第62話 空間転移・ムムの木・戦士。エタドラ娘はお散歩してる
「やっぱり、外は気持ちいいわ」
少女姿のエターナルドラゴン、エタドラ娘はダンジョンから出て散歩を満喫していた。
空間魔法でダンジョン最深階から地上に空間転移した。
「さて、どこにいきましょうか」
外に出たのはいいが、特に目的がない。
「なにかうまいものでも食べにいこうかな」
そういえば、このあたりにはムムの木があったはず。
ムムの実には、魔力がたくさん含まれていて、ドラゴンの好物でもある。
そうは言っても300年前の情報だから、今はどうなっているか分からない。
「おっ、あった」
間違いなくムムの木だ。
実はなっていないが、ムムの木だということは枝の特徴でわかる。
「ある程度、木の本数はあるのにな」
なぜかムムの実がなっていない。
ムムの実は1本に1個だけ、なる。
だいたい1週間に1個なって成熟していく。
「これだけのムムの木があれば、1つくらいなっていてもいいはずなんだけどなぁ」
不思議に思っていたら、人間に出くわしてしまった。
鎧を着て槍を持っている。
戦士かな。
「おい、そこのお前」
エタドラ娘の知能レベルは高い。
人間の言葉もわかる。
文字を読むことも、書くこともできる。
もっとも300年前に知識だから、その間に生まれた言葉とはわからないが。
「なに?」
「ここは、ムムの木の林だ。勝手に入るな」
「なんで~?」
「ムムの実は今、国の管理下にある。だから勝手に入ってはいけないんだ」
国か。
確か、山と、山向こうに人間が集まって住んでいて国って呼ばれるものがあったな。
300年前の知識だから、そんなものだ。
「国っていうのは、山の国かな。それとも、山向こうの国かな」
「はぁ~。何を言っているんだ。都市国家アテナイに決まっているだろ」
いつの間にか、知らない国ができていたのか。
「じゃあ、ムムの実を頂戴。久しぶりに起きたから、食べたいの」
「ふざけるな。ムムの実はお前が食べていいものじゃないぞ」
なんか、こいつ、偉そう。
ちょっと実力の違いを見せてやろう。
「なんかむかつくから、パ~ンチ」
鎧の男は、吹っ飛んでしまった。
人間って弱いんだよな。
昔、100人単位で向かってきたときは、ファイヤーブレスで全部やっつけたことあったっけ。
それからは、歯向かってくることはなかったんだけどね。
「新しく国ができたのか。ちょっとみてこようかな」
だけど、どこにあるのかわからない。
鎧の男に聞けばよかった。
「次に人間に会ったら聞いてみよう」
そう思って、エタドラ娘は適当な方向に歩き出した。




