未完の品
深い森を分け入って歩いていく二人に、木からぶら下がる一枚の赤い布が目に入る。
「お?目印だ。これがあるってことはもう少しだな」
「だいぶ深いところで作ってたんですね」
「人目を避けてたからな」
開けた場所に出ると、そこには大穴が空いていた。中を覗き込んでも底が見えない。
「これはすごいですね……」
シーラが穴を覗き込んで感嘆の声を上げる。アレルは照れたように頬を掻いて穴を覗き込んだ。
「いやぁ……あの頃は力の加減とか考えてなかったから」
「作っていた竜器はどんな武器なんですか?」
「いや、武器じゃないんだよ」
「武器じゃない?」
「装飾品なんだ」
「装飾品?」
「あぁ、何個か武器ではない武器を行くってはいたんだけど、純粋な装飾品を竜の素材で作ったらどうなるのかっと思ってな」
「竜器って言えるんですかそれ?」
「厳密には竜器じゃないな。竜器はあくまでも武器、戦う力を使用者に与えるものだから」
「【竜の装飾品】ですか……どんな効果になるんでしょう」
シーラが目を細めて暗い穴の中を見つめていると、奥に薄く光るものを見つける。
「あれでしょうか?」
指を差さしている方向を見ると、崖になっている穴の壁に引っかかっている金属の塊があった。
「フォルン、いけるか?」
アレルの呼びかけに応え、フォルンが人型になる。
「あれが私の新しい妹か弟になるのですね!どんな子になるのか楽しみです!」
フォルンは光のほうに飛んでいくと、その金属の塊を愛しそうに優しく包み込んでアレルのもとに持ってきた。受け取った塊は四方に角がある歪な形をしていた。
「遅くなってごめんな?必ず完成させるからな」
アレルは、三年前の忘れ物を懐に入れる。
「ここで作っていかないんですか?」
シーラが尋ねるとアレルは首を振る。
「作っていきたいけど、あの子とリオンが離れ離れな今、急がないとまずい。何事もないといいけどヤな予感がする」
アレルは塊をカバンにしまい、雲が多い空の下を歩き出した。
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