第7話 それぞれの道
高校を卒業し、私は妹とNー1コロニーにある家族の思い出が詰まった住み慣れた我が家を後にして、再び横須賀へと向かった。
予備役中尉の母は、招集されていて、既に軍務に就いている。母からは手紙が一度だけ届き、詳しい事は無論書かれていなかったけど、やはり軍用機のパイロットになるみたいだった。
私と妹の七海は、受験の時と同様に横浜まで一緒だったけど、これからは別々の道。これからは一人で頑張らなければならないのだ。
士官学校と少年下士官学校の入校日は同じ。その日、祖父母の家を出た私と妹は、横浜駅が近づくにつれ徐々に会話が少なくなっていった。祖父が勧めてくれた横浜駅西口地下街のきしめん屋さんで昼食を食べてから、私達はそれぞれ、自分達の学校へと別れて行く。
「なな、身体に気をつけてね。」
「うん、お姉ちゃんもね。」
「たまには連絡するんだよ?」
「うん、お姉ちゃんもね。」
私は、これから別れ別れとなるたった一人の妹をぎゅっと抱きしめ、頬ずりをした。
「電車の時間だから、それじゃあ、私、そろそろ行くね。」
暫く私にされるがままだった妹が、抱きしめられながら別れを告げた。
私は抱擁を解き、私から解放された妹はキャリーケースを手に取ると、東海道本線に乗るべく改札へと歩き出す。
私から次第に遠ざかって行く小さな背中が、一度振り返ると、笑顔で私に手を振った。私も泣きそうになりながらも、去りゆく妹に、その姿が見えなくなるまで手を振り返し続けた。
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