第67話 ポーションスキルって錬金術?
「だけど。アキラさんのポーションスキルって、本当に錬金術みたいです」
「そうなのか。俺は錬金術がよくわからないから、なんとも言えないな」
リルが俺がポーションづくりをしているのを見て、しみじみと言う。
今はメルとリルにはポーションづくりの全てを見せて、協力してポーション大量生産を実現中。
「アキラさんのやり方って、両手の間で魔力を練って等価交換しているとしか思えないです」
「等価交換ってなんだ?」
元々、リルは錬金術を少し学んだことがあるらしい。
奴隷になる前、7歳まで母方の祖母がシャーマンをしていて、錬金術をはじめ多くの高次元にアクセスする方法の初歩を伝えられている。
「錬金術の考え方で、地上にあるすべての物質は値をもっていて値の合計値は変えることはできないって考え方です」
「よくわからないな」
リルにしても、錬金術はほとんど使えない。
正式に教わる前に奴隷になってしまったからだ。
「あ。もしかしたら、錬金術の素材がアキラさんのポーションづくりにも使えるかもしれないわ」
「それはあるかもしれないな」
☆ ☆ ☆
「そういう訳でな。錬金素材を入手してもらいたいんだが」
「それはちょっと難しいかもしれないわ」
「なぜだ?」
「錬金素材は錬金術ギルドががっちりを押さえているから。錬金ギルドメンバーでないと入手困難なの」
この世界では、ギルドの力が強い。
ギルドが定めるルールをやぶると街で活動ができなくなる。
だから、ギルドメンバー達は決められたルールの中で活動している。
錬金ギルドは特に排他的な組織で、メンバー以外には素材も情報も流通させることを厳禁している。
「それは残念だな。新しいポーション素材が見つかると思ったんだがな」
「あ。それなら、錬金標本ではどうかしら」
「錬金術の素材のサンプルみたいなもの。20の素材がちょっとづつ入っているわ」
「それ、いいかもしれないな」
ロザリアは早速、錬金標本を手に入れてきた。
木製の薄い箱で、蓋を開けると内部が4X5に小さく区切られている。
そのひとつひとつに小さな錬金素材が入っている。
「錬金素材の標本1がこれね。一番一般的な素材みたい」
「標本1ということは、もっといろいろとあるということか?」
「そうね。全部で10まではあることは確認したわ。ただ、他のはすぐには手に入れられなくて」
「できるだけ、手に入れてみてくれ」
俺は、ひとつひとつの素材を右手で触れてみた。
そのうちに反応があったのは、3つ。
光貝の貝殻、虹輝石、紅虎牙。
それだけを抜き取って、俺はポーション探求を始めた。
「ね。何ができるのかしら」
「どんなのができるかな」
メルとリルも興味津々だ。
「まずは光貝の貝殻だ」
サンプルなので量が少ない。
ポーション生成に足りるのか?
ポーションスクリーンでは、レベル2の枠が光っている。
『バッカスポーション』
一滴垂らすと酒の熟成が一瞬で進み味が良くなる。
なんと。
酒好きが喜びそうなポーションだな。
しかし、今はそれほど役立つとは思えない。
「ひとつだけ、作ってみるか。バッカスポーション!」
できあがったのは、ルビー色の液体が入った瓶。
「それは何?」
メルが早速喰いついてくる。
「バッカスポーション。酒がうまくなるらしい」
「じゃあ、ワインで試してみようよ」
ワインなら頼めばもってきてもらえる。
ふだん飲んでいるのは、あまり熟成されていない味が薄いワインだ。
外で監視をしている衛兵に頼んでワインをもってきてもらう。
カップは俺とリルとメルだから3つある。
「まずはバッカスポーションを入れる前を飲んでみるぞ」
「うーん。普通のワインね」
「ワインってこんなものよね」
俺は転生前にある程度ワインは飲んでいる。
その経験からすると、ずいぶん薄く感じられるワインだ。
一番安いワインを水で2倍量に薄めた感じ。
「では、それにバッカスワインを1滴たらすぞ」
「あ、なんかワインの色か濃くなった感じがするわ」
「うまくなったのかな。飲んでみよう」
3人が一度に飲んでみた。
「なんだ、これは!」
「なんて芳醇なの。香りがふわぁ~と」
「うまい。こんなうまいワインは初めて飲んだよ」
これはお得なポーションだ。
一瓶あれば、うまいワインが1カ月は飲み続けることができる。
だけど、それは今、必要なポーションではないな。
戦争が終わった宴が設けられるときには、活躍しそうなポーションだ。
おっと。
いいこと思いついた。
あれに使ってみよう。
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