正体
アレルが引きずり出したのは、旅客機ほどの大きさになったイカだった。それを見たリオンたちが、即座に船から砲撃する。巨大イカに命中するも、体のぬめりのせいか、イカの体をなぞって、海へと落ちる。
「嘘だろ!」
驚くリオンをよそに、イカは自由落下に合わせて海に落下する。衝撃で起きた波に船が大きく傾き、兵士たちは悲鳴を上げながら必死に船にしがみつく。リオンとハンナは互いに支え合い、イカの行方を捜す。すると甲板にアレルが着地した。そこにフォルンが槌の状態のまま、どこからともなく飛んできてアレルの手に収まる。リオンたちがアレルに駆け寄る。
「おい、アレル大丈夫か?」
「んー」
リオンの質問にアレルは気のない返事をしながら、首を傾げている。
「おい大丈夫かって?」
再度聞くリオンにアレルは考え込んだまま顔を上げる。
「なぁ、クラーケンってあんな丸っこい体してたか?」
アレルはさっきのイカの姿を思い浮かべる。全体的に丸々としていて、どこか可愛げのあるフォルムをした巨大イカの姿が、好戦的で海の悪魔と伝えられているクラーケンとどうしても一致しない。
「へ?あー、確かに、たしか触手の鉤爪とか無かったかも」
リオンもアレルの質問に顎に手をやりながら考える。
「というか、クラーケンだったらもっと体に模様が入ってるだろ。真っ白だったぞアイツ」
そうこうしていると、また水面が盛り上がってきた。中から出てきたのは先ほどのイカだ。しかし今度は触手を伸ばさず、こちらの様子を見ているようだ。
「どっかで見た事あるんだよなぁ」
首を傾げ続けるアレル。その時、イカを見ていたシーラが手を叩く。
「あぁ!この子!『子守りイカ』では?」
「それだ!」
シーラの言う子守イカとは、生んだ子供が大人になるまで常に一緒に行動する習性を持つイカだ。
「いや、確かに見た目はそうだけど、デカすぎだろ!子守りイカはこんなデカくならねーよ!」
リオンが、シーラ達に突っ込みを入れる。それもそのはず、子守イカは大抵体長二メートル程なのだ。こんなに大きい子守りイカは今まで発見されていない。リオンの言葉を聞いたアレルの脳裏に、神々の円卓で見た神力脈の穴の影響で大きくなった動物たちの映像が浮かぶ。
『まさか』
アレルがそう思った瞬間、白磁の腕はから声が響いた。
『神力の影響下にある存在と接触しましタ』
機械的な音声が甲板に響く。
「時差酷いな」
アレルは文句と共に腕輪を睨んだ。
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