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墓参り

アレルが槌を振り下ろすと、杭から暖かい光が漏れた。竜杭完成の合図だ。アレルとジールは、杭を持ち上げてすでに完成している竜杭の上に置いた。テーブルの上には七本の竜杭が並んでいる。二人は完成品を眺めて、頷き合う。鍛冶場からリビングに戻ったアレルは、イスにドカッと座り込む。


「やっと終わったー!」

「良くやったアレル」


そう言って、ジールは良く冷えた水をアレルに渡す。それを一気飲みし一息ついた。


「親父の方が長く打ってたじゃないか」

「お前は人間なのだ。上出来だろ、ほれ、さっさと湯あみして来い」

「あぁ、お先もらうよ」


ジールの言葉に微妙な顔をしながらも、汗でドロドロになった体を流すために風呂へと向かった。一人残ったジールは困ったように頭を掻いた。


「あいつはどうも、人間であることを気にしすぎなんじゃよな」

「おじ様!アレルは!」


扉がバンッという音を立てて入ってきたのはシーラだった。


「シーラ、お主はもう少し静かに入れんのか」

「すみませんおじ様。で、アレルはどこですか?」


一応謝るが、頭の中はアレルでいっぱいのようだ。ジールはため息をつきながら

風呂場を指さす。


「今は湯あみじゃ。すぐ出てくるじゃろう」

「じゃあ、ここで待たせてもらってもよろしいですか?」

「あぁ、もちろんだ」


ジールは、ウキウキとアレルを待つシーラの姿を優しい眼差しを向ける。




 アレルはシーラと並んで里の街道を歩いていた。シーラは上機嫌で腕を絡ませている。


「シーラ歩きづらいよ」

「これは私を放置したバツです」


通り過ぎる人化して暮らす竜たちは、アレルたちに手を挙げて挨拶したり、子どもたちが二人に群がったりと、住民からの人望を感じる。アレルは一つの店を訪れた。中には各地の酒がずらっと並ぶ。


「おぉアレルにシーラか」


中から、一人に老人が出てくる。


「じっちゃん。久しぶり」

「こんにちは」

「アレルはこんなに大きくなって、今日はどうした?」

「酒が欲しいんだ」

「酒って、お前まだ……あぁそうかあそこに行くのか」


老人が悲しそうに俯く、さっきまで上機嫌だったシーラも俯いている。


「はい、【トレッチ】をお願いします」


老人はボトルと盃を取り出し、アレルに渡す。アレルはお金を老人に渡した。


「もう三年か……」

「はい」

「【邪竜戦争】お前さんはよくやった。シンの事は残念じゃが、お前さんのせいではない」

「はい……」


アレルは顔に影を落とし、酒をもって店を出た。その後ろをシーラが続く。


「シーラ、無理についてこなくていいんだぞ。先にお前の家で待っててくれても」

「大丈夫です」


食い気味に返事をするシーラは後ろからアレルの腕を取る。

「行きましょう」

「あぁ」


二人が歩いて着いた場所には。一本の大樹があった。その下に石碑が置かれている。そこには名前がびっしり書き込まれていた。脇にある看板は『英雄ここに眠る』と書いてある。シーラは石の表面を指でなぞる。その指が一つの名前で止まる。懐かしい日々を思い出すような柔らかい表情だ

『シン・アイルバトゥ』

そこには、その名前が刻まれていた。


「父さん、アレルが帰ってきましたよ」


アレルは、酒を盃に注いで石碑の前に置く。


「シンさん、久しぶり。シンさんの好きな酒持ってきたよ。遅くなってごめん」


アレルは三年前のお役目を思い出す。



最後まで読んで頂きありがとうございます!


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