【エグザヘイム】王都へ
亜神化した子守りイカとの激闘から一週間後、アレルとシーラはリオン達、エグザヘイム王国騎士団の持つ軍船に乗り、王都を目指していた。そこそこに高い波が先の戦闘の余波を感じさせる。たびたび大きく揺れる甲板から、のんびりと海を見るアレルと海を見るアレルを見てほほ笑むシーラ。
「楽しんでもらえてるかな?お客さん」
リオンとハンナが声をかけた。一瞬渋い顔をするシーラだが、この二人に一応の信頼があるのか声には出さない。
「助かったよ。まさか民間船が全部動かないなんて」
「まだまだ波が高いからな。うちの軍船はこの程度なんてことないけど、民間船はそうもいかんさ」
アレルたちは、子守りイカがいなくなったことにより、船も動くだろう考えていたが波がまだ高いらしく、船を動かせないんだそうだ。それを聞いて、シーラが自分の背に乗ることを提案し、アレルが断固拒否していたところにリオン達が通りかかった。事情を聴いたリオンはアレルを軍船に乗せ今に至る。
「それにしても、大丈夫かな?」
「何か気がかりが?」
「いや、リオンに授けた子のことなんだけど……」
アレルがリオンの腰に差している剣を見る。
「そういえば言ってたな。国が亡ぶかもって」
「あぁ、あの子はな、俺が地上で打った一番最初の竜器でなんだけど、すごい一途な子でな、リオンに一目ぼれしたみたいでさ。どうしてもあの人に使われたいって言ってきかなかったんだよ」
「あの時はびっくりしたよなー。街中見回りしてたら、急にフードかぶった怪しい奴が『お前は力におぼれず、正しく使えるか』って聞いてくるんだもんな」
「仕方ないだろ、それがお役目だったんだから」
「竜器とアレルのおかげでそのあとの巨獣侵攻を止められたし、感謝してるよ」
アレルが当時を思い出し、恥ずかしそうに顔をそむける。
「問題はその子の一途さなんだよなぁ。もう離れて半年かー多分王城とか入れなくなってるかもな」
「なんでだ?」
リオンが首をかしげる。
「あの子は一途で……嫉妬深いんだよ」
「へ?」
「あの子はお前以外に使われるのが嫌いだし、お前が自分以外を使ってるのも許せないんだ。もしお前がほかの獲物使ってるのなんて見てしまった日には、嫉妬にくるってどうなるかわからん。リオンお前、宝物庫にあの子取りに行くなら絶対に丸腰で行けよ?武器を身に着けるな」
そういって、リオンの腰の剣を抜き取る。さやから剣を抜いて、刀身をよく見る。
「おい!」
取り返そうとするリオンに、抜き身の剣を投げ渡す。慌てて、持ち手を持つ。
「この剣なかなかのものだけど、お前には少し長いな、最近よく間合い外すんじゃないか?」
「確かに最近空振りが多いけど……」
「自分に合った武器使ってないと死ぬぞ」
そういってリオンの体を隅々までまさぐる。
「ちょ?!おいおいおい!どこ触って!」
「アレル!?」
動揺するリオンとシーラ、アレルは調べ終わると、満足そうにうなずいた。
「よし、これなら大丈夫そうだな」
「なにがだよ!」
「アレルはノーマルアレルはノーマルアレルはノーマルアレルはノーマルアレルはノーマルアレルはノーマルアレルはノーマルアレルは……」
リオンが自分の体を抱きしめながら抗議し、シーラはうずくまり自分に何かを言い聞かせている。
「いや、あの子を今のお前に合うように調整するからそのための調査」
「そういうのは先に言ってからやれ!」
何事もなかったかのように語るアレルにリオンはさらに抗議する。抗議の声は船内に響き渡った。
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