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神々の円卓

輝いていると錯覚するほどの白さを基調とした大部屋の真ん中には、ドーナツ型の円卓が置いてあり、この世界の神々がそれぞれ鎮座する。一番背もたれが長い椅子に座る青年は、傍らに木の杖を立てかけていた。その部屋にアレルが入ると、神々は皆そちらへと視線を向ける。アレルはすぐに跪く。


「アレル、ただいま戻りました」


アレルが言うと、神々は微笑む。


「おかえりアレル。向こうの世界は息苦しかっただろう」

「いえ、そんなことは」


青年の優しい言葉にアレルはかぶりを振る。


「アハハハ神に嘘は通じないよ」

「正直……あまり良いところでは……」

「「「「「ハハハハハ」」」」


神々がアレルの発言にそれぞれ笑っている。


「それで、本来はあと二年向こうにいる予定のはず、何故こんなに早く私を呼び戻したのでしょうか」


アレルの質問に青年が杖を振る。すると、いくつかの場所の様子が現れた。そこにいる魔物や植物はどれも異常に大きくなっていた。


「これは?」

「今の地上の様子だ」

「この魔物たちはいったい?」


驚きの表情で、各地の様子を見るアレルに、青年が語り始める。


「一から説明しよう。君が前回、邪竜の一派を壊滅させ、その一派の影響により凶暴化した魔物への対抗策として、【竜器】を人々に授けた」

「はい」

「そのせいで、君が竜器を打てると漏れてあわや戦争に発展しかけたため、君を異世界に逃がしたわけだが、君が向こうに行ってから2年後、ある事が発覚した」

「ある事?」

「【神力脈】に穴をあけられた」

「【神力脈】というのは確か、この世界全てにめぐる創生神様の力の事ですよね」


アレルは、目の前の青年を見る。


「そう。この世界を作り、今もこの世界を維持している僕の力さ。まぁ、僕の力と言っても、創生の時に使った力が巡ってるだけだから、もう僕とは分離した力だけどね。これに、穴が開くとそこから神力が漏れてしまう。そうするとね、力がうまく循環しなくなって色々と影響が出てきてしまう。今見てもらってる魔物の肥大化もその一部。これから、天候や火山活動にも影響が出てくるだろう」


青年はアレルを指さし、微笑む。


「そこで君には、これを止めてもらいたい」


言い方こそ柔らかいものの、拒否することは許されない圧力があった。そもそも。神からのお願いを拒否することなど同じ神でもないとありえない。アレルは二つ返事で了承する。


「承知いたしました。しかし、どうすれば良いでしょうか?」


神力脈の循環を正す方法をアレルには検討もつかなかった。


「方法は簡単だよ。空いた穴に栓をすればいい。君はこれから、竜の里に戻り、君の義父ジールと共に【竜杭】を作りなさい。それを穴に差してふさぐんだ。【竜杭】の作成方法はジールが知っている。それとこれを渡しておこう」


そう言って、青年は右手を握りしめ、また開く。開いたてから、小さな光がアレルの下に来て手首に飛びついた。アレルが驚いていると、光が晴れ、そこには白磁の腕輪がはめられていた。


「神力脈の穴に関してはそれが教えてくれるだろう」


アレルは深く頭を下げる。


「ありがとうございます」

「最初に言っておくが、すでに、この件での僕たちの会議の結果が出ている」


円卓に座る神々が先ほどとは打って変わり、悲しそうな表情をする。神々の会議とは、未来の予知であり、会議結果というのは未来予知の結果を指す。


「結果をお聞きしても?」


神々の反応から薄々気づいていたアレルだが、平静を装う。


「君は今回の任務の途中で、命を落とすだろう」


残酷な真実を告げる青年の声だけが、円卓の上に響く。


「しかし、もし君が、僕たちの予知を超え、無事任務を果たせたなら、君の、人から竜に成るという願いを叶えよう」

アレルは思わず顔を上げ、青年を見る。その目は真っすぐアレルを貫いた。その言葉が真実だと確信したアキラは、身震いしながら頭を下げる。

「ありがとうございます!必ずや、果たして見せます!」

「うん期待しているよ」


アレルは立ち上がり、竜の里に戻ろうする。そんなアレルを青年は呼び止めた。


「少し待ちなさい」

「はい?」


そう言って振り返ったアレルの目に飛び込んできたのは、円卓の中央に映し出されたある映像だ。そこには、つい最近までアレルが暮らしていた世界が映し出されていた。定期的に映る場所が変わるその映像は学校、暮らしていた家などを隅々まで映す。


「これで、君の向こうでの生活を僕らは見守っていた」

「はぁ?ありがとう……ございます」


急に話が読めなくなったアレル。見守ってくれていたのは嬉しいが、さすがに生活を覗かれていたと思うと複雑だった。


「この映像なんだけど、竜族の希望でね、竜の里でも見られるようにしていたんだ」


ここまで聴いて、アレルの首筋に嫌な汗が流れる。


「まさか、シーラも……」

「あぁ、彼女たっての希望でもあったからね」


青年が遠い目をしながら、指をパチンと鳴らす。すると、背中に羽の生えた天使が、医療用のベッドをカラカラと運んでくる。そこに横たわっていたのは筋骨隆々な男であった。それを見たアレルの顔は、深海のように青ざめる。

「武神様……」

アレルは思わず横たわる男の正体を漏らす。


「ガルドがね、竜の里で暴れていた彼女を抑えに言ったんだが、なんとか抑えたものの、このざまだ」


青年を始め、円卓に座る神々も遠い目をする。


「あの、私まだここに」

「さぁ、竜の里へ帰りなさい」


帰るのを渋るアレルを無視して、青年は指を鳴らす。すると、アレルの足元に穴が開いた


「創生神様!アイグス様!」


アレルは創生神の名前を叫びながら、そのまま落下していった。




 空間に穴が開き、そこからアレルは吐き出された。着地に成功しながらも恨めしそうに穴を見る。


「アイグス様もお人が悪い。いや、神なのだから人が悪いはヘンか」


周りを見渡すと、竜の里に戻って来たことは分かったが、異様な静けさが里を覆っている。


「みんなはどこに行ったんだ?」


そういって、竜王の屋敷に行こうとしたとき、後ろから声がかかった。


「アレル」


アレルは自分を呼ぶ、冬の空気のような澄んだ声を聞いて固まる。ギギギと体をブリキ人形のように反転させると、そこには白雪のように美しい白い肌。白銀のなめらかな髪を持つアレルと同じくらいの女性が立っていた。見る人全てが、美少女というであろう女性。しかし、その目には光が無く、瞳にはアレルが暗く映るのみだった。


「や、やぁシーラ」


アレルはぎこちなく右手を挙げて挨拶する。そう、この女性が里で暴れ、止めに来た武神すらもなぎ倒した【シーラ】であった。


最後までお読みいただきありがとうございます!


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