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第5話 ミイラ・連投・若返り。手作りポーション効果のほどは?

「もう、できたのかにゃ!」


宿の受付に行くと、猫看板娘が喜びの声をあげる。


「でも……ごめん」

「なんだにゃ?」

「どうも、できたのは総合回復ポーションみたいなんだ」

「……また、青いのかにゃ?」


袋から取り出して1本みせてみた。

しっかりと青い色のポーション。


「ああ。この通り」

「確かに青いにゃ。剣士のケガには効くのかにゃ」

「たぶん。だいたいのことには効くと隣のおっさんが言ってたからな」

「だけど、重体なんだにゃ。大丈夫かにゃ」

「どのくらい効くかはよくわからないが」

「うん。決めたにゃ。これ使っていいか」

「もちろんだ。薬草をもらったから、それは君のだよ」

「うわ、ありがとう。優しいにゃー」


一緒にケガをした剣士の部屋、二階の奥の部屋に向かう。

猫看板娘は鍵の束から1つを選んで鍵をあけて中に入る。


6帖くらいある部屋にはベッドがひとつ。

ちょっと出来がいいベッドだ。

きっと、この部屋は宿の中で一番いい部屋なのだろう。


「大丈夫? 苦しいかにゃ」

「ひどいケガじゃないか」


ベッドに寝ていたのは、ひとりの男。

まるでミイラみたいに布でぐるぐる巻きされている。

目と口の所だけは布がない。

布のあちこちは赤く血が染みている。


どう見ても重体だ。


「これを、飲むにゃ」

「ぐぐぐ」


その男は意識があるのか、ないのか。

見ただけでは判断できない。


猫獣人が回復ポーションを口を開かせて無理やり飲ましている。


「ごふっ、ごふっ」


いきなり液体を流し込まれた男は咳込んでいるが、猫看板娘は、回復ポーションをこぼさないように口を閉じさせている。


おいおい無茶するなよ。息できないんじゃないのか。


「ごくん」


なんとか、飲ませたようだ。

どうだ? 効き目は?


男の身体が一瞬だけ、ぼやっと光った。


「効いたのかにゃ」

「布ばかりだから、分からんな」


ただ、見守るしかないな。

しばらく、ふたりでじぃーとみている。


「・・・ん・・ん」


おっ、変化が起きた。

剣士が何か、しゃべろうとしているみたいだ。


そういえば、唇の色が良くなっている。

最初は紫だったけど、今は赤みがかかっている。


「目が覚めたかにゃ」

「ん・・ん。ん? どこだここは?」

「やったにゃ。目を覚ましたにゃ」


猫看板娘は男が目を開いたことを喜んでいる。

俺もうれしくなった。

俺の作ったポーションが効果あったということだしな。


猫看板娘とハイタッチをして喜び合った。


すると、男が上半身を起こした。


「いたた。ん? おおもそうか! グレイトベアにやられたんだったな」

「そうだにゃ。パーティ仲間がここに運びこんできたにゃ」

「猫女。ということは、ここは宿屋だな」


記憶が混濁している男に猫看板娘が説明している。


おとといに運ばれてきたときから意識がなかったこと。

仲間は街まで行って医者を連れてくると言って出かけていること。

そして、今、ポーションを飲ませたこと。


「しかし、すごい効き目のポーションだな。まだあちこち痛みは残っているが、死にかけていたとは思えないくらいになっているぞ」

「この薬師様のおかげにゃ」

「お、おう」


思ったより、回復ポーションは効きがいいみたいだ。

もしかしたら、冒険者にも売れるかもな。


「これなら、あとポーション2本もあれば完治しそうだ」

「もう薬草は全部使ってしまったかにゃ。もっと探してくれば、ポーション作ってくれるかにゃ」

「ありますよ。2本くらいなら」


袋から2本の回復ポーションを取り出して見せた。

2人とも、目をむいてびっくりしている。


「それ、くれにゃ」

「金ならあるぞ。いくらだ?」

「別にあと2本で全治するなら使っていいぞ」

「おおー、聖人さまみたいだにゃー」


男は回復ポーションを2本続けて飲んだ。

身体が光ってしばらくすると、すっと立ち上がった。


「うおっ。全然、痛くない! 完全に治ったぞ」

「すごいにゃ。ポーション3本で重体が完治したにゃ」


喜んでいる、喜んでいる。

よかった。


「すまんが服をとってくれないか」

「わかったにゃ」


猫看板娘の手を借りて男は服を着た。

体中を確認したら、傷口はすべて塞がっていたようだ。


身体の状態を確認するように、腕を回したり、軽く跳ねたりしている。


「うん。完治したな。これから、もう一度、グレイト・ベアと闘えるな」

「やめるにゃ。危ないにゃ」


うーん、治ったばかりなのに、もう闘うつもりか。

すごいな、この剣士は。


「しかし、これほど効くポーションは初めてだ。ありがとう」

「効果が確認できて俺もうれしいぞ」

「しかし、そんなに若いのにこんなポーション作れるなんて、すごいな」

「えっ!?」


若いってなんだよ。そういうあんたの方が若いだろう。


「君は何歳なんだ?」

「私か。今年28だ」


だよな。なんで、28の男に36の俺が若いと言われるんだ?

もしかして!


「俺は何歳だと思う?」

「18かな。それとも19か」

「ああ、18だ」


うわっ、18歳に見えるのか。

転生前は不摂生がたたって、40代と間違われていたのにな。


見た目が変わったのか。

それとも本当に若返ったのか。


それなら、18歳ということにしておこうか。


「すごいにゃ。私のひとつ上なのに、もう一人前の薬師なんだにゃ」


褒められるのは気持ちいいな。

もっと褒めてくれないか。


「そうだ。もう少し、あのポーションはないか。1本3銀貨で買うぞ」

「あー。今は1本だけしかない。それでいいか」

「ああ。それを売ってくれ。もっと作れるのか」

「薬草なら私が採ってくるにゃー。心配ないにゃー」


えっ。まだ薬草はまだ、たくさん残っているからいいんだが。


「じゃあ、あとポーションを4本、全部で5本、金貨1枚と銀貨5枚で買うぞ」

「じぁー、薬草を4束以上採ってくればいいにゃ」


なんだか、勝手に商談が決まってしまっている。

俺にとってもいい話だから乗るけどな。


「分かった。では薬草は4束あたり銀貨1枚で買い取る形でどうだろうか」

「そんな高く買ってくれるのかにゃ」



ガタン☆


そんな話をしていたら、乱暴に部屋の扉が開いた。


入ってきたのは……


やっぱりポーションはケガ回復が王道だね。


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