第65話 実験・連携・頭ナデ。ポーションを楽しくつくるには?
「じゃあ。このバハチジュースを瓶に詰めければいいのね」
「待って。その前に純度を上げた方がいいと思う」
メルとリルがマルスポーションの下準備をしている。
いままでは俺ひとりで作ってきたから、どのような下準備がいるのか、まだ分かっていないところも多い。
だから、ふたりに任せて、いろいろとやってもらっているところだ。
バハチは珍しい果物だが、マルスポーションを増産するために大量に仕入れがされている。
船の交易で流通経路が大幅に強化されたので、素材が他のなくなることはなさそうだ。
今は、俺のポーションスキルの生産数限界がマルスポーションを作れる数に直結する。
「どれどれ。ひとつずつテストするぞ」
「最初はこれよ。メル発案の加熱タイプ」
「あ、これはダメだ。ポーションスキルが反応しない」
「ええーー」
メルの下準備はやりすぎだ。
もっとも、こいつのやることは無茶が多いが当たると結果につながる。
チャレンジャータイプだな。
「私のも試してください。丁寧にすり潰して、濾して、少しずつ加水したタイプです」
「どれどれ」
すでに瓶に入れられているから、リルタイプの瓶を右手に持って魔力を掛ける。
「マルスポーション!」
できた。思ってたより魔力が少ない感じだ。
できあがったマルスポーション。
プラチナ色に輝く液体が入っている。
「おっ、輝きもすごいな。いままでのマルスボーションより質がよさそうだ」
鑑定すればきっといい結果になるだろう。
残念ながら俺もふたりも鑑定スキルはもっていない。
見た感じは品質が良くみえるが、最終的には鑑定してもらうしかないな。
「今日は、この形で残りを作るぞ」
「ちょっと待ってよ。もっといい方法あるかもしれないじゃない」
メルがむくれている。
自分のやり方がうまくいかなかったから、すねているんだろう。
「仕方がないな。わかった。メルは別のやり方で下準備してみてくれ」
「わかったわ。もっといい方法みつけてあげるから、待ってなさいよ」
本当にこいつ、負けず嫌いだな。
まぁ、いろんなことにチャレンジするのはいいことだ。
リル方式の下準備なら、リルがするだけで十分だ。
「今日は1日、マルスポーションを作るぞ。目標15本だ」
☆ ☆ ☆
「見て! こんなのができた」
俺とリルのペアがマルスポーションを9本作り終わったころ。
メルが1本の瓶をもってきた。
バハチは、濃いオレンジ色の果実なので、下準備したものもオレンジ色をしている。
ところがメルがもってきたのは、濁っているけど銀色ぽい。
「ん? なんだ、それは。バハチなのか?」
「うん。下準備したものに徹底的に魔力を込めてみたの。そしたら色が変わったわ」
それって、失敗って言うんじゃないか。
使えないゴミともいうが。
「ゴミじゃないのか」
「失礼ね。品質は最低かもしれないけど、マルスポーションかもしれないじゃない」
うーむ。
これを飲んで効果を確かめるには勇気がいるな。
とにかく、鑑定をしてもらってからか。
「ん?」
右手に持ってみたら、マルスポーションの素材として認識されたぞ。
よし、やってみよう。
「マルスポーション!」
できた。
おおーっ。
素晴らしい輝きのプラチナ色の液体だ。
今までみたこともない色だな。
「すごいぞ、メル。俺の魔力が少なくて済んだ。その上、輝きが違う。今日一番の出来だ」
「どう? 姉ちゃん。私の勝ちね」
「負けたわ、メル。あなたはいつも粘ってすごいのをみつけるわね」
優等生タイプのリルに比べて我流タイプのメル。
ある意味、天才タイプなのかもな、メルは。
「メル、お前は天才だ」
「本当? 嬉しい」
おおっと。
メルが抱き着いてきた。
よしよし。
頭をなでてあげよう。
しかし、こいつ。
どんどんと綺麗になるな。
初めて会ったときは、暗い少女だったけどな。
今は誰が見ても美少女だろう。
「気持ちいい。もっとなでて」
いい子、いい子をしてやる。
あ、なんでリルがうらやましそうに見るんだ?
仕方ないな。
「リルもこっちこい」
「はい」
嬉しそうに飛びついてくる。
いい子、いい子をしてやる。
うっとりした顔をするな。
両手に美少女奴隷か。
すごい贅沢な状況かもしれないな。
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