第44話 面接・奴隷・交渉。この先の発展の鍵は?
ルティに連れられて、アトリエのミーティングルームに入るとロザリアがすでに来ていた。
「今日の面接はちょっと違うのよ」
「だろうな。わざわざ俺を呼んだのだからな、ロザリア」
「ええ。アトリエがさらに発展できるかどうかの境目ね」
「すると、面接するのが多人数になるのか」
「いえ、たったひとりよ」
どういうことだ?
ひとりの薬師の面接に俺を呼び出すとは。
「その薬師ね。マナポーションが作れるみたいなの」
「!」
今、このアトリエではマナポーションを使うことで、ポーション増産を実現している。
そのマナポーションはすべて俺が作っている。
もし、俺がマナポーションを作らないと一気に生産が落ちてしまう。
そんな状況にあるのだ。
「だが、普通にマナポーションを作ると魔力草が一束いるんだろう?」
「ええ。だけど、アキラが新しい魔力草をみつけてくれたから、冒険者達が魔力草をたくさん採取してくれているわ」
「そうか。あの魔力草の方がダンジョンに自生している数が多いからな」
魔力草の供給は問題ない。
それどころか、このままだと魔力草が余ることなる。
「だから、マナポーションを作れる薬師が欲しいの」
「そういうことか」
「たけど、ひとつ問題があって」
「なんだ?」
「その薬師、奴隷らしいの」
奴隷か。
だが、薬師奴隷はうちのアトリエにもメルをはじめ、何人かいるぞ。
問題はないだろう。
「奴隷だから、その主人から買い取る交渉がいるわ」
「そうか。普通の薬師奴隷と違って、マナポーションが作れるとなると」
「そう。どこまで値を上げてくるか」
「まぁ、少々高くても買取ることだな」
そんな話をしていると、ルティが来客を告げてきた。
薬師奴隷とその主人が着いたらしい。
しばらく待っていると。
でっぷりしたバーコードな頭をしたおじさんと、17歳くらいかな。
やせ細った若い女性が入ってきた。
マナポーションができる薬師奴隷とその主人だろう。
「お前がビーナス商会の生産担当者か」
「ああ。そうだ」
「ちょっと文句言ってもいいか?」
「なんだ?」
「お前達がマナポーションを作っているおかげで、うちの収入が激減だ」
マナポーションが作れる薬師は隣街にも、彼女しかいない。
だから、この街から魔力草を買い取り、マナポーションを作って流していたという。
競争もない状態だから、儲かっていたらしい。
「それが最近、魔力草が届かなくなったと思ったら、ビーナス商会がマナポーションを売り出したって話を聞いてな」
「そうですわ。マナポーションはうちの主力商品です」
実際は出荷しているのは、生産数の半分にすぎない。
残り半分は自家利用をしているから。
それでも、隣街にはマナポーションが届き、魔力草が届かなくなった。
「このままじゃ、普通にヒーリングポーションを作らせるだけだ。それだと利益が1/3になってしまう」
「それならどうでしょう。その薬師奴隷、うちが買い取るということで」
「もちろん、それを話に来たんだ。ただし、値段しだいだがな」
どのぐらい吹っ掛けてくるのかと思ったら、金貨200枚。
もちろん、普通より高いが、それでも3倍くらいだ。
「よし買った!」
「待ってよ。決めるのは私よ」
それから、ロザリアと奴隷の主人の交渉が始まった。
結果だけ言うと、金貨150枚だ。
ちょっとむかついた顔を奴隷の主人はしていたが、金貨を150枚積み上げたら笑顔に変わった。
「いい買い物だよ。こいつ。本当に」
奴隷売買の契約をして、奴隷の元主人は帰っていった。




