第69話 再会、母よ①
私達が守る輸送船団はアステロイドベルト宙域に至り、その管制下に入った。この宙域ではアステロイドベルト駐留艦隊がいるため、いざ敵襲となった場合でも、駐留艦隊の救援が期待出来る。だから、ある意味安全地帯に入ったと言える。既にエスコートの艦艇も出ているだろう。
この広大なアステロイドベルト地帯には多くの資源採掘現場と、その防衛のための軍事施設が存在する。その中でクヌート基地(小惑星クヌートを改造した宇宙要塞)を中心とした宙域が通称"クヌート宙域"と呼ばれ、数多くのスペースコロニー、宇宙港、採掘資源の貯蔵施設、資源加工工場などが存在している。そして、アステロイドベルト地帯における地球連邦軍の最大拠点ともなっている。
無事にクヌート宙域に達した輸送船団が、輸送して来た積載物資と地球圏に持ち帰る鉱物資源などの積み降ろし作業中、第309護衛艦隊の乗組員達には、「遠路遥々ご苦労様でした。まあ、我々が見てますから休んでいって下さいよ」とばかりに展開してくれている駐留艦隊のお陰で貴重な上陸休暇が許可された。
私達レッドライオン小隊も、この恩恵に浴する事が出来、他の上陸組と一緒にランチに乗って、宿泊施設や娯楽施設があるスペースコロニーへと向かった。
「凄いね、一体何隻いるんだろう。」
パティはランチの窓から見える無数の船舶や艦艇が放つ光点に感嘆の声を上げた。要塞や宇宙港、スペースコロニーは元より、それらの周りで光を放って点滅する夥しい数の艦船。ここがアステロイドベルトにおける地球連邦軍の金城湯池というのも頷ける。
「ねぇねぇサク、上陸したらどうしよっか?」
パティが瞳をキラキラさせている。よほど上陸が楽しみだったのだろう。まあ、その点は私も同じだけど。
「取り敢えずお昼ご飯を食べて、チェックインじゃない?エルザ隊長とラビィにも聞かなくちゃだけど。」
空母太鳳の航空隊では、ローテーションで小隊毎に上陸して二日の休暇を過ごす事が出来るようになった。小隊で上陸だからといって小隊で行動しなくてもよさそうなものだけど、レッドライオン小隊では誰も何の疑問を持つ事無く、女子四人組の団体行動となっていた。初めての上陸で勝手もよくわからないし、男性達と違って女性従業員からサービスを受ける特殊な飲食店に行く訳じゃないしね。あっ、因みに男性従業員から云々という飲食店もあるらしいけど、生憎と私は興味無いかな。
空母太鳳の乗組員達から一緒に飲みに行こうとか随分と誘われたりもしたけど、艦内じゃ話せないようなお喋りもしたかったのでお断りした。エルザ隊長が。
そして、私達が乗ったランチは三番コロニーに入港し、月のモスクワ海基地を出航して以来、一ヶ月振りの上陸を果たした。
三番コロニー内には地球連邦軍の将兵が無料で宿泊出来るホテルもある。しかし、私達には今のところ使い途の無い給料がたっぷりとあるため、少し贅沢して高いホテルに泊まろうという事になっていた。
予約したホテルにチェックしする前に、繁華街に繰り出してイタリア料理店で昼食を食べる。女子四人でお喋りしながらの食事は楽しく、食後のデザートに食べたティラミスとエスプレッソも絶品だった。
昼食を終えて店を出たところで、店の前を歩いていた数人の軍人達に出会した。女性の士官が二人に男性士官が二人。こういう時はどちらに階級の上位者がいるのかさり気なく、素早くチェックする事が求められる。無論、その上位者に敬礼しなければならないからだ。夜の繁華街なら互いに面倒くさいから見て見ぬ振りをしたりするらしいけど、真っ昼間ではそうもいかない。
「気を付け!」
エルザ隊長の号令がかかった。向こうに私達よりも上位者がいるようだ。私達はすかさず直立不動となり、挙手の敬礼をする。そして、向こうの上位者である女性士官が答礼し、私の前を通り過ぎようとした時、その女性士官と目が合ってしまった。そしてお互いに驚愕した。
「咲耶ちゃん?」
「お母さん?」
そう、その女性士官は紛れもなく、見まごう事無き私の母だったから。
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