お役目
どこまでも白く、荘厳な円卓に座る神々が中央に映し出される映像を見る。そこには、海原で激闘を繰り広げるアレルたちが映っていた。
「アレルは気づいただろうな。このお役目が、ただ穴を塞ぐだけではないという事に」
アイグスは無機質な目で、戦闘を見守る。ちょうど天輪が完成したところだった。映像が白とびしたところでボロボロのローブを着た老人がアイグスに尋ねる。
「アイグス様、何故アレルにこのお役目を?亜神は竜たちですら、手を焼くもの。いくらアレルとは
いえ無理難題が過ぎるのでは?」
「それはね、コーネルリアン。僕は彼に、竜に成ることをあきらめてほしいんだ」
「それはなぜ?」
「彼を僕の後継にするつもりだからだ」
その一言に円卓がどよめく。アイグスはそれを無視して話しを続ける。
「彼は、世界をよく知っている。善の尊さも悪の必要性も、すべての種族の役割もね。僕の眷属として、あと数千年修行すれば立派な創造神になるよ。しかし、竜神の一件以来、竜族の中から神を選ぶことはできない。だから、このお役目に行ってもらったんだ。僕もそろそろ隠居したいしね」
アイグスは少しふざけたように言った。同時に映像が戻り、アレルたちを映す。
光が晴れると、アレルがまず最初に感じたのは荒れ狂う暴風だった。吹き飛ばされそうになるのを耐えようと、地面に手を伸ばす。そこで、異変に気づく。地面が氷じゃなくなっている。見てみると、自分は大破した船の上にいる。周りを見渡すと、同じような船が点々と存在し、先ほどまで晴れていた空は、イカの頭上で渦を巻く雲に覆われている。
「アレル!」
声のした方を見ると、親イカに乗ったシーラいた。アレルは即座に親イカに飛び移る。親イカは触手を使い、二人を暴風から庇う。
「アレル!これは……」
シーラがアレルの肩を掴む。
「神域を展開されたな」
「そんな!」
シーラがアレルの肩を掴む。
「もうどうにもならない」
シーラは自分の首輪に手を掛ける。
「私が竜に戻って!」
その手をアレルが掴んで止めた。
「お前が竜に成っても、もうどうにもならない。亜神になったらもう……」
シーラの手から力が抜け、首輪から手を放す。
アレルは、親イカの頭に手を置く。
「ごめんな、絶対助けるって言ったのに、助けてやれなくて」
イカの色が、何かを察したのか、柔らかいオレンジ色になる。
「亜神を放っておけば、神界大戦になりかねない。殺さないと」
アレルは拳を固く握りしめる。
「フォルン!」
アレルの声に呼応して、フォルンが自身の温度を上げて赤く染まっていく。
「本当にごめんな」
最後に、親イカの頭を一撫でしてその頭から飛び出した。
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