第3話 宿場町・猫獣人・薬師。なんとか生活費を稼がなきゃ
今日の4話です。これでおしまいです。
集落から歩いて街道に出て西に向かって歩く。
しばらく街道を歩いていると、建物が見えてくる。
一階建てのみすぼらしい小屋が12軒くらい並んでいる。
「ふう着いた。ここが宿場町だな」
それぞれの小屋には50センチくらいの正方形の板が出ている。
街道から見やすいように突き出すよう出ている看板だ。
「ここは看板が『宿』ね。宿屋か。ほかに『酒』と『食』か。居酒屋と食堂だろう。『品』は雑貨屋だろう」
宿屋が2軒と居酒屋が1軒、食堂が1軒、雑貨屋が1軒。
それですべてで、ほかの小屋は住宅なのだろう。
まずは、今晩の宿を決めないといけないな。
ふたつの宿屋のうち、安っぽい作りの方を選ぶ。
収入がない状態だから、節約しないといけないからな。
「いらっしゃいにゃあ」
「!」
でたっ。猫耳。
もしかして、それって本物?
「にゃによ。宿屋の看板娘が猫獣人だと不満かにゃ?」
「不満だなんて。感動しているだけだ」
「へっ、感動? にゃんで?」
「その耳って本物なんだろ。ちょっと触ってもいいかな」
「なに言ってるにゃ。触らせないにゃ」
あ、やっぱりダメが。
もしかして、仲良くなったら触らせてくれるのか?
「で、泊まるのかにゃ。一泊で大銅貨4枚」
「うん、泊まろう」
猫看板娘に、銀貨を1枚出す。
昨日泊まった集落でこの世界の常識はいろいろと聞いておいた。
通貨は、金貨、銀貨、大銅貨、銅貨。
1枚の金貨が10枚の銀貨と等価。
1枚の銀貨が10枚の大銅貨と等価。
1枚の大銅貨が10枚の銅貨と等価。
「おつりにゃ」
大銅貨6枚を受け取った。
所持金は、これで銀貨2枚と大銅貨6枚。
この分だと、食事も含めて4日くらいは持ちそうだ。
ただ、作ったポーションが売れないと生活していけないな。
「ちょっと聞くが。この宿場町でポーションを買い取ってくれるとこはあるかな?」
「ポーション? ちゃんとした品なら、うちでも買い取るにゃ」
「本当か。それなら、見てくれ」
腰の袋から1本の微回復ポーションを取り出した。
猫看板娘に手渡してみる。
「これなんだが」
「なんだこれ? これはポーションじゃないにゃ」
「えっと…」
「ポーションというのは、緑色よ。偽物だにゃ~」
参ったな……どうも、俺が作ったのは普通のポーションとは違うらしい。
「だけど、効果はあるんだぞ。寝込んでいた婆さんが元気になったぞ」
「へっ、そんなくたばりぞこないの婆さんにポーションなんかいらないにゃ」
「ん、どういうことか?」
「ポーションは、冒険者が魔物にやられたときに使うにゃ」
「まぁ、そうなんだろうが」
まぁ、仕方ない。
ここでは売れないか。
ほかの店にもあたってみるか。
「そんな偽物を売るのはダメだにゃ」
「偽物じゃない! ちょっと違うものかもしれないけど、ちゃんと効くんだぞ」
「そんなに言うなら、専門家に見てもらうにゃ」
専門家は、隣にある雑貨屋のおやじだという。
ポーションを鑑定するスキルをもっているという。
「おっちゃんいるかにゃ」
「おおっ、おるぞ」
猫看板娘が雑貨屋に声をかけて入っていくと、店の奥からガタイがいい禿男が出てきた。
この雑貨屋の主人だろう。
雑貨屋は、いろんな物を売っている。
中心は旅人が使う物だ。
サンダルや棒、三角麦わら帽等々。
奥の棚には、ポーションらしきものもある。
猫看板娘が言うようにポーションは緑色だ。
「ちょっとこれを見てくれにゃ」
先ほど手渡した、微回復ポーションを見せる。
「おや、珍しいな」
「どういうことかにゃ?」
おっちゃん、じぃーとポーションを見ている。
きっと鑑定しているのだろう。
「これは、総合回復ポーションだな」
「総合回復?」
「偽物じゃないのかにゃ?」
雑貨屋主人は興味深げに、微回復ポーションを見ている。
「まぁ、色が薄いから効果も弱いだろうけど、総合回復ポーションなのは間違いないな」
「総合回復ポーションって、どういうものなのか?」
「普通のポーションと一緒でケガにも効くが、他にも体調不良とか病気にも効くぞ」
「ああ。確かに。寝込んでいた婆さんにも効いたんだ」
「そうだろう。それこそ、普通のポーションじゃない証拠だな」
総合回復ポーションは、なかなか便利なポーションらしい。
「すごいにゃ、本物だにゃ」
「だから言ったろ。偽物じゃないって」
「ごめんにゃ。知らなかったにゃ」
「普通は知らないな。あまり流通していないからな。これどうやって手に入れたのか?」
「作ったんだ。俺が」
「ほう。薬師だったのか、お前は」
異世界では、ポーションを作る人は、薬師と呼ばれるのか。
これからは薬師と自己紹介することにしよう。
「そう薬師。まだ駆け出しだけどね」
「なるほど。駆け出しだから色が薄いのか」
「やっぱり薄いか。もっと濃いのを作らないと一人前とは言えないな」
棚にあるポーションくらいの色になればいいのか。
青と緑の違いはあるが。
「どうだ? これを売らないか」
「ええ。買ってくれると助かる」
「瓶は空き瓶があるから、それと交換ということでいいか?」
「そうしてほしい。で、いくらになるか?」
「普通のポーションなら銀貨1枚だ。総合回復ポーションなら、倍はするな。もっとも、効果が薄いだろうから大銅貨2枚だな。売値でな」
「売値? 買い取りならいくらになるのか?」
「大銅貨1枚と銅貨2枚でどうだ」
「売った!」
今もっている5本売れば大銅貨6枚ということか。
10本作って売れば1日の生活費になりそうだな。
「1本しかないのか? もっと作れないか」
「今はあと4本ある。全部買ってくれるか?」
「よし。大銅貨6枚だ。買い取ろう」
とりあえず、収入の道は開かれたようだ。
おおっ、ブクマが10に増えました。ありがとうっ。
更新がんぱります・・・もっとも、今、17話を書いたところだから、
当分、毎日更新いきます。