第59話 召集令状・衛兵隊長・軟禁。また捕まってしまった
「大変よ」
また、ロザリアの「大変よ」が始まった。
今度の「大変よ」はどんな「大変よ」なのか?
「アキラ、とにかく逃げて」
「えっ?」
なんの説明もなく、アトリエから外に連れ出そうとするロザリア。
意味が分からない。
「なんで、逃げなくてはいけないんだ?」
「説明している暇はないわ、とにかく急いで」
そんな押し問答をしていると、外が騒がしくなる。
衛兵が鎧の音を響かせながら、アトリエの前に集まってくる。
「あー、間に合わない!」
「なんだ?」
扉が開いて、大きな赤い房を兜の上につけた衛兵が前に出る。
この街の衛兵隊長だ。
「アキラだな?」
「そうだ」
「お前を戦時特別法により、招集する」
1枚の赤い枠の紙を突き付けている。
大きく、召集令状と書いてある。
「へっ、戦時? 戦争ってこと?」
☆ ☆ ☆
大きな部屋に閉じ込められてしまった。
戦時特別法による、招集令状。
強制的に軍部の配下に編入される。
抵抗すると、国家反逆罪になり、死刑と決まっている。
そんな話を衛兵隊長にされて、大人しく連れてこられるままにした。
貧民街のはずれにあった俺専用のアトリエから、貴族街に連れてこられた。
大きな屋敷の中にある、これまた大きな離れ部屋。
元々は、何に利用する部屋だったのかは不明だが、今は窓には鉄格子がついていて、扉には大きなカギがついている。
「あーあ。また捕まってしまった。まぁ、今は貴族が上にいるから、大丈夫だろう」
そう思っていたら。
ロザリアが来て、言われてしまった。
「ごめんなさい。カターニャ伯爵でも無理だって言われたわ。貴族院の全会一致の招集だって」
貴族院というと、この都市国家の最高権力機関。
これで、なんで俺のことが決められてしまうんだ?
個人の自由はどうなっているんだ?
犯罪を犯した訳でもないのに。
この国のためになっていると思うぞ、俺のポーションは。
なんとも納得できないまま。
多数の衛兵の見守る環境で運び込まれる、ポーションづくりの設備をぽーっと見ていた。




