第8話 入校そして仲間
予め指定された通り、私は入学式の二日前に横須賀士官学校へ入校した。初日はクラス分けの発表に始まり、クラス毎の教場で教官、助教との顔合わせ、被服の支給などの雑事に費やされた。
因みに、初日の昼食はカレーライス。
「これが、あの、横須賀海軍カレーなの?感激!」
私の隣の席で昼食のカレーを前にして、鼻息も荒く興奮している彼女は立花エリカ。彼女はフランス人とのハーフ美少女で、どうもミリオタの傾向があるみたい。
「まあ、海軍というより連邦軍カレーかな。それより福神漬け取ってよ。」
この人使いが荒そうなクールビューティは国見真樹。スポーティでベリーショートな黒髪に大きな二重の瞳が印象的美少女だ。実な私はこの娘の事を知っていたりする。彼女も高校の部活動で空手をやっていて、今までに何度か大会で会った事があるのだ。ここに来てお互い驚いたけど。
「じゃあ、外出出来るようになったら、みんなで本物を食べに行こうよ。」
そう、実に建設的な提案をしてのは雨宮ひとみ。第一印象が「巫女さんみたい!」な和風美人さんなんだけど、実際に彼女は本物の巫女さんで、実家は伊豆の神社だったりする。
ひとみの提案にカレーを食べながら「うんうん」と頷いている小柄で可愛い娘が李史恵。彼女は台湾出身で、親戚が横浜中華街で中華料理屋を経営しているそうだ。
私が「それって中原大飯店?」と尋ねたら、「そんな大店じゃないよ。でも美味しいから今度一緒に行こう?」と、実に可愛らしい笑顔で誘ってくれた。
この四人に私を加えた五人が同じ班となる。班長は学校側から指定されるため、名簿の名前に黒丸が着いていて、私が班長になってしまっていた。どういう基準なんだろう?
これからの二年間、良くも悪くも全てこの五人で行動する事となる。みんな(私も含めて)可愛い娘ばかり。はあ、眼福、眼福と思いつつ、みんなすぐに打ち解けて仲良くなれたのはとても良かったと思う。まだ知り合ってほんの短い時間しか経っていないけど、この四人となら上手くやっていけそうな気がする。班長としては有り難いばかりだ。
あっ、今更だけど、私の外見というか容姿はというと、身長は165cm、体型はずっと空手をやっていたので引き締まって、プロポーションも悪くない、と思っている。今は士官学校に入校するから髪型はショートボブにしている。顔は父に少し似て、切れ長二重に鼻は鼻梁がすっと伸びて高め、唇は薄めで口は小さめだ。ずっと女子校だったので、男子から告白とかされた事は無いけど、一応地元では妹共々美人姉妹で通っているのだ。
そして始まった入学式。しわぶきひとつ聞こえない講堂の中で、士官候補生達の氏名が呼び出される。" 朝倉 " である私の番はすぐだ。総勢200名となる私の同期生達。氏名を呼ばれた者は素早く起立し、直立不動となって喉も裂けよとばかりな気合いの入った声で「はい!」と返事をする。昨日と今朝、数回に渡り行った予行練習のお陰で、今年度の地球連邦軍横須賀士官学校入学式は滞りなく進行している。
遂に私の氏名が呼ばれる番となった。
「朝倉咲耶!」
「はい!」
すかさず練習通りに素早く起立して返事をしたが、私の氏名が呼ばれると講堂内は俄かにザワついた。何故私の時だけそうなったのか、正直訳がわからない。その後も特にそういった事は無く、在校生の送辞、新入生代表の宣誓、校長訓示、来賓紹介と続いて入学式は終わった。
しかし、何で私の時だけあのようにザワついたのか。なんか、こう、釈然としないものが残った。
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