第6話 医者・女魔法使い・金儲け。ドヤ顔したったぞ
「医者連れてきたぞ」
扉から入ってきたのは3人。
小柄な剣士と女魔法使い。
それと、じぃさまだ。
たぶん、じぃさまが医者だな。
「すぐに見てもらいたい……へっ?」
小柄剣士がびっくりしているな。そりゃそうだろう。
ひん死の重体のはずの男が、ぴんぴんしていたら、誰だってびっくりするだろう。
「どうなったのだ? おまえ、治ったのか?」
「そうだにゃー。この薬師のおかげだにゃー」
猫獣人は自分が治したみたいに、ドヤ顔で説明している。
ときどき、こっちに話をふってくれるから、俺もドヤ顔で話した。
「ちょっと、その青年。どんなボーションを使ったのか。教えてくれないか」
話を聞いていたじぃさま医者が興味を持ったらしい。
効果抜群の話だからな。
「はい。これだぜ」
残ったポーション1本をじぃさま医者に手渡してみた。
ポーションを真剣なまなざしで、じーっとみている。
「おお、これは総合回復薬。珍しい物をもっておるな」
「わかるんだな。どうだ、いいポーションだろ」
「いいポーションも何も。こんなポーションがあったら、わし達医者は仕事あがったりさ」
「へぇ、そんな効果あるものなんだ、これは」
もちろん、こんな話をしている間中、ドヤ顔をしていた。
「総合回復薬は医者いらずって言われていてな。病気だろうが、傷だろうが、ただの不調だろうが全部治せてしまうんだ」
「そんなすごいポーションなのか」
「おや、よく知らないみたいじゃな。それは、どこで手にいれたのかな?」
「ふふふ。聞いて驚くな。俺が作ったんだ」
おおー、やっぱり、びっくりしているな。気持ちがいいな。
生産職はこうじゃなきゃいけないよな。
医者だって、俺が作ったアイテムを見ると、びっくりする。
それができるのが、「究極の匠」の醍醐味だ。
おっと、それはゲームの話か。
「俺は、ポーションづくりの秘伝を伝授された男だ」
最大級のドヤ顔をしてみた。
「素晴らしい。このポーションをわしに譲ってくれないか。そうだな。銀貨2枚出すぞぃ」
「すまんな。もう、こっちの剣士に売ることが決まってな」
「おお、そうだろう。じゃあ、わしのためにも作ってくれないか」
「あ、銀貨3枚だ。それでもいいなら作るぞ」
「たいへんだにゃー。いっぱい薬草がいるにゃー」
「そうだぞ。剣士と医者にポーションを渡せるかどうかは、お前にかかっているのだ」
嘘だよ。本当はそのくらい作れる薬草はもっているんだが。
だけど、この世界の常識だとポーション1本で薬草1束みたいだから、黙っていよう。
「任せるにゃ。たくさん、薬草を採ってくるにゃー」
一緒に総合回復ポーションを作って金儲けするにゃー。
おっと、口調がうつった。
どうも、俺がもらったポーションスキル、異世界では使いやすいスキルだったらしい。
ガンガン作って、究極のポーション匠を目指すとするか。
冒険者パーティの3人は会議を始めた。
「だからさ。このポーションがあれば、グレイト・ベアだって倒せるさ」
「危険じゃないか。確かに回復師がいない俺たちにとって、このポーションは救いの神だな」
「そうね。このポーションがあれば、あいつに勝てるわ」
どうも、ひん死の重体になったグレイト・ベアを討伐する話らしい。
「あの。もしさ、そのグレイト・ベアとかを倒すのにもっとポーションがいるなら作るよ」
「おお。もっと作れるのか。それなら10本、欲しい。金ならこいつらも持っているからな」
「では、金貨3枚で10本ということで。薬草はなんとかなるかな」
「もちろんだにゃ。今日中に採ってくるにゃー」
うん。頼もしい相棒だ。
それは任せたぞ。
「だけど、いつ10本揃うのか?」
「明日の朝には」
「本当か。それはすごい」
また驚いてくれたから、ドヤ顔をしてみた。
「わしの方はいつになるかな。5本欲しいんじゃが」
「それも明日の朝には」
「おおーーー」
もちろん、ドヤ顔をした。
「じゃ、すぐに薬草採ってくるにゃ」
猫獣人は、走って部屋を出て行った。