。せめて、聖女様の腕の中で安らかに行きてぇわ。それ位の我儘は許してくれっかねぇ」

出るのは溜息と未練の言葉。

陽気に歩くマルコリーとは対照的な雰囲気の2人。


「っふふふ。大丈夫よ2人とも。生贄なんかにされないわよ」

2人の様子が面白かったのか、微笑むダニエリー。


「ホントすか?」

「私達は、神の供物に成らないんですか?」

逃れられない死を覚悟した目に生気が宿っていく。


「大丈夫よ。今回もきちんとした依頼よ。クライアントにも後ろ暗い事はないから、ね?」

ダニエリーの言葉で何とか持ち直したようだ。


「それにしても、どうして、生贄になるって思ったの?」


「あぁ、それなんすが、ねぇ」

「私達、お金に眼が眩んで、広場で騒いだじゃないですか」


「確かに、あのときの2人の眼にはお金しか映ってなかったわねぇ」

苦笑いを浮かべるダニエリー。


「更に、あのハンナ様? と騎士の人が怒っていましたし」

「騎士様を怒らせ、その直後に、聖女様に会えるとなると、"ゴミの排除の為に生贄"にされるのかと思ったんすよ」

彼らなりに騒いだことへの後悔があったようだ。


「成程ね。2人には聖女様からはお咎めはないはずよ。安心して」

笑顔を浮かべ2人を安心させる。


次の瞬間。

「でも、"パレードを観ようと集まった皆さんを騒がせた"ことは事実だから。この件はしっかり反省するように。まぁ、マルコリーと私も雰囲気に飲まれちゃったから、一緒に反省しましょう?」

ダニエリーも自分が止められなかったため、申し訳なさそうにしている。


「おい、お前ら!そろそろ見えてくるぞ!」

先頭を行くマルコリーが、後ろを振り返りながら指をさす。


その方向には、大きな門が見えてきた


市民たちがすむ家々に比べ、お金が掛かっている街並み。所謂、高級住宅街を抜けた先には、何者の侵入をも阻むような鉄製の大きな門が鎮座している。


「おいおいおいおいおい、なんだよこれ」

「でっかい門ですねぇ」

呆気に取られる2人。


「お前らは、こっちには来たことなかったか」

「そりゃ、こんな場所に来る用事はないっすから」


「そりゃそうか」

門を背にし、2人に対してマルコリーから。


「よく聞け、2人とも」

その表情は、冒険者マルコリーとしてのモノだ。


「この門はあらゆる外敵を排除するために設置されている。勿論、この壁もそうだ」

門の横に広がる、大きな壁を指さしながら言う。


「この壁は都市の端から端まで続いている。つまりは、この壁で都市部を真っ二つにしているってことだ」


「マジかよ、どんだけ厳重なんだよ」

マルコリーの言葉に驚きを通り越した声を発する。


「ついでに言うと、上空だろうと、地下だろうとこの壁を越えることは出来ないわ。見えない壁が天地を塞いでいるイメージね?」

ダニエリーが補足する。


「なんで、こんなに厳重な警備体制を敷いているのかは、もう分るだろ?」

息をのむ2人。彼らが思い浮かべた"その理由"がそうさせた。


ジェスター、チェルビーの顔の強張りからマルコリーは彼らの思考を読み取った。


「そうだ、この先に今回の俺達のクライアントである、聖女様達が居る神殿がある」

門前からでも、見える程に大きな建物。白を基調とし、随所に細かな彫刻が施された石造り。そこには、これまた白を基調としたデザインの旗がたなびく。


「あれ、今回のクライアントって聖女様なんすか?」

「あれぇ、言ってなかったか? そりゃ悪かった」

悪びれた風を装おうマルコリー。


「私達、この恰好でいいんですか? 流石にこれで行くのは気後れすると言いますか、失礼に当たりそうで」

何時もと変わらぬ、体の要所を保護するプレートを付けた冒険者スタイル。

警備の者ならいざ知らず、門を跨ぐ資格があるものには見えない。


「大丈夫だ! 俺の恰好を見てみろ!!」

上半身裸、下はボロボロのズボン。

彼の堂々とした達振る舞いをみて、マルコリーよりはマシかと安堵するチェルビー。


「服装も、礼儀作法も最低限の気遣いが出来れば大丈夫よ。勿論、2人とも合格よ、安心して」

ダニエリーのお眼鏡に叶う程度には礼儀がなっているようだ。


「心配なのは、マルコリーよ。あの服装はどうしようもないけど、言葉遣いはきちんとしなさいよ、分かってるの?」

「おうともさ! 俺をそこいらの駆け出しと一緒にするなよ。この俺だぜ? 安心しなぁっ!」

腰に手を当て威勢よく発するその言葉。

一同は、不安しか感じなかった。


(流石の俺でも、心配になるなぁ)

(ダニエリーさん、苦労してそうねぇ)

(貴方だから、心配しているのよ)

3人の不安なんてお構いなしに、門へと歩みを進める。

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